2022.01.19
2022年、不調知らずの体を維持する最強の食テク|最も多く摂るべき栄養素は意外なアレだった
2022年を病気知らずの体で過ごすために心がけたい食事を紹介(イラスト:negutan/PIXTA)
リモートワークで増えた体重を落としたい、低下した体力をなんとかしたい、筋力をつけたい……。日々の生活の中でそう感じている人は少なくないはず。そこで、テレビや雑誌などのメディアで健康情報を発信するトレーナーの坂詰真二さんが、疲れない体、引き締まった体、自信がもてる体をつくるメソッドを伝授するシリーズ。3回目は「ヘルシーな食生活で最も大事なこと」について解説します。
健康の3要素は「運動、栄養、休養」といわれており、飲食および消化吸収、そして排泄まで含めた栄養は、健康な体と心にとって不可欠な要素です。巷ではさまざまな健康食、ダイエット法に関する情報があふれていますが、健康的な食事の基本はバランスのよい食事です。
では、私たちが栄養バランスのよい食生活のために、最も多く摂るべき栄養素は次のうちどれでしょうか?
A タンパク質
B 糖質
C 脂質
健康的な食事に欠かせない栄養素とは?
正解はBの「糖質」です。意外に思われた方が多いかもしれません。
近年の糖質制限ブームの影響で、米やパンなどの主食に含まれる糖質は体に悪い、逆に肉や魚に含まれるタンパク質はたくさん摂ってもよいというイメージを持っている方が多いかもしれませんが、これは大きな間違いです。
糖質制限が有効なのは、糖質を多く摂りすぎていることで肥満になったり、健康状態を崩しつつあったりする方に限った話です。しかも、あくまでそれは肥満や健康状態が改善するまでの一定期間に限定して行われるべきものです。
そうではない私たちの健康を保つには、およそ「糖質55%、脂質30%、タンパク質15%」の割合でカロリーを摂取するのが理想であり、糖質を必要以上に制限するのは、かえって健康を害することになります。
実際、私たちが空腹や満腹を覚えるのは、糖質の最小単位であるブドウ糖の過不足を脳が感じ取るからです。タンパク質や脂質、あるいはビタミンやミネラルといった微量栄養素、食物繊維も体に必要なものですが、その過不足を脳は直接、感じることはできません。
それだけ、生命維持にとって糖質が重要だということです。
実際、私たちの生命活動や言動の司令・命令系統である脳・神経系を構成する神経細胞は糖質をエネルギー源とし、このため糖が不足すると脳が真っ先にダメージを受けることになります。また、体づくりに欠かせないタンパク質も、糖質を摂らなければ細胞は吸収することはできません。
この時期は年末年始の宴席などで食べすぎ・飲みすぎをしやすく、食事が不規則になって、体重が増えやすい時期です。そこで今回は、心身を健康に保って体重を適正に保つ、健康的な食事についてお話しします。
日々、必要な栄養素を計算しながら食事を摂ることは、栄養の専門職の方であっても容易ではありません。ですので、さまざまな栄養素を過不足なく摂れる正しい食事構成を覚えることが、バランスのよい食事をするために現実的で大切なことです。
主食、主菜、副菜、汁物の食事が◎
バランスのよい食事は何も特別なものではなく、日本で昔からいわれている一汁三菜、つまり「主食、主菜、副菜、汁物」で構成された食事です。
実は私たちは学生時代、少なくとも小中学生までは栄養バランスの取れた食事を口にしていて、その習慣が身に付いています。それは給食です。
思い返していただければ、毎日の給食は、例えば「白米、魚のムニエル、野菜炒め、わかめと豆腐の味噌汁」といった具合に、一汁三菜で構成されていたはずです。このような食事や家庭科の授業などを通じて、私たちは学生時代まで健康的な食事習慣を身に付けていきます。
ですが、大人になるにつれて、特に進学や就職による一人暮らしをきっかけに、欠食するようになったり、好きなものに偏った食事や飲酒などを繰り返したり、メディアが取り上げる流行の健康食やダイエット食に右往左往したりしているうちに、いつの間にか正しい食事の摂り方がわからなくなってしまうのです。
そこでバランスのよい健康食、一汁三菜の食事構成について改めておさらいしてみましょう。
まず、米やパン、麺類などで構成される主食についてです。
近年の糖質制限ブームで、糖質が体に悪いかのような印象を持つ方が少なくありませんが、糖質は体に最も必要な栄養素であり、糖質を多く含む米やパン、麺類といった主食は、毎食摂るべき食事の柱です。
一般的な生活をしている男性なら、1食につき大きめのご飯茶碗1杯(200g、340kcal程度)、女性なら小さめのご飯茶碗1杯(150g、250kcal程度)を摂るぶんには、まったく問題ありません。体を使う仕事に従事していたり、定期的にスポーツやフィットネス活動をしたりしている人は、それより多く摂る必要があります。
