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2021.10.17

イェール大卒の医師が明かす「脳疲労」の正体|日本人を苦しめる「べき思考」という現代病


猛スピードのジェット機でレールの上を走っているような現代人の生活は、知らぬ間に脳を疲れさせています(写真:rainmaker/PIXTA)

猛スピードのジェット機でレールの上を走っているような現代人の生活は、知らぬ間に脳を疲れさせています(写真:rainmaker/PIXTA)

私たちの多くは、「こうあるべきだ」という思いにとらわれて、つねに効率を追い求め、忙しい日々を送っている。では、なぜ私たちは人生に充実感を感じられないのだろうか。そのような生活から得られたものは、私たちを幸福にしているのだろうか。

4000万人ものSNSフォロワーを誇る作家、ポッドキャスターのジェイ・シェティは、僧侶となるべく修行を重ねた経験をもとに、自分らしく生きるためのメソッドを紹介し、世界中から熱狂的な支持を得ている。

世界30カ国以上で刊行され、ニューヨーク・タイムズ・ベストセラー1位ともなり、8月に日本語版が刊行されたシェティの著書、『モンク思考』。

今回、本書でも取り上げられるマインドフルネスの持つ驚くべき力について、脳科学者で精神科医の久賀谷亮氏が解き明かす。

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疲れがとれないのは「脳疲労」が原因

身体を休めても疲れがとれずに残っていたり、集中力が落ちたりする場合は、脳疲労が関係していると考えられます。

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脳は臓器です。筋肉と同じですから、脳の疲労は、体の疲労と比較することができます。たとえば、長時間コンピューターを使っていても、脳は疲れに気づかず、私たちもそれを感じません。でも実は、90分間コンピューターを使うことは、踏み台昇降を100回やるのと同じ疲労度なのです。

脳疲労が起きると、眠れなくなったり、ぼーっとしたりといった症状が表れ、パフォーマンスが落ちてしまいます。集中力に欠け、普段は何も考えずにやれていた車庫入れで車をぶつけてしまったり、部屋の中でテーブルに体を当ててしまうというようなことが起きます。

アメリカのオリンピック選手などは、こういったことを知っていて、トレーニングの前にはコンピューターや携帯電話を使わないようにしています。

まだすべてが解明されたわけではありませんが、脳の疲労物質は少しずつわかってきています。代表的なものは、アデノシン三リン酸(ATP)が分解されて発生するアデノシンという物質で、脳の前帯状皮質にくっつくことで、脳疲労を生じると考えられています。

脳疲労の諸悪の根源は「心ここにあらず」

多くの方は、脳疲労が起きると、コーヒーや栄養ドリンクなど、カフェインをとることに走ってしまいます。しかし、カフェインは、疲労を感知する脳の部分をブロックしてしまうものです。一過性のしのぎにはなりますが、効果が切れれば、また舞い戻ってしまいます。

久賀谷 亮(くがや・あきら)/医師・医学博士。イェール大学医学部精神神経科卒業。アメリカ・神経精神医学会認定医。アメリカ・精神医学会会員。日本で臨床および精神薬理の研究に取り組んだのち、イェール大学にて先端脳科学研究に携わる。その後、同大学で臨床医としてアメリカ屈指の精神医療の現場に8年間にわたり従事。その他、ロングビーチ・メンタルクリニック常勤医、ハーバーUCLA非常勤医などを経て、2010年にロサンゼルスにて「TransHopeMedical」を開業。著書に『世界のエリートがやっている 最高の休息法』『ロスの精神科医が教える 科学的に正しい 疲労回復 最強の教科書』『脳が老いない世界一シンプルな方法』がある(写真:本人提供)

久賀谷 亮(くがや・あきら)/医師・医学博士。イェール大学医学部精神神経科卒業。アメリカ・神経精神医学会認定医。アメリカ・精神医学会会員。日本で臨床および精神薬理の研究に取り組んだのち、イェール大学にて先端脳科学研究に携わる。その後、同大学で臨床医としてアメリカ屈指の精神医療の現場に8年間にわたり従事。その他、ロングビーチ・メンタルクリニック常勤医、ハーバーUCLA非常勤医などを経て、2010年にロサンゼルスにて「TransHopeMedical」を開業。著書に『世界のエリートがやっている 最高の休息法』『ロスの精神科医が教える 科学的に正しい 疲労回復 最強の教科書』『脳が老いない世界一シンプルな方法』がある(写真:本人提供)

