2021.11.05
ヒロシ「自ら起こしたキャンプブーム」に苦笑の訳|ついに山まで購入するに至った理由
キャンプブームの立役者となったヒロシさんが当惑する理由とは?(撮影:尾形文繁)
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「ヒロシです……」の自虐ネタで大ブレイクしたのは2003年~2008年頃。絶頂期は月収1000万、多いときは4000万にも上ったという。しかし、多忙や周囲とのコミュニケーション不足、自身のキャパオーバーがピークに達し、自らテレビ出演を断るようになった。
その後は動画配信などを行い、2015年3月から始めたソロキャンプをするYouTubeが話題になり、一躍キャンプブームの立役者になった。YouTube登録者数は113万を超え(2021年11月現在)、最近は日めくりカレンダー『ヒロシの日めくり 人生、ソロキャンプ』が発刊されたばかり。そんな乗りに乗っているヒロシさんだが、本人のトーンはあくまで一貫している。
「人はいつか死にますから」
取材にきた筆者に、そう淡々と語り掛けるヒロシさん。たき火やハンモック、川のせせらぎなど、爽やかなキャンプトークになるかと思いきや、早速、無常観漂うヒロシ節に包まれた。いったいその真意は? まずはカレンダーの“名言”をひもときつつ、お話を伺っていく。
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「おじさんだけど、おじさんじゃないよ」
『俺が死んだときにはこのナイフを棺桶の中に入れてほしい。(26日)』
『人生を四季にたとえると俺はもう秋。動けるうちはできる限り好きなことをやって、冬を迎えたい。(23日)』
今回で3冊目となる、ヒロシさんの名言をまとめた「日めくりカレンダー」。その感想を聞くと、自分が発する言葉を読み返して、“おじさん”を実感したという。
「今49歳ですが、自分の言ってることが、おじさんになってきたなって。50歳を手前にして、今後いつまでキャンプに行けるのかって考える瞬間もあります。以前は、苔を見ても美しいなんて思わなかったのに、今はジワジワといいなって思うようになってきましたね」
ふと、鏡や写真に写る自分の姿を見た瞬間にも、年齢を実感するそうだ。
一方、日めくりにはこんな言葉もある。
『“おじさんはおじさん”と思っていたけど、自分がなると“おじさんだけどおじさんじゃないよ”って思うよね。(29日)』
実年齢に自分の気持ちが追いつかない。そう感じる人は多いかもしれない。
「自分でも、おじさんさんはおじさんだってことはわかってますよ。49歳という数字がしっかり出てるわけ。でも、何ていうかな。20歳の君よ。君が思うほど、俺はおじさんじゃないよ。君が感じるより、俺はもうちょっと君の近くにいるつもりだよって」
ヒロシさん自身、自分が20、30代のときは、50歳手前の人を見て“うわぁ、おじさん”って思っていたし、それでも社交辞令で“若く見えます”と、適当に言っていたと笑う。それゆえに、今の若者が50代をどう感じるかもわかるという。
自分の気持ちは、実年齢より4、5年若いつもり。風貌だって、同世代に比べたら爽やかだ。しかし、気づけば周りから年上扱いをされる場面が増えた。どこか微妙に気も遣われているような感じもする。そうして、自分の立ち位置を実感する人も多いのだろうか。
ヒロシさんは、紆余曲折を経てキャンプブームの立役者となった。そして49歳となった今、今後の人生観はますますハッキリしてきた。
「好きなことしかしたくない」と語るヒロシさん。本気だ(撮影:尾形文繁)
「もうね、これからは好きなことしかしたくないんです。あんまり言うとあれだけど、仕事もセーブしたい。結局、いろいろやっても死ぬわけですし。去年あたりから、そんな思いが強くなってきました。そうは言っても別にネガティブな話でもないし、死はみんな平等に来るものなんだけど。だからこそ、どうせ死ぬんだったら、自分が好きなことをやって死にたい。自分の興味があることだけ、自分が全部納得したことだけ片っ端からやっていきたいです。本来そういう性格だし」
しかし、キャンプブームに火をつけ、キャンプ企画では引く手あまた。YouTubeの動画再生数も伸び続け、絶好調の売れっ子にしか見えないのだが。
