2021.12.14
昼休みに仕事する人が自律神経を乱す「腸的」理由|ご飯後やる気が出ない時の「とっておきの対処」
自律神経研究の第一人者である小林弘幸先生に聞いてみた「腸と自律神経を整える昼休みの過ごし方」をご紹介(写真:nikonersb/PIXTA)
せっかくのお昼休みなのに午前中の仕事をダラダラ続けていませんか? 実は自律神経にはリズムがあって、身体をアクティブに動かす交感神経の働きは昼12時にピークを迎えます。この時間帯に自律神経を整えることで、腸内環境も整い、午後も高いパフォーマンスで仕事ができるのです。
今回は、『「自律神経を整える1日の過ごし方」を聞いてきました』の著者で、自律神経研究の第一人者である小林弘幸先生に「腸と自律神経を整える昼休みの過ごし方」を聞いてみました。
前回:『何だかパッとしない朝に「自律神経」整える仕込み』
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『何だかパッとしない朝に「自律神経」整える仕込み』 ※外部サイトに遷移します
食事間隔は6時間空けると腸内環境が整う
――お昼休みになっても、食欲もなければ、周りの人も働いていて休みにくい雰囲気だし、仕事もキリがいいところまで進めないと気持ち悪いから休まず仕事を続けてしまうことがあります。
小林弘幸先生(以下、小林):
それは頑張っていますね、といいたいところですが、午後も高いパフォーマンスで仕事をしたいなら、その習慣はやめたほうがいいですよ。午後も頭はベストな状態で仕事を続けるためにも、まずは自律神経のリズムを理解することが大切です。
――自律神経にリズムなんてあるんですか?
小林:
ありますよ。自律神経の1日のリズムの中で、交感神経の働きがピークを迎えるのが12時ごろ。その時間帯に、副交感神経の働きも高めて、自律神経を整えておくことが、午後もしっかり働ける心と体をつくるためには重要です。
――へぇ〜。お昼の12時は、自律神経にとって大切な時間なんですね。
小林:
腸は、食事と食事の間に食べたものを消化・吸収して、最後に、腸内環境を整えるためにお掃除をしてくれます。おなかが減ると、グーと鳴るのは、腸管が大きく収縮して腸内環境を整えるためにお掃除をしている音。「食べ物を受けつけてもいいよ」とサインを送ってくれています。そのタイミングで食事をすると、腸がしっかり働いてくれますよ。
腸内環境を整える食事の間隔は、日中だと6時間が理想です。その6時間の間に、食べたものを消化・吸収して、最後に腸管が大きく収縮して殺菌作用のある消化液が増加。腸に残った悪玉菌を処理してくれます。
――おなかが鳴ると恥ずかしいから鳴らないでほしいと思っていましたが、食事をとったほうがいいよ、とサインを出してくれていたんですね。
小林:
腸をしっかり動かすことで、全身の血流が良くなり、脳にも新鮮な酸素や栄養が運ばれます。結果的に、頭が整理されて、午後もスッキリした気分で仕事ができるのです。
――お昼休みに食事をとることは、大切なんですね。
小林:
ここで、忘れてはいけないポイントがあります。食事のとり方によっては、交感神経が一気に高まるということです。
――腸を刺激して副交感神経を高めようとしているのに、一気に交感神経が高まるなんて……。どうすればいいんですか?
