2021.09.28
声で「信頼される人・されない人」の決定的な差|好印象を与える声のヒントは「赤ちゃん」にあり
「相手に与える印象の4割を『声』が占めている」この衝撃の事実をご存じでしたか?(写真:mits/PIXTA)
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会議では声が通る人の意見が採用される、同じような内容でも“いい声”の人の企画が褒められる――。世の中には、声で得をする人と損をする人がいることを肌で感じている人も多いのでは?
長年にわたり声の研究を続けてきた村松由美子さんによると、「相手に与える印象の4割を『声』が占めている」といいます。
声の影響力や、誰でもできる声の改善法などについて、松村さんの著書『話し方に自信がもてる声の磨き方』より、一部を抜粋・編集しお届けします。
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相手に与える印象は「声」が4割
アメリカの心理学者であるアルバート・メラビアン博士の研究をまとめた「メラビアンの法則」によると、話し手が聞き手に与える印象は、「外見(しぐさ・表情)」が約55%、「声の質、大きさ、テンポ」が38%、「言葉の内容」が7%とされています。
(画像:『話し方に自信がもてる声の磨き方』より)
注目したいのは、約4割を「声」が占めているということ。それほど声は人の印象を大きく左右するのです。
ちなみに、「言葉の内容」が聞き手に及ぼす印象はたったの7%しかありません。
それもそのはず。
最近の報告によると、私たちの話し言葉のうち、「音声」は「言語」より先に脳の大脳辺縁系に到達することがわかりました。
どういうことかというと、先に入力された声の印象が、後から入力される言語の受け止め方に影響を与えるということなのです。
大脳辺縁系は、食欲・性欲・睡眠欲などの「本能」を司ります。さらに、入ってきた情報に対して「好き・嫌い」「快・不快」といった感情のレッテルを貼ります。
たとえば、入ってきた音声に対して、大脳辺縁系が「わぁ、よく響くいい声だなぁ」という「好き/快」のレッテルを貼ると、聞き手の脳内では快楽物質ドーパミンなどのホルモンが分泌されます。
そのため、聞き手はうっとりした気持ちになり、「この人の言うことを聞いているとワクワクするな〜。ということは、きっと面白い話をしているに違いない!」と認識します。
逆に、入ってきた音声に対して「うーん、聞きづらい。嫌な声だなぁ……」という「嫌い/不快」のレッテルを貼ると、聞き手の脳内では怒りのホルモンであるノルアドレナリンが分泌されます。
そのため、「聞いているとイライラする。ということは、つまらない話なんだろうな」と認識します。
つまり、声によって聞き手に与える感情や、話の内容の受け止め方まで変えてしまうのです。
「じゃあ、どんなに会議やプレゼンの資料をしっかり作成しても、声が悪いと内容はほとんど伝わらないってこと?」
はい、そうなんです……。ショックですよね。
人は無意識に「うその声」を聞き分けている
かといって、意識して人好きのしそうな高い声を出してみたり、威厳のありそうな低い声を出してみたり、あえて元気な声を出してみたりと、口先だけで声を変えても、仕事や人間関係はたいして変わりません。
なぜなら、声はうそをつけないから。
作り物の声にはどうしても「うそ偽り」の響きが混じります。それに聞き手は違和感を覚えるのです。
人はうそをつかれることに敏感です。だからうそが混じった声を聞くと、無意識のうちに「この人に任せるのはちょっと……どうかな」となります。
つまり、信頼してもらえなくなるのです。
では、そんなうそのない「本当の声」って、どのようなものでしょう?
