2021.09.21
本当に有能なリーダーは「忙しい」といわない理由|一般的な管理職の6割は忙しさを口にするが…
コロナ禍でリモートワークが普及し、ビジネスの場面においては特に個人の能力や自律が重視されるようになりました(写真:kouta/PIXTA)
フリーランスでの働き方が一般化してきたり、会社組織での上下関係や肩書きに縛られない働き方がでてきたり、ビジネスの場面においては特に、個人の能力や自律が重視されるようになりました。
しかし、リーダーは「個」で完結できません。
チームと組織の成功のため、リーダーにはリーダーのあり方があり、そして、そのあり方は時代の移りかわりに伴ってアップデートしていく必要があります。
『AI分析でわかった トップ5%リーダーの習慣』では、1万8000人のビジネスパーソンをAIが分析し明らかになった、優秀なリーダーに共通する習慣を紹介しています。
本稿では同書より一部を抜粋しお届けします。
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本当に有能なリーダーは「忙しい」と言わない
私が113名のトップ5%リーダーへヒアリングして衝撃的だったのは、誰一人として「忙しい」と発言しなかったことです。
なかにはトラブル対応のために土日出勤したあとにヒアリングに対応してくれたり、オンラインで世界各地の顧客に対応した直後に今回の調査に協力してくれた方もいました。
時間的に余裕がない方もいたはずなのですが、「忙しい」という言葉を発することを躊躇しているように感じました。正直なところ、ヒアリングの時間を取ることを明らかに嫌がっている方もいましたが、それでも「忙しいから困る」といったような発言をする人は誰もいなかったのです。
一方、102名の一般的な管理職に対するヒアリングでは、嫌な表情する方はさほど多くありませんでしたが、人手不足や忙しさを口にする方が6割ほどいました。
5%リーダーの中でもメンバーから話しやすいと評価される方は、独特の間(ま)を持っており、「何でも話していい」という雰囲気があります。
今回のヒアリング調査に関わった弊社のメンバーも、そういった5%リーダーのヒアリングをする際は、ついつい話すのが気持ちよくなって聞くことよりも話すことが多くなってしまうことも多々ありました。
そこで、「話しかけやすい5%リーダー」たちの行動履歴をさらに深掘りしました。
すると、同じ職種の方に比べて業務量は若干多いことがわかりました。配下のメンバーも多く、対応すべき商品ラインナップや顧客数なども決して少なくありません。そして、かなり多くの会議が入っていました。
しかし、カレンダーは15分刻みになっており、こまめにすき間時間がありました。
アウトルックやGoogle カレンダーでは初期設定が1時間刻みになっていますが、5%リーダーは初期設定を変えて15分刻みにしている方が多かったです。
もちろんすべての5%リーダーではありませんが、私が確認した5%リーダーの31%が15分設定にしていました。
15分刻みの設定にしていた5%リーダーに話を伺ってみると、打ち合わせが入らない時間をわざと作り出しているようでした。
ヒアリングでは、「たまたま時間が空いただけ」「会議時間を短くしたいから」といった回答が多く、これは5%社員と同じ傾向でした。しかし、この行為の目的が何か追求したときに、5%社員との違いが明確になりました。
すき間時間は「話しかけられる」ための時間
5%リーダーは自分のためにすき間時間を作っているのではなく、メンバーから「気軽に話しかけられる時間」を作っているとことがわかったのです。
自分から積極的に話しかけることよりも、話しかけかけられやすい雰囲気や時間を作るように彼らは工夫していたのです。
たしかにメンバーから見て、予定がきっちり詰まっている上司よりも、すき間時間がある上司のほうが話しかけやすいのは明確です。
5%リーダーは、話すことよりも話しかけられることを重視する人たちです。
だから時間の余裕があることをあえて見せていました。
時間的な余裕を生み出すために会議改革や、資料テンプレートの統一などに取り組んでいることもわかりました。
5%リーダーは、チーム全体の「時間的余裕」を生み出すためにさまざまな工夫をしていたわけです。
こういったことを感じ取るメンバーは必ずいます。
自分たちのために時間の使い方を工夫して、時間と気持ちの余裕を作ることに力を注いでいる上司を見れば、自然と信頼と感謝が高まります。
こうして、実際は忙しくても忙しい素振りを見せず、自ら率先して「すきま時間」を作り出すことで、メンバーから話しかけられやすい間を作っていたのです。
「今ちょっといいですか?」と言い合えるチームメンバーであれば、チームワークがすごくうまくいっています。
事業開発や、企画会議、ブレーンストーミング、アイデア出しの会議でも「今ちょっといいですか」が言えるとアウトプットをしやすくなります。
私は、この4年間で19社17件の事業開発に携わりました。
その17件のうち会議でアイデアが出たのはたった2件。15件は会議が終わった後に、前室や廊下で、他の部門や上司に「今ちょっといいですか」が起点となっていました。
オンライン会議の後も、しばらく残っていると「今ちょっといいですか?」と声を掛けられることがあります。
出勤でもテレワークでも「今ちょっといいですか?」と言い合える関係性を作ることができれば、チームでの共同作業ははかどります。
お互いに協力し合う文化、過剰な気遣いがなく気軽に会話ができる雰囲気があれば、チームはうまくいきます。
それをお膳立てしていたのが5%リーダーでした。
相手のエネルギーを高める「ほめ方」とは?