気を付けたいのは、主食の二重摂りです。例えば、「うどんと稲荷ずし」「ごはんとお好み焼き」「焼きそばパン」のように、主食にあたる食品を2品摂ってしまうと、栄養のバランスが悪くなり、カロリーオーバーしやすくなってしまいます。
玄米や雑穀米、玄米パンを毎食でなくても取り入れると、微量栄養素や食物繊維が摂れてさらにヘルシーになります。ただし、口に合わない場合は無理をしないでください。食事は「おいしい」と感じて、心を満たすことも大切だからです。
続いて主菜についてです。
主菜の肉や魚、大豆・大豆製品は、脂質とタンパク質の供給源です。脂質はホルモンや細胞膜などの材料となり、タンパク質は筋肉や皮膚をはじめとしたあらゆる細胞と細胞間を埋めるコラーゲンを構成する材料などになります。
脂質も重要な栄養素なので、肉の脂身は一切摂らないような極端な油脂のカットは不要ですが、鳥皮、カルビのような脂肪の多い部位は避けるか、少量に抑えるかにしましょう。現在の日本の食生活では魚より肉を摂る機会が多いので、1日1食は魚料理を摂ることを目標としましょう。
肉に多く含まれる飽和脂肪酸は摂りすぎると、LDLコレステロールと中性脂肪が増えて、動脈硬化を招きやすくなるからです。
逆に魚(特に青魚)に多く含まれる不飽和脂肪酸は、動脈硬化を防ぐ働きがあり、また体で作ることができない必須脂肪酸が多く含まれています。
ソース類のかけすぎでカロリー超も
主菜でもう1つ気を付けたいのは、調理法とソース類です。この2つによってカロリーが大幅に増えやすくなります。揚げ物は1日1品以内に抑え、ソース類のかけすぎに注意しましょう。
最後は副菜です。
副菜は主に野菜、きのこ、海草などで構成されます。これらは代謝を助ける働きがあるビタミンや、体内環境を保つミネラル、腸内環境を整える食物繊維を多く含んでいて、体調の維持には欠かせません。
1日に必要な野菜は350g、1食あたり120g程度といわれています。毎食大きめのお皿に1品、小さめのお皿なら2品の副菜を摂ることができれば、カバーできます。外食では副菜が不足しがちなので、サイドメニューで追加しましょう。
副菜で不足しがちなのは、βカロテンを多く含む緑黄色野菜。βカロテンは体内で細胞の粘膜を保護して、抵抗力を高めるビタミンAに替わる大切な栄養素です。ニンジンやホウレンソウ、アスパラガス、チンゲン菜など、色の濃い野菜を積極的に選ぶようにしましょう。
トウモロコシやカボチャ、イモ類は副菜ではなく、主食と考えてください。摂る場合はその分、主食の量を減らしましょう。サラダはドレッシング類によってカロリーが大幅に上がりやすいので、かけすぎに注意してください。
最後は汁物。
実は、私たちにとって糖質以上に必要な成分は水です。水さえあれば、人は1週間以上何も食べなくても生きていけますが、水は3日飲まなければ生命の危機に至ります。
この意味で食欲の正体の半分は「水分欲」であるといえ、水分が不足すると食欲が増し、逆に水分をしっかり摂ると過度な食欲が抑えられ、食べすぎを防ぐことができます。和食なら味噌汁、洋食ならスープを付けましょう。ただし、イモ類を具としたみそ汁やポテトポタージュ、コーンポタージュは主食の二重摂りとなるので避けましょう。
冒頭でお話しした糖質制限に限りませんが、世の中では、特定の食品や栄養素だけをターゲットにした、〇〇はよくない、△△だけ摂ればよい、といった極端なダイエット法や健康食法が流行しがちです。
こういった極端な食事法をあれこれと試すうちに、やがて食生活がある特有のルールで縛られ、心身の健康、あるいは円滑な社会生活に支障をきたすということが少なくありません。これは「オルトレキシア」と名付けられた一種の摂食障害であり、現代病ともいえる問題です。
摂れば摂るほどよい食品や栄養素はありませんし、摂って体の毒となるような食品や栄養素もありません。体内ではさまざまな栄養素が相互に作用しあって機能するので、肝心なのはバランスのよい食事です。
参考にしたいヘルシーな食事の例
一汁三菜の食事構成なら、栄養素のバランスは取れてカロリーオーバーを防ぐことができます。この考え方をおさえておけば、多忙な日の朝食、コンビニご飯や宴席での食事でもヘルシーなものに変えるかとができます。以下に例を挙げますので、参考にしてください。
忙しい日の朝食の例:トースト1枚、ハムエッグ、ミニトマトとレタスのサラダ
コンビニランチの例:おにぎり2個、焼き鳥、カップみそ汁(野菜)
居酒屋でのおつまみの選び方の例:刺身の盛り合わせ、枝豆、梅キュウリ、オクラの浅漬け、鮭茶漬け
(写真:shizuku(左)、mao(右)/PIXTA)
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提供元:2022年、不調知らずの体を維持する最強の食テク|東洋経済オンライン