2021.12.17
「話がわかりにくい人」を卒業するただ1つのコツ|「成果につながる説明」とはいったい何なのか
元・カリスマ予備校講師が教える、説明の組み立て方(写真:takeuchi masato/PIXTA)
「話がわかりにくい人」というレッテルを貼られると、気がつかないうちに、せっかくのビジネスチャンスを逃す可能性がある一方、「話がわかりやすい人」と思われると、活躍の舞台はどんどん広がっていく。
ポイントは、「相手が理解しやすい順番に話し始める」ことにある。ただし、元・カリスマ予備校講師の犬塚壮志氏によれば、話がわかりにくい人は、説明し始める際にある重大な視点が欠けているのだという。犬塚氏の新著『あてはめるだけで“すぐ”伝わる 説明組み立て図鑑』から「成果につながる説明」をスムーズに行うコツについて紹介する。
『あてはめるだけで“すぐ”伝わる 説明組み立て図鑑』 クリックすると、アマゾンのサイトにジャンプします
「わかりにくい」は、「コスト」と「リスク」
「説明しろと言われても、何からどう説明していいかわかんない……」「いつも上司に“結局、言いたいことは何?”って言われてしまう……」
「説明」にまつわるこのような悩みは絶えません。「説明」は、何かを伝えるときに必ずといっていいほど使うコミュニケーションスキルのため、壁にぶつかる機会も多いからでしょう。オンラインでのコミュニケーションが増えた今、説明に関する悩みや課題はより一層、顕著になりました。
言うまでもありませんが、「説明力」の有無で、仕事でも私生活でも得られる結果に歴然たる差が出てしまいます。なぜなら、コミュニケーションにおける「わかりにくさ」は「コスト」になるからです。こちらが意図していたことが伝わらなかった場合、同じことを何度も繰り返し説明しなければならなくなります。
相手からすると、わかりにくい情報が入ってきたとき、それをそしゃくするのに時間を要します。さらに、時間だけでなく、ストレスもかかります。つまり、わかりにくい伝え方をすると、相手は「めんどくさい……」「しんどいなぁ……」と思ってしまうのです。最悪の場合、自分の意図したことが違った形で相手に伝わってしまい、何らかのトラブルが起きる可能性すらあります。「わかりにくい=リスク」にもなるわけです。
裏を返せば、わかりやすく説明できるだけで相手から選ばれやすくなるということでもあります。無駄なコストやリスクがかからないわけですから当然です。
ビジネスシーンにおけるプレゼンテーションでの提案がイメージしやすいでしょうか。どんなにスライド資料の見栄えがよくても、わかりにくければ提案は通りません。わかりやすいほうが選ばれやすいのは、自明のことです。
メールでの依頼なども同じです。メールで相手にお願い事をしても、それが伝わりにくい文章であれば、後回しにされたり、断られやすくなったりするでしょう。
このような違いはどこから生まれるのでしょうか?
