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2021.10.24

休むことに罪悪感ある人に身につけてほしい習慣|「自分さえ頑張れば何とかなる」の考えは危険


休みを上手に取るための方法を解説します(写真: elise/PIXTA)

休みを上手に取るための方法を解説します(写真: elise/PIXTA)

栄養士の笠井奈津子氏の元には健康についての相談が寄せられるのですが、話を聞いてみると「休み方があまり上手でない」というケースがあるそうです。仕事や勉強に追われ、つねに「あれをやらなきゃいけない」と心に引っかかっている状態では疲労も回復しにくいと言います。新著『何もしない習慣』を上梓した笠井氏が、休むこと自体に罪悪感を覚えないやり方について解説します。

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前回:栄養士指南!結局、「健康的にやせる」コツは2つだ ※外部サイトに遷移します

前々回:疲れ抜けず悩む人に急増「主食抜きすぎ」の大問題 ※外部サイトに遷移します

休んでうまくいったことを「充電リスト」にする

栄養士として体や心の相談を受けていると、「何もしない」ことや「休む」ことは、仕事や家事などの次に考えることではないと痛感します。

仕事や生活を真剣に考えるからこそ、まず休む──。

そのように優先順位を上げたほうが、仕事や生活、そして人生そのものはうまくいくでしょう。ただ、頭ではわかっていても、休むことに対する罪悪感を覚える人は多く、かくいう私もそうなのです。

ましてや自分が何もしない時間をつくるために、同僚に仕事をお願いしたり、家族に協力してもらったりする場合は、なおさら自分だけが休むことを気にしてしまう場面もあると思います。

でも、そんな罪悪感が心のどこかに引っかかっていると、結局はそれだけでエネルギーを奪われて疲れてしまいます。休日をつくりさえすれば休めるわけではなく、たとえ誰に邪魔されなくても、何か気になることがあって心がざわついていれば、それはほとんど休めていないのに等しくなってしまいます。

そうならないためには、先に休むことで得られる自分のメリットを書き出し、休む自分に心から納得することが必要なのでしょう。人は緩やかな変化には気づきにくいもので、ちょっとした変化は忙しい時間に埋もれてしまいます。休んでうまくいったことやいい変化(アイデアが浮かんだ、リラックスできたなど)を記録して「充電リスト」にしておくと、よい変化を再現しやすくなり、休むことを習慣にしていけます。

また、トリセツ(取り扱い説明書)になるくらい言語化ができていると、家族やパートナーなどまわりの人にも説明しやすいため、理解されやすくもなります。

例えば、「疲れたからたまにはひとりで過ごしたい」と不機嫌そうにいわれるよりも「今ここで無理をするといつも〇〇になってしまいがちなの。こういうときは○○をすると回復できるから、そのための時間をもらえる?」と伝えられたほうが、相手も気持ちよく受け取れるし、協力してもらいやすくなることは間違いありません。

また、休むことによって生じるデメリットや休めない理由が頭をよぎるなら、それもいちどすべて書き出してみましょう。すると、解決策や折衷案を、いろいろな角度から考えやすくなります。

ビジネスパーソンの中には、まわりが仕事をしていたり、デスクから離れずに食事したりしているのを見ると、たとえ昼休みでも自分だけしっかり食事休憩を取ることに罪悪感を覚える人がいます。

在宅勤務中に、就労時間外はしっかり休みたいと思っていても、チャットに参加しないとサボっていると決めつけられるのでつい反応してしまうということもあるでしょう。

そんなときこそ、実際にその思いや考えを書き出すことで、客観的な視点で思考を進めていくことができます。そうして、休むことに対する自分なりの納得感ができていくはずです。

休めないという人は仕事や家事を全力でやるタイプ

どんな環境においても、しっかり充電できている自分だからこそ、貢献できることが増えていきます。

いつも「休めない」と言っている人は、おそらく仕事や家事を全力でやるタイプで、できない理由をあまり口にせず、ひたすら「どうしたらできるか」を考える努力家の人ではないでしょうか。

そんな仕事における姿勢や考え方こそ、休むことにも生かしてほしいと思います。「仕事さえこなせばそれ以外は何とでもなる」「自分さえ頑張れば何とかなる」というスタンスは、やっぱり心身にとって危険です。「休む」ことは、自分に対してとても丁寧にケアをしていく習慣です。そして、「何もしない」とは、自分を丁寧に扱う生き方にほかなりません。