メンバーとの1on1ミーティングは、相手のエネルギーを高めることが目的の1つです。
しかし、何でもかんでもほめればいい、というわけではありません。ときには間違ったことを指摘し、メンバーの成長を促すために厳しいフィードバックをします。
5%リーダーの1on1ミーティングの録画データを確認すると、全体的にメンバーが多く話せるようにうまく促していました。メンバーからフィードバックを求められれば、5%リーダーは良い点も悪い点もメンバーに伝わるように話します。
一般的な管理職と大きく異なっていたのが、ほめるポイントとほめ方です。
5%リーダーは、メンバーの能力やセンス、行動をほめて、メンバーに対して興味・関心を持っていることを示します。そして、日頃からメンバーによく声をかけ、ちょっとした進捗や成長を認めてフィードバックしてあげるのです。
自分からメンバーをほめるだけでなく、チームの同僚同士で励まし合うことも促していました。
ある製造業の5%リーダー3名は、一般の管理職よりも2.8倍多くポジティブなフィードバックを与えていました。
また、5%リーダーは第3者を通して相手をほめる間接承認をよく使います。
メンバーに直接「いつも親身にサポートしてくれてありがとう。とても助かっているよ」と伝えるのに加えて、第三者を通してほめると、メンバーの喜びは倍増します。
例えば、「〇〇さんがあなたのことをとても感謝していたよ。いつも親身にメンバーをサポートしてくれてありがとう」と伝えます。こちらのほうが、うれしさが増すのです。
その理由は2つ。
1つ目の理由は、第三者の名前が思いがけずに出てくると、ポジティブ・サプライズ(予想外の喜び)となるからです。
もう1つのポジティブ・サプライズはリーダーに対してです。
「第三者からのフィードバックを集めてくれたなんて、リーダーはすごいな」
「陰ながら自分のことをしっかり見ていてくれたなんて、うれしい」
と自分に対して興味・関心を持ってくれるリーダーに対して感謝の念を抱くのです。
1on1ミーティングでメンバーと話す際には、事前にそのメンバーのことを考えてください。
「こういうことがあった」というわずかな記憶があるだけでも対話は弾みます。
5%リーダーは、事前にメンバーの勤務票や成果を見て、体調面や成長を確認しています。1on1ミーティングも社内会議も、準備で8割決まると言ってよいでしょう。
ネガティブなことはどう伝える?
そして5%リーダーは、フィードバックの仕方も特徴的でした。
相手に改善を求めるフィードバック、つまりネガティブなフィードバックは最後に持ってきます。
はじめに1つ、2つ相手の良い点をフィードバックし、相手が聞き入れる体制を整えてからネガティブなフィードバックをします。
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一般的な管理職は、いきなりダメ出しやネガティブなフィードバックをすることもあります。しかし、半数以上のメンバーは聞き流すことでそのフィードバックから逃げています。
心理学者のロイ・バウマイスターは、「1つのネガティブを打ち消すのには、4つのポジティブが必要」だと言っています。
トップ5%リーダーは、4つとは言わないまでも、ポジティブなフィードバックを多く、そして先に出すことで、ネガティブなフィードバックを相手が受け止めるように工夫しているのです。
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提供元:本当に有能なリーダーは「忙しい」といわない理由|東洋経済オンライン