今では「説明スキル」をテーマに企業の研修講師として登壇している私ですが、実は最初から説明が得意だったわけではありません。むしろ、極度の人見知りで、コミュニケーションは大の苦手でした。
言葉足らずな伝え方で、「もっとしっかり説明しなさい」と叱咤されることもあれば、いったん話し始めるとマシンガントークのように止まらず「結局、言いたいことは何?」のような指摘を受けたことも一度や二度ではありません。何が正解かわからず、人前で説明をするのがどんどん嫌いになっていったのです。
ただ、大学受験生を支援する仕事がしたく、新卒で駿台予備学校に就職したことで、そうも言っていられなくなりました。予備校講師という職業は「説明」でゴハンを食べる仕事です。説明がわかりやすく、生徒の学力を上げられなくては生き残れません。
そのため私は、それまでの自分の説明の失敗経験を徹底的に振り返り、分析しました。そこで自分がしでかしていた、ある「要因」に気づいたのです。
説明が苦手な人が陥る「失敗要因」
説明が失敗するときは決まって、自分が思いついた順や、なんとなく話したい順で説明しようしていました。そうすると、余計な情報を入れてしまったり、脇道にそれて着地点を見失ってしまったりするのです。その結果、相手に伝わらない説明になってしまっていたのです。つまり、
「組み立てをせずに説明を始めてしまう」
これが失敗する最大の要因だったのです。
辞書の定義によると、「説明とは、相手にわかるように順序立てて言うこと」とあります。だからこそ、うまく説明するためには、話し始める前に、説明を組み立てておく必要があったのです。
この原因に気づいてからは、説明の組み立て方を徹底的に磨くことに注力しました。仕事が「できる人」の説明を録音して書き起こしをしたり、実際にうまい説明をしている仕事先の同僚や先輩にヒアリングをしたりしながら、どのような組み立て方を行えばスムーズにわかりやすい説明が行えるのか研究しました。
そして、仕事の現場でトライ&エラーを繰り返し、成果につながる「組み立て方」のパターンを見いだしていったのです。その結果、予備校に入社してから9年目にして、季節講習会(化学)の受講者数が予備校業界で日本一となることができたのです。
さらに、講師として10年間登壇した後、新しい教育事業を立ち上げるために独立・起業しました。そこでも、想定を超え、毎日が「説明」の連続でした。説明する相手も予備校の生徒だけのときと大きく異なって、さまざまな属性の方々との会議・営業・交渉・プレゼンなどを行うようになりました。そこでも説明の組み立て方を磨いていったのです。
それでは実際に、成果につながる説明はどうやって組み立てていけばいいのでしょうか?
これまで説明について分析したり実践したりしてわかったこと。それは、「できる人」は、説明する目的によって組み立て方を変えているということです。つまり、目的に合わせた最適な順序で説明を始めることができれば、誰でも説明の伝わりやすさは格段に上がるのです。
ここから私は、説明の目的を3つのフェーズに分けることで、誰でもスムーズに組み立てられることを発見しました。具体的には、説明する目的を「わかってもらう」だけにとどめません。
「わかってもらう」とは、つまり、新しいことを頭に入れてもらったり、違う視点で考えてもらったりすることです。それを前提としつつ、説明の目的によっては「相手の行動を変化させ」、さらに、「行動の変化を持続させる」ことまでを視野に入れます(次図)。
目的に合わせた順番で話し始めるといい
説明の目的を3つのフェーズに分けたうえで、さらに私は、その目的を達成できる説明の組み立て方をパターン化し、型にしました。
『あてはめるだけで“すぐ”伝わる 説明組み立て図鑑』(SBクリエイティブ) クリックすると、アマゾンのサイトにジャンプします
例えば、「フェーズ1 わかってもらう説明」。ここでは、相手がどこまで知っているか、前提の共有をするところから入ったり、難解な情報をわかりやすく伝える説明をします。具体的には、専門用語を解説する型や物事のメカニズムを理解してもらう型を使います。
続いて、「フェーズ2 動いてもらう説明」。ここでは、起こしたい行動から逆算して、結論から伝えることもあれば、あえて結論から伝えず、プロセスを順にたどっていく説明をします。具体的には、交渉で有利に立つための型や相手の問題意識をあぶりだす型、さらには、相手の意思決定や購買行動を促す型を使います。
最後に、「フェーズ3 できるようになってもらう説明」。ここでは、好奇心を刺激するためのフレーズやヒントから入ったり、手順を細かく分けたりしながら説明します。具体的には、相手をやる気にさせる型やスキル習得を促す型を使います。
このように、「何を目的に自分は説明をするのか?」を決めてから、説明を組み立てることで、何から話せばいいのかがスムーズに決まるのです。これをやるだけで、誰でも説明上手になれるということです。
最後に。説明がわかりにくいだけで、仕事が滞ったり、提案内容などの本来の価値が伝わらなくなったりします。こういった状況は、その人の可能性を狭めることにもつながります。私は、それは社会的損失だと考えています。
そして、説明スキルは後天的に身につけられるものです。だからこそ、あなた本来の価値が世の中にもっと広がり浸透していくよう、説明の「組み立て方」の向上にぜひトライしてみてください。
【あわせて読みたい】※外部サイトに遷移します
提供元:「話がわかりにくい人」を卒業するただ1つのコツ|東洋経済オンライン