「本を出そうが、どんなにお金を稼いで有名になろうが、でもそれだけですよ。だんだん、一般的な成功というものに、まったく興味がなくなりました。そんなことより、自分のキャンプに行きたい。最近は仕事のキャンプばっかりだけど、プライベートのキャンプがしたいですね」
自ら起こしたキャンプブームの影響は…
『あぁ…人がいる。僕がソロキャンプでいちばん注意していることは、誰もいないキャンプ場を探すこと。ひとりになりたくて来ているんだよね。「誰もいない! いい場所見つけた!」と思い、サイト運営した途端、人の気配を感じるとソワソワするんだよね。(2日)』
コロナ禍による三密回避ムードもあり、世間はヒロシさんの予想をはるかに超えるキャンプブームに。今ではみっしりテントが張られ、人が密集しているキャンプ場もあると聞く。
「個人的には、キャンプブームは、商売になっていいですよ。でも、僕、1人でキャンプしたいんです。知らない人がたくさんいるキャンプ場は苦手なんですよ。僕がキャンプを始めたときは、ブーム前だから全然人もいなかったんです。でも、最近は行く場所が限られてきましたね。今はかなりキャンプ場を厳選して行くようになったことが、きついですよね」
結果として、ヒロシさんは自分専用の山を購入することに。
「キャンプ場に人が増えてるな……と感じるようになったのも山を購入した理由の1つです。もちろん同じ山にずっと行くと飽きるかもしれない。でも、最低1つは、人目を気にせず、安心して行ける場所がキープできるじゃないですか」
2021年にはマイホームを購入したことで話題になったヒロシさんだが、2019年には山も買っていた。山の維持・管理は大変だが、自分が思い描いたとおりに開拓することができる。直火禁止のキャンプ場も多い中、自分の山ならば、注意はしているがたき火も自由に楽しめるという。
『俺は、キャンプの先生ではないからね。(11日)』
有名人の宿命ともいえるが、人気が出れば、アンチも増える。ヒロシさんの動画を見た人から、SNSで“ロープの結び方がなってない”“タープをきちんと張れてない”と書かれることもあった。
「僕は、僕のキャンプをやってるだけだから、別にいいじゃない?と思うわけですが。中には“たき火の片づけができてない人が多いので、注意喚起してください”とSNSで訴えてくる人もいますよ。そもそも僕のYouTubeでは、すでにたき火の処理から帰宅するところまで載せてるものもあるんです。まずは全部動画を見てくれと言いたい。
もしくは、じゃあ、たとえば僕が新たにマナー喚起を呼びかける動画を作るなら、オファーとして受けていいんですか? 動画制作として安くはないけど、払いますか?と言ったら絶対払わないんだから。自分が苦労しないで、なぜ人の休日に動画制作までさせようとするのか。もし本気でマナー喚起を呼びかけたいなら、自分でキャンプ場まで足を運んで注意しなさいよ。自分でYouTube動画上げて、ルールが守れない方へ訴えなさいよって思いますね」
ソロキャンプの醍醐味は……
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純粋にキャンプを楽しむ人が大半だが、一部のクレームや文句を言う人の声が大きく聞こえてしまうこともある。
いろいろな煩わしさから逃げられるのが、ソロキャンプの醍醐味のはずだが……。
「YouTubeに載せなければいいじゃんって言ってくる人もいるけど、僕は載せたいから載せているだけ。見たくなかったら見なきゃいいんです。基本的に自分が好きなことを、ゆっくりとしたところでやりたいようにする。動画撮影を含め、好きだから撮りたいんだよって」
他人が好きでやっていることに、モノ申したい人がどうしても出てきてしまうのがSNS。人に要求するより、楽しくキャンプしませんか、と筆者にも思えてくる。
味わい深いボヤキを続けるヒロシさん。人生の後半を迎えつつあるヒロシさんのキャンプ話は後編に続きます。
ヒロシさん
1972年、熊本県出身。ピン芸人として「ヒロシです。」のフレーズで始まる自虐ネタで大ブレーク。2015年3月よりYouTuberとして「ヒロシちゃんねる」を配信。自ら撮影、編集した動画をアップして人気を集める。2020年にはオリジナルアウトドアブランド「NO.164」を立ちあげた。2021年9月に「ヒロシの日めくり 人生、ソロキャンプ」を発売。
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提供元:ヒロシ「自ら起こしたキャンプブーム」に苦笑の訳|東洋経済オンライン