食事のバランスを考えるのは、人生のバランスを考えることと似ていると私は考えています。

私自身、かつてダイエットをしていた者としても、栄養士として診る側としても、「無理は続かない」というあたりまえのことを骨身にしみて感じています。無理を通そうとすると、心身のどこかに穴が空いてしまうのです。程度の差こそあれ、それはどんな人でも変わりません。

その穴は、人と比べて自分に足りていないもので無理に埋めようとするよりも、「自分が持っている資源をどのように最大限に生かすか」を考えることで埋められると考えています。

営業をしているビジネスパーソンが、自分が扱う商品やサービスについて熟知していないことはまずありません。子育て中のお母さんなら、自分の子どもを一生懸命に理解しようとします。

でも、なぜか自分自身を知ることについては、「そんな時間なんてない」といって、体調や心の状態の変化にも気づきません。むしろ「これが当たり前」「今までこのやり方でやってきた」「これでうまくいっている」と思い込んでいる人のほうが多いような気がします。そして、そんな人が、ある日突然ポキッと折れてしまうのです。

解剖学者の養老孟司さんが、とある動画でこのようなことをおっしゃっていました。

(自分に)どういう暮らしが合っているのかという、その「ものさし」を、一人ひとりが回復しなければならない。根本になるのは自分のバランス。無理しなくちゃいけないときも当然あるでしょ? それはそれでいいのだけど、日常生活がそもそも無理になっちゃってることが多いと思う。

自分のバランスを守って取捨選択するのは、自己中心的な行為でもなんでもなく、これもまた、まわりに迷惑をかけないようにするための「大人のたしなみ」の1つだと私はとらえています。

みんながそれを優先したうえで、それぞれに異なる相手の生き方を気持ちよく尊重できたらいいですよね。心の病気も体の病気も、少なからずまわりに影響を及ぼします。とくに、家族には大きな影響を及ぼすものでしょう。少しくらい自己中心的になったとしても、自分の心身の健康を守ることに貪欲になるのは、まわりにいる大切な人への負担を減らすための「思いやり」でもあるのです。

日常生活の中に運動を取り入れる

心身の健康のために、そして疲れをためないために、どんな人にとっても大切なのが運動です。

「頭が疲れたら、同じだけ体を疲れさせるとバランスを保てるよ」

この言葉も、かつて心療内科併設の研究所で仕事をしていたときに、尊敬する上司からいわれた言葉です。1日中部屋にこもってクライアントの相談に乗った日には、なかなか眠りにつけなくなるという私へのアドバイスでした。そこで、頭や気持ちに疲れを感じた日は、近所をランニングするようにしました。

すると、「頭が冴えてしまって眠れない」状態が一切なくなり、驚くほど気持ちよく眠れるようになったのです。そして、よく眠れた日は心身ともにエネルギーが満たされていて、新しい1日をフレッシュにはじめられるようになりました。

私がしたことは、日常生活の中に、ただ軽い運動を取り入れただけです。それだけで体のみならず心までみるみる蘇っていくことに、ちょっとした感動さえ覚えた出来事でした。

現代は体よりも、むしろ頭だけが疲れている人のほうが多い時代です。仕事もコミュニケーションも買い物も、すべてパソコンやスマホの画面の中ででき、気分転換に観るのもテレビやパソコンの動画、それこそ運動をするのでさえ動画を観ながらですから、家から一歩も出ずに、すべてが家の中で完結してしまいます。

でも、ずっと画面を見ている生活は、当然のように眼精疲労や脳疲労を引き起こします。ハードな頭脳労働をしたうえに、オフの時間もずっと画面を見続けて、横になって体を休ませてばかりいると、どうしてもバランスが悪くなります。また、パンデミック以降、疲れをためこんでいる人たちの生活を見ていると、家の中で過ごす割合が極端に多いようです。

そこで、なにか体を動かすことで楽しそうに思えるものがあれば、まずは積極的に試してみるのをおすすめします。運動に限らず、散歩でもいいと思いますので、外の空気を吸う、空を見上げる、緑を見るなど、自然に触れることにも少し意識を向けましょう。

頭を使ったら、それと同じくらい体も使う。そうして、頭と体を一緒に休ませるのが健康にとって必要だというわけです。

ストレスホルモンが過剰に出にくくなる

運動がもたらすメリットについては、ハーバード大学の精神医学の准教授であるジョン J.レイティと、サイエンスエディターのエリック・ヘイガーマンの共著『脳を鍛えるには運動しかない!』(NHK出版)が、とても参考になります。運動と脳の関係を、ストレス、うつ、ホルモン、学習といったさまざまなテーマから丁寧に解説しています。