本当に脳疲労を減らすには、まずは予防的に、脳のマルチタスクをしないこと、つまり、脳の複数の場所を使うような作業をなるべくしないということが大切です。オリンピック選手も、脳の使い方に長けてくると、パフォーマンス時に使う脳の部分が小さくなり、効率よく働くようになるのです。

よく言われることですが、25分間作業をしたら1回休憩をとるといったことが大切ですね。目と脳はつながっていますから、目の疲労をやわらげることも重要です。たとえば、オフィスなど室内環境の色も、脳に作用しています。観葉植物などグリーンのものがあると、疲労を軽減すると考えられます。

そして、もう1つは、マインドフルネスです。われわれは、放っておくとつねになにかを考えている生き物です。それが自然な状態なのですが、考えが脱線し、暴走していくことが多々あるわけです。その脳の活動をぴたっと止めることが、マインドフルネスです。

脳疲労の諸悪の根源は、心がさまよう状態、つまり雑念です。雑念は、決して悪いことではありませんし、それが人間の創造性のもとにもなっていますが、ここで言う雑念は、「心ここにあらず」という状態のことです。次々と物事を考えてしまい、それが脳の回路を酷使してしまうために、ネガティブなことが起きるのです。

マインドフルネスはとても単純です。手元にある物をじっと眺めることもマインドフルネスですし、「今日の天気はどうかな」と雲の色を眺めることもマインドフルネスです。ティーブレイクもよいですし、ハードルを低く、気楽に取り入れてよいものです。

ただ、カジュアルにやっていると、それだけでは流されてしまいがちです。ですから、最低限の習慣を作ったほうがよいでしょう。朝の10分間だけでもマインドフルネスをやるという程度でも、継続すればパワフルなものになります。

私は、「儀式」を持つといいと考えています。たとえば、シャワーを浴びる、服装を着替える、いつもと違う道を通ってみるなど、モードを切り替えられるとよいでしょう。

自然に触れたり、運動したりするのもいいことです。なかでも、サウナは特にいいですね。メンタルヘルスのなかで、特に自律神経は大きなテーマです。

サウナは、熱さと水風呂とで、交感神経と副交感神経を極端にオンオフして切り替えます。いつもと環境も変わり、デトックスにもなる。さらに、自分の体に意識を向けやすく、脳も休まります。

ユニークなのは腹を立てることで不安を吹き飛ばす方法です。腹を立てることは交感神経を優位にし、それが脳によって不安と同じような状態だと錯覚されてしまいます。それにより不安が吹き飛ぶ可能性があるのです。

なにより、構えすぎないことですね。日本人はすぐ方法論に走りがちですし、やり方を知って、きちっとやろうとしてしまいます。深刻になりすぎるわけです。

医療者と話していても、じゃあそれをどんなプログラムでやろうか、ライセンスはどうしようかという話になってしまいます。プログラムに走りすぎると、「マインドフルネスをしなければ」ということを考えすぎてしまい、かえって脳疲労の原因になってしまいます。構えず、継続できることがよいでしょう。

「べき思考」こそが現代にはびこる病

コロナ禍のような状況では、脳の扁桃体という部分が暴走し、感情的にもつねに不安定になり、理性が飛んだ状態になりがちです。マインドフルネスは、理性をつかさどる前頭前野を落ち着かせ、扁桃体の暴走を鎮めることでもあります。

『モンク思考』にも書かれていますが、何千年も前に僧侶によってはじめられた瞑想のやり方が、実際に、脳をうまくチューニングするような働きを起こしているということが科学的にわかってきました。

専門の方は、SNSによって脳疲労が起きるとも言っていますね。私が推測するに、ネットサーフィンをすることによって、脳を使う頻度が増えていますし、心がさまよい、さらに「いいね」を欲しがるという願望につねに依存的になっています。このこと自体が、脳に対して非常にネガティブに作用してしまいます。