それは、あなたの体から最も自然に、最もラクに出せる声のこと。そして、最もよく響く声。出すと、とても気持ちいい声でもあります。
力まずとも豊かに出る声なので、声がモゴモゴとこもったり、うわずったり、ひっくり返ったりすることはありません。
声に無理がなく、とても聞き取りやすいので、聞き手もゆったりとしたいい気持ちになれます。
つまり、声を出す自分にとっても、聞く相手にとっても「いい声」なのです。
そのポイントは「響き」にあります。
その、最も響きのある「本当の声」は、赤ちゃんの状態に戻ることで出ます。
発声に関して言えば、「赤ちゃんの泣き声」が理想的なのです。
私たちは生まれたとき、「オギャー!」となんとも大きく響きわたる声とともに、母胎からこの世界へと飛び出します。
このときの赤ちゃんのありのままの声は、クリアでストレート。はっきりくっきり、人の耳に届きます。電車の中だったら車両中に響きわたるほどです。
赤ちゃんの声が「いい」理由
なぜこんなに響くのかというと、赤ちゃんには無駄な力みがないからです。
寝返りもできない生まれたての赤ちゃんは、人間の体にとって最もリラックスできる、力が抜けたあおむけの姿勢になっています。
この姿勢は体に負担がかからないので、呼吸筋や喉の筋肉が最大限に働き、喉が十分に開いた状態です。だから、よく響く声が出せるのです。
また、あおむけで寝ている赤ちゃんの場合、横隔膜にも負担がかかりません。
横隔膜とは、肺の下にあるドーム状の筋肉で肺を動かす器官のこと。この横隔膜は、人間が直立していると重力で他の器官に圧迫されます。そのため動かすのに少し力がいるのですが、横になっているとその重力が軽減されるため、より深い呼吸がラクにできます。よく響く声には、豊かな呼吸が必要なのです。
横になっている赤ちゃんは、無意識のうちに横隔膜を柔軟に使うことができるので、吐く息が力強くなり、大きい声が出るのです。(和田美代子著/米山文明監修『声のなんでも小事典』講談社)
赤ちゃんが泣く大声が、あたり一面に響きわたるのは、こんなふうにリラックスして体中から声を発散しているからなのです。
赤ちゃんのようになんの力みもない、ありのままの自分の声。この声こそが、その人がもっている「本当の声」です。これはつまり、誰でもよく響くいい声をもっているということでもあります。
みんな生まれたときは、この自分本来の声からスタートしています。
ですが、成長するうちに、私たちの声にはさまざまな理由で抑制がかかります。
騒いじゃダメ。変なことを言っちゃダメ。笑われないように。なるべく他の人と同じように……。
いうなれば社会性を身につけていくわけです。
赤ちゃんのような、よく通るいい声のポイントは「響き」にあります。
声は空気の振動、バイブレーションです。声が響くというのは、発声者の豊かな呼吸によって、空気が揺さぶられているということです。つまり、よく響く声とは、呼吸によって空気をよく震わせるための強いエネルギーがあるということ。このエネルギーに圧されて、人は心を揺さぶられます。
大きなバイブレーションが起きる「響く声」を出せるようにするには、端的に言うと、あなたの体の使い方を「赤ちゃんの状態」に戻せばいいのです。
そのために、私は「ヴォイササイズ」(声のエクササイズ)をお伝えしています。大学院で研究し、国内外の健康心理学会で論文発表したこのヴォイササイズの基本となるのは次の基本の3ステップです。
STEP1 筋肉をゆるませる
STEP2 姿勢を整える
STEP3 呼吸を整えて声を出す
今回は、その中からまず行ってほしい「筋肉をゆるませる」トレーニングをご紹介しましょう。
首ぐるりんエクササイズ
首、喉元がガチガチに硬いと声は出ません。響く声を出すために、まずはデスクワークや日々のストレスで硬くなっている全身の筋肉をほぐし、リラックスさせます。
リラックスして、頭の重みで自然に首が重力の方向に下がり、そのままぐるりと回るイメージでゆっくり回してください。
ため息エクササイズ
(3)のポイントはふたつ。
ひとつめは、ため息をつくときには、「はあ〜っ」と大きな声を出してください。
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この気持ちよく力が抜けた「はあ〜っ」という声が、お腹の奥底から出る自分だけの魅力ある声を作り上げていく土台になります。
ふたつめは、両肩を「落とす」ところ。「下ろそう」と思うとそこに意思が働くので筋肉が力みます。
ゆるませることが目的なので、気持ちよさを感じながら力を抜いて、重力に任せて落としましょう。
いつもがんばっている肩回りの筋肉をリラックスさせてあげることで、声がスムーズに出やすくなります。ぜひ試してみてください。
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提供元:声で「信頼される人・されない人」の決定的な差|東洋経済オンライン