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2022.02.01

過食や運動不足だけではない?肥満「第3の要因」|ウイルス感染や内分泌かく乱物質で起こる事も


肥満や「体重が増える」の原因は、食べすぎや運動不足だけじゃないこと、知っていましたか?(写真:polkadot/PIXTA)

肥満や「体重が増える」の原因は、食べすぎや運動不足だけじゃないこと、知っていましたか?(写真:polkadot/PIXTA)

「脂肪」と聞いて、よいイメージを思い浮かべる人は少ないでしょう。食べすぎてジーンズの上に乗っかったお腹を見て落胆したことは、誰もがあると思います。メディアや広告でも、「ダイエットをして、醜い体脂肪とお別れしよう!」「スリムになって、新しい人生を手に入れよう!」と、現代において脂肪は立派な「悪者」に仕立て上げられています。

ですが、「脂肪は私たちの体に欠かせない、重要な器官です」と語るのは、医師で医学博士のマリエッタ・ボンとリーズベス・ファン・ロッサムです。脂肪は、食欲を抑えたり、健康を維持したりするために必要なホルモンを産生してくれます。健康的に痩せたいなら、脂肪についての正確な知識を持ち、最大限に利用することが重要です。両氏による共著『痩せる脂肪』から、自身の体と健康的に向き合っていくためのヒントを紹介します。

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不健康な食事や運動不足。これらが肥満の一因だということは明らかです。

しかし、近年ではそのほかのさまざまな要因が研究され、見えないところに潜む多くの肥満原因が見つかっています。ここでは、研究によって明らかになった新たな肥満要因である「睡眠不足」「ダイエット」「内分泌かく乱物質」「ウイルス」についてご説明します。

睡眠不足でなぜ体重は増えてしまうのか

睡眠が不足すると食欲が増します。とくにカロリーの高い食べもの、つまりファストフード系の食べものが欲しくなります。

ある研究によると、たった1日でも睡眠時間が5時間以下の日があると、ホルモンバランスが乱されるそうです。空腹ホルモンのグレリンが多くなり、満腹ホルモンのレプチンが減少して、強い空腹を感じてしまいます。

2グループの女性たちを16年間にわたって追跡調査した実験があります。1つめのグループの睡眠時間は1日7時間で、もう1つのグループは5時間以下でしたが、16年間で「短時間睡眠グループ」は、「長時間睡眠グループ」に比べて平均して増量していたのです。

また、キングズ・カレッジ・ロンドンの研究者たちは、よく眠るほど、食べものに関して良い選択をする傾向があることを発見しました。毎日1時間半、多く寝るように指導を受けたグループの人たちは、砂糖摂取量が10グラム減少し、炭水化物を食べる量も減ったことが判明したのです。

10万人を超える女性たちが参加した大規模な調査もあります。その調査では、少し明るい部屋で寝た人は、暗くした寝室で寝た人に比べて体重が増加した傾向にありました。光によって体内時計が狂わされ、代謝が乱されたと考えられています。

体に良い食事を心がけるためにも、十分な睡眠をとることは重要なのです。

ダイエット後にリバウンドする理由

無理なダイエットの後にリバウンドしてしまうのは、珍しいことではありません。

食事内容と生活習慣の改善が伴わない無理な食事制限を行えば、肥満につながる可能性は高いです。厳しいカロリー制限を課す食事(例えば1日800キロカロリー)は、適切な指導のもとで生活習慣の改善を達成して初めて、効果的な体重減につながります。

しかし、長い目で見れば、きちんと生活習慣についてのカウンセリングを受けて食事制限をした人も、生活習慣改善のアドバイスに基づいて生活しただけの人も、結果は同じだといいます。そういった意味で、厳しい食事制限は短期的効果しかないのです。

さらに悪いことに、カロリー制限を課した後は、体重は減っても、その後の数カ月でまた元に戻ってしまいます。

オーストラリアのメルボルン大学の研究者グループが、この現象について、驚くべき実験結果を発表しました。実験では、50人の肥満者がかなり低カロリーの食事を10週間続けました。そして参加者の血中の食欲調節ホルモン値と食欲を、食事制限の開始前と10週間後、そして1年以上経ってから測りました。

予想通り、13キロ以上の減量によってレプチンとインスリンなどのホルモンは減少し、空腹ホルモンのグレリンは増加していました。

しかし、短期集中の食事制限後は食欲が増したと参加者から報告がありました。そして驚くべきことに、実験から1年後、これらのホルモンに起こった変化は元通りになっておらず、食欲が増し、満腹をあまり感じられないままだったのです。 

この研究結果で初めて、無理なダイエットが空腹ホルモンと満腹ホルモンに長期的な影響を及ぼすことがわかりました。無理なダイエットは代謝を遅くし、食欲が増進されるだけでなく、食べるとすぐに体重が増えるようになってしまうのです。