小林:
食事をとるときは、過剰に交感神経が上がらない食べ方が大切。それは、ゆっくり、よく噛んで、食べ過ぎないようにすることです。
――食事の基本ですね。なんだか子どもに戻った気分です。
小林:
「しっかり噛む」習慣は自律神経を整えるだけでなく、唾液量が増え抗ウイルス・抗細菌成分が増えて免疫力が上がる、脳内のヒスタミン分泌が活発になり満腹中枢を刺激するため過食を防止する、表情筋がほぐれることで副交感神経が高まりストレスが軽減されるなど、さまざまな効果があります。
仕事に追われて焦るあまり、昼食は食事の基本が疎かになりがちです。お昼によく、ごはんをかき込むように食べている人がいますが、これだと消化をするために働く副交感神経は上がりにくくなります。ゆっくりよく噛んで食べることで唾液の分泌も増え、消化・吸収をサポートします。さらに、顔の筋肉もほぐれてリラックスでき、噛むという一定のリズムも副交感神経を高めてくれます。
――ゆっくり、よく噛むことでそんなに効果があるんですね。
小林:
また食べ過ぎも要注意。消化・吸収に大量の血液が使われ、脳への血流量が減ってしまいます。腹6〜8分目までにしておきましょう。
――わかりました、気をつけます。
小林:
ゆっくり食事をとるために、「ながら食べ」をやめることもおすすめです。仕事仲間と一緒に食べるランチは楽しいひとときですが、ときにはおしゃべりしたり、スマホを眺めたりせず、自分の目の前にある食べ物の色、形を眺め、1口ずつ口にして、食べ物の形や食感、味わいの変化を楽しむ。噛み終わったらゆっくりのみ込み、2口目へ。ちょっとした瞑想が充実のランチタイムにしてくれますよ。
ランチ後2時間の仕事は「捨ててもいい」
――ランチタイムは充実したものの、その後、頭がボーッとして仕事に集中できないことがあって悩んでいます。
小林:
もしかしたら、お昼ごはんを食べ過ぎているのかもしれませんね。麺やお米などの炭水化物がメインの食事は、交感神経を急激に高める作用があります。食後はその反動で、副交感神経が一気に高まるため、体は急ブレーキ状態になり、疲れを感じたり、眠くなったりします。
――そういえば、会社の近くにあるイタリアンのお店に行った日は、とくにボーっとしてしまう気がします。
小林:
自律神経を整えるためにも、たまには、美味しいものを楽しむことは大切です。ただ、外食は、自分で食事の量をコントロールできない分、食べ過ぎるリスクがあります。食べ過ぎると、集中力を欠いてしまう恐れがあることも意識しておくといいですよ。炭水化物は体に欠かせない栄養素ですが、しっかりとるのは1日1回に抑えることがおすすめです。
――気をつけます。でも……。たまには、気分転換に外で食事をとりたいときもあるんですけど。午後の仕事のことを考えると、外で食事をとらないほうがいいということですか?
小林:
いえ、たまには気分転換も必要ですからね。集中力が切れてやる気が起きないときの過ごし方を知っておくといいですよ。
――なんだろう……。知りたいです!
小林:
昼食後の2時間は「捨ててもいい」と割りきって過ごすのです。
――えっ! 勤務時間中に「捨ててもいい」なんて、怒られそうです。
小林:
サボるのではなく、効率的に働くために捨てるのです。昼食後は、食べ物の消化にエネルギーを使うため、脳にあまり血液が行き届かず、注意力が散漫になったり、眠くなってしまったりするもの。そんな時間に、無理やり仕事をしても、かえって効率が悪くなります。さらに、つねに気を張るのは、自律神経にとってもいいことではありません。
お昼のあとの2時間は単純作業にあてるといい
――そうなんですか?
小林:
集中しているときは、交感神経が上がってアドレナリンが分泌されます。さらに、神経伝達物質のドーパミンが大量も分泌され、脳の中枢神経が強化されます。その結果、神経伝達物質アドレナリンが分泌されて集中力が向上します。でも、その状態が長時間続くと体と心は疲弊します。朝から夕方まで、ずっと100%集中するなんて疲れてしまうし、そもそも不可能です。自律神経の乱れも大きくなってしまいます。アドレナリンには血小板の働きを活発にして、血液をドロドロにさせてしまう作用も。イライラしたり怒りっぽくなったりするというデータもあります。
――なるほど……。安定したパフォーマンスを出すために「捨ててもいい」時間をつくる、と考えるんですね。
小林:
そうです。「捨ててもいい」時間をしっかり意識することは大切です。捨てるといっても、何もしないわけではありません。お昼休みのあとの2時間は、単純作業にあてることがおすすめです。資料整理や身の回りの片づけなど、集中しなくてもいい作業を見つけて、「捨ててもいい」時間にすると決めておくといいですよ。1つずつやるべきことを書き出して、時間を決めて淡々とこなすと仕事が進みます。
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――なるほど。ただ、働き始めてすぐだと、自分で時間をコントロールしたり、仕事の内容を選んだりすることが難しいです。
小林:
それであれば、交感神経の助けを少し借りましょう。やる気を出すためには、自分では多少苦手だと思っていることをして交感神経を少しずつ上げていくといいですよ。たとえば、自分が抱えている案件について、上司に相談するのもおすすめです。相談する内容を考えたり、コミュニケーションをとったりすることで交感神経が高まり、集中力を上げることもできます。
――試してみます。でも、さすがに毎日相談には行けないので、他の方法も教えてもらえませんか?
小林:
椅子に座ったままできるストレッチも効果的です。椅子に座ったままで、腕を上げて手首を頭の上で交差させ、そのまま息を吸いながら上体を上に伸ばします。その後、体を左右に倒していきます。呼吸を意識しながら左右に10回ほど繰り返すと、交感神経が活発になっていきますよ。
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提供元:昼休みに仕事する人が自律神経を乱す「腸的」理由|東洋経済オンライン