例えば、「運動によって体のコンディションが安定すると、ストレスを受けても急激に心拍数が上がらなくなり、ストレスホルモンが過剰に出にくくなる」といった科学的な事実が、豊富なケーススタディやエビデンスとともに紹介されています。

すでに運動習慣がある人も、この本を読むと、もっと体を動かしたい気持ちになるでしょう。よく「ダイエットのために運動をしたほうがいいですか?」と聞かれるのですが、やせるためという目的だけで運動をしても、結局は「自分はやせなければだめなんだ」と思いながら運動していることになり、さほど幸福感につながっていない場合があります。すると、ほとんどの場合で続けることができません。

それよりも、自分なりに「楽しい」「スッキリした」と感じることのほうが大切。運動がどうしても苦手なら、家事を楽しむのでも構いません。料理、靴磨き、アイロンがけ、雑巾がけ……と、手作業は結構体力を使いますし、手作業に没頭していると、脳の活動領域が切り替わって気分転換になるはずです。

また、掃除や片づけなどはそのとき目に見えて結果が出るうえに、生活環境も整えてくれるので、快適さと満足度(幸福感)がどんどん増していきます。

自分に合ったかたちで、自分なりに体を動かすという営みが、心身のコンディションを整えることにつながるのだと思います。

私たちが日々行うインプットやアウトプットは、ときに焦りや不安、怒りなどのストレスを生み、それにより自分自身がどんどん削られていく場合があります。そんなとき、「ひとり時間」を少し持つだけでもクールダウンができるし、自分に課している目標をいったんやめて何もしない時間を持つことも心が休まります。

「何もしない」ということは、究極の心の栄養補給なのです。とはいっても、やるべきことは毎日たくさんあって、そう簡単に削れないものもあるでしょう。そんなときは、「義務」「○○すべき」と思わずに、自分の充電リストに近づける視点が大切です。

例えば、料理をしたくないときを考えてみます(もちろん、栄養士である私もあります)。「自分のトリセツ」に「好きな音楽を大音量で流すとすごくリフレッシュできた!」というログがあったら、次から大音量で音楽を流しながら料理してもいいわけです。家族はちょっと驚くかもしれませんが、自分の気持ちは格段に楽になります。

また、単純に義務と感じていることの回数を減らすのも一案です。掃除が嫌いな人なら、「週末だけ掃除をする」と決めて、週末の楽しみにしている予定の前に「30分だけやる」としてもいいでしょう。

ただ義務をこなしているだけでは、自分の充電には結びつきません。自分の充電リストを眺めながら、「どう近づけるか」「どう減らすか」「どう組み合わせるか」を考えましょう。

「自分のトリセツ」がたまっていくごとに、これまで義務と思っていたものごとを義務と感じないやり方が、いろいろ考えられるようになっていくはずです。

「何もしない」時間を意識して取り入れる

コロナ禍で、家で過ごす時間が長くなればなるほど、家という空間や時間の使い方が自分に与える影響が大きくなっています。

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その中で、家というハード面しかり、仕事の仕方や気の持ちようといったソフト面しかり、心と体の疲れをリセットできる環境をつくることはもはや必須事項となっているといえます。

毎日頑張っているはずなのに、日々の対応にただ追われていると、ふと「なんのために頑張っているのだろう?」と思うことがありませんか。もしかして「自分の人生ってこんなもんだろう」と、未来に希望を持てなくなるときもあるかもしれません。頑張っていたのに、思っていたのとは違う場所にたどり着くことは、誰の人生においても起こりうることです。

だからこそ、「何もしない」時間をもっと意識して取り入れて、もっと上手に自分を活かせる方法を考える必要があるのではないでしょうか。「今自分はどこにいるのか」という現在地の確認、自分が理想とするゴールとの距離感や方向性を確認する作業を日常の中でこまめにできれば、早めの軌道修正が可能です。「何もしない」からこそ、理想の生活に近づいていけるのです。

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寝ても疲れがとれない人がすべき「3つのこと」

日本人がやりがちな「寿命を削る」2つの悪習慣

休日に動かない人ほど疲れが取れないワケ

提供元:休むことに罪悪感ある人に身につけてほしい習慣|東洋経済オンライン

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