アメリカのリアリティ番組「ザ・ビッゲスト・ルーザー」は、この影響がどれだけ強いかを見せてくれました。番組では参加者が厳しい食事制限ときつい運動、そしてコーチからの指導を組み合わせて痩せようとしました。30週で平均58キロの減量に成功しましたが、代償は大きかったのです。

番組が終わるまでに彼らの代謝は急激に落ち(1日に600キロカロリーほど)、運動をしても代謝は落ち続けました。そして6年後、参加者たちは平均して41キロ増量していましたが、代謝率は低いままでした。

つまり肥満だった人が厳しい食事制限で減量しても、代謝まで落ちてしまうため、その後、一般的な体重の人と同じ量を食べても太るようになってしまうのです。

短期集中ダイエットはときに、身体の「デトックス」にも利用されます。消化システムを休ませ、老廃物をきちんと排出できるように、との考えからだそうですが、これは意味不明です。

身体はすでに消化器官という自浄システムを持っています。今のところ、消化器官を維持管理する最良の方法は、食物繊維と栄養素たっぷりのものを食べることと、水などをたっぷり飲むことです。

だから、「デトックス」をうたう意味のわからない高価なものを買うくらいなら、その分のお金を素敵なプレゼントとか、あなたの健やかさに貢献できることに使ってください。

ペットボトルの水で太る理由は「ある物質」

ペットボトルに入っている水さえも、肥満に一役買っています。なぜなら、そこには「内分泌かく乱物質」が滲み出ているからです。これが不妊や乳がん、そして肥満などを引き起こす健康に害のあるものとみなされているのです。

内分泌かく乱物質は、人体が産出するホルモンの機能を真似したり、妨害したりできる化学物質です。これが私たちのエネルギーと脂肪細胞の代謝に影響を与えていることが、研究で徐々に明らかになっています。

有名なのが、ビスフェノールA(BPA)とフタレート(プラスチックをより柔軟にする可塑剤)です。ごく少量でも私たちの内分泌系をかく乱させることが知られています。ヨーロッパ市場では、赤ちゃんを守るために、BPAが使用されている哺乳瓶は禁止されています。

そして内分泌かく乱物質は、私たちが気づかないうちに身体に侵入します。ペットボトル以外にも、缶詰、プラスチック製の皿、コップ、そういったものを電子レンジで熱したとき、容器から内容物に浸出するのです。

ほかにも、子どもが口に入れるプラスチック製の人形やおもちゃ、レシート、日焼け止め、シャンプーやボディソープ、保湿クリームやマニキュア、そして化粧水。あらゆる身近な製品に内分泌かく乱物質は潜んでいます。皮膚からも口からも侵入し、呼吸で身体に取り込まれることもあります。つまり、ただ息をしているだけで太るかもしれないのです。

とはいえ、こりゃ大変だと思い、部屋の換気、酸素マスク装着、家具やプラスチックとの接触禁止、プラスチックが滲み出したかもしれない食べものの禁止などを徹底しようとしているなら、それはやりすぎです。多くのデータは動物実験から得られたもので、それが人間にどう応用できるかを知るのはまだ先になるでしょう。

米国肥満学会と北米肥満学会の元学会長であるアメリカ人医師のリチャード・アトキンソンは、「現代の肥満の大流行はウイルスによるものだ」という、興味深い持論を展開しています。

たしかに、貧困国での肥満増加はテレビやコンピューター、電子レンジやファストフードレストラン、ジュース、大容量で売られる食べものなどの贅沢な要因では説明がつきません。

しかし、だからといって……ウイルス?

ですが、肥満を引き起こすウイルスが存在することは確かです。それはアデノウイルス36と呼ばれる風邪ウイルスです。肥満者の3分の1以上がこのウイルスを有していると言われています。

風邪ウイルス感染で体重が増えることも

1990年代、アメリカの研究者たちがニワトリとマウスにこのウイルスを感染させると、動物たちの体重が急増しました。人間により近いサルでも同じ実験が行われ、全個体の体重が増えました。衝撃的だったのは、動物たちの食べる量や運動量は変わらず、代謝と、食べものを処理する方法が変わったために、体重が増えたことです。

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研究者たちによると、このウイルスのDNAは脂肪細胞に入り、血液中の糖と脂肪を蓄積させやすくします。そして、脂肪細胞の数までも増加させてしまいます。残念ながら、すでにこのウイルスに感染している場合、治療方法はありません。

このように、体重増加には数えきれないほどの要因があります。ここ数十年の肥満の大流行は、ファストフードのお店が増えたとか、テレビやPCの画面の前で過ごす時間が増えたとか、そういう短絡的なことで説明できるほど単純ではなく、もっと複雑に要因が絡み合っているのです。

「食べるから太る」。実はそんな単純な話ではないのです。

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提供元:過食や運動不足だけではない?肥満「第3の要因」|東洋経済オンライン

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