実は、マインドフルネスによって鎮まる、その脳のコアな部分こそが、「自分のことをもっとわかって」「自分を好きになって」という感覚に関わる部分なのです。SNSで「いいね」を欲しがっているとき、その人の脳内では、その部分が過剰に酷使されているという研究データもあります。

また、「こうあるべきだ」という「べき思考」が、現代人の現代病のようにはびこってもいます。

われわれは安定が欲しいものですし、社会の通念があまりにも確立していて、そのレールの上を歩かなければならないという観念にとらわれてもいます。でも、その道をずっと進んでも、天井のない、そして、幸せのない一本道です。

極端な話ですが、私は、この「べき思考」さえ外れれば、うつ病などいくつかの病態はずいぶん減るのではないかと思っています。

たとえば、川があるとしましょう。底には、泥が沈殿しています。「こうあるべきだ」と日々考えている脳は、泥で水が濁っています。マインドフルネスをやると、この泥が掃除されます。すると、川底に埋もれていた自分本来の夢や願望、大事なものが見えてくるわけです。

実際にマインドフルネスをやっている人は、こういった感覚を実感されているでしょう。ただ、泥は何層にも積み重なっていて、すべてを一掃するのはなかなか難しいことでもあります。

私自身、夢をどこかに沈めて生きてきたところがあります。私が脳科学の道を選んだのは、脳という無限の可能性に興味があったからですが、特に最初の頃は、研究をやることで、川が泥で濁っていきました。

当時のやるべきことは、とにかく研究論文を書き、それをスコアの高い医学雑誌に出すということだったのです。泥の上に泥が何層も重なり、自分の本当の夢なんてどこへ、という状態にもなりました。毎日イライラしていましたし、まさに扁桃体が暴走した状態だったと思います。

しかし、マインドフルネスをやることで、はじめて、そういった感情を緩和し、消化することができたように思います。

もらうより、あげるほうが幸福

『モンク思考』の後半には、奉仕をすること、与えることなどが書かれています。非常にすばらしいと思いましたし、実際に、最後はそこにつながっていくと思います。

人間は、お金が欲しいと思っているものですが、実は、自分がお金をもらうよりも、他人にお金をあげたほうが幸福度が高いということが、科学的データで報告されています。

昨年、「世界幸福度調査」が発表されました。毎年、世界中の幸福度を測る統計を出しているものですが、報告によると、幸福度にいちばん強く影響したファクターは、職を失ったりお金を失ったりといったことよりも、財布を落としたときに、それを拾って届けてもらえるかどうかといったような、コミュニティーにおける信頼や親切心だったのです。

もともと日本人は、親切な人たちだということが国際的に知られています。ただ、都市化してくると、やはり人間どうしのつながりに、幸せの入ってくる部分がなくなってしまいがちです。

われわれのなかには本来、モンク思考的な道徳が備わっていると思います。性善説で人を尊重する、人に親切にする。そして、自分とは何者であり、自分は何をしたいのかを知っている。しかし、それが泥で見えなくなっているのです。

たったの5秒、脳を休める

みなさんは、猛スピードのジェット機で、レールの上を走っているようなものです。効率を意識して、つねに脳を酷使し、脳疲労を起こすモードが体に染みついている。そして、そんな状態に陥っていることに気づくことすらなく、生きているのだと思います。

そんなときは、すごく退屈でつまらないものだけど、目の前にあるものをただじっと見つめる時間を、たった5秒でも作ってみるとよいのです。人生はすべて逆説と言いますが、実はそのほうが人生の近道である場合があるのです。

現代は、社会の膿が出ている状態だと私は思っています。どこかにあるはずの人間の道徳が吹き飛ばされてしまっている。でも、われわれは、音楽、芸術、スポーツなどから、人はそれぞれ違っているということ、相手をリスペクトするということを知っているはずです。そのシンプルなメッセージを、今後も伝えていければと思っています。

(構成:泉美木蘭)

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提供元:イェール大卒の医師が明かす「脳疲労」の正体|東洋経済オンライン

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