2021.07.05
渋谷「ヤクルトのアイス屋さん」の意外な反響|いま「昭和レトロ」が盛り上がりを見せている
6月1日〜8月1日の2カ月間、SHIBUYA109渋谷店の「IMADA KITCHEN」で展開されている「ヤクルトのアイス屋さん」。ポップなイラストが施された壁面やフォトスポットなど、SNS映えを意識した店舗装飾が特徴(筆者撮影)
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今、若い人を中心にトレンドキーワードとなっているのが昭和レトロ。食品業界ではとくにスイーツのジャンルで、昔懐かしいデザインや味の商品が盛り上がりを見せている。「硬いプリン」やバナナジュースなどもその系譜に連ねることができるだろう。
これを背景に、若者の街、渋谷で期間限定のショップが誕生した。その名も「ヤクルトのアイス屋さん」だ。SHIBUYA109渋谷店地下2階「IMADA KITCHEN」(イマダキッチン)にて、2021年6月1日〜8月1日の期間、展開されている。
まさに昭和の黎明期から、わが国の成長と歩みを共にするように普及してきた国民的飲料、ヤクルト。ある程度の年齢の読者では、おやつとして毎日のように飲んでいた人も多いだろう。
国民的飲料「ヤクルト」のアイスとは?
ショップで販売されるのは、イマダキッチンとヤクルトが共同開発したヤクルトソフトクリーム(450円)のほか、アイス de ヤクルト シャーベット(各450円)、ヤクルトパフェ(600円)など7種類。もちろん、ヤクルト独自の乳酸菌シロタ株やガラクトオリゴ糖などが配合されており、健康に配慮したヤクルトの特徴をしっかり備えている。
イマダキッチンを運営するSHIBUYA109エンタテイメント、マーケティング戦略事業部ソリューション戦略部の中島わか菜氏によると、「ヤクルトの味を再現することに一番にこだわった」という。
「昔から『ヤクルト味のアイスがあれば』という声は高く、凍らせて食べる人も多かったようです。ですから、ただの凍らせたヤクルトでは商品化の意味がありません。ポイントとなったのは、ヤクルトとミルク分のバランス。半年ほどかけて試作を繰り返し、最終的にはいくつか割合を変えたものを準備して、絞り込んでいきました」(中島氏)
1番人気の「ヤクルトソフトクリーム」、同店一押しの「アイス de ヤクルト アイスクリーム」、「ヤクルトパフェベリー味」(600円)を試食してみた。
左から時計回りにヤクルトソフトクリーム450円、ヤクルトパフェベリー味600円、アイス de ヤクルト アイスクリーム450円(筆者撮影)
結論を言えば、甘酸っぱく爽やかで、「ヤクルトをアイスにしたら……」のイメージそのままだ。アイスクリームはミルク分が少ない分、ヤクルトの味が濃く感じられるはずなのだが、ソフトクリームは口当たりがなめらかなので、口の中に味が広がりやすい。
パフェは底にフレークを敷き詰めてあり、食感の変化を楽しめる。また冷たくなりすぎた舌をちょっと休め、リフレッシュすることができる。
夏の暑さが本格的になれば、シャーベットの人気も高まりそうだ。
ヤクルトの期間限定ショップを立ち上げた理由について、中島氏は次のように説明する。
「渋谷を拠点に、未だかつてないオリジナルの食品を紹介するというのがイマダキッチンのコンセプトです。ヤクルトのアイス屋さんの企画はお客様からの声がもとになっています。ヤクルトさんにお声がけしたところ、偶然にもヤクルトさんのほうでも、アイスの企画を検討していたとのこと。今回お店として紹介できることとなりました」
「渋谷の文化」を象徴するものがない
イマダキッチンはさまざまな食品メーカーなどと連携し、オリジナルの食品を開発しては、1〜2カ月の期間限定で紹介する情報発信拠点。ヤクルトのアイス屋さんは第9弾の企画となる。
「渋谷はご存じのように東京でも指折りの繁華街で、若者の街としても有名です。でも、“渋谷の文化”を象徴するものというと、今ひとつ。例えば原宿だと、cawaiiカルチャーやレインボーわたあめが思いつきますよね。渋谷にもこうした、『名物』を生み出したい。これがイマダキッチンの狙いなんです」(中島氏)
イマダキッチンで開発するメニューは、食べ歩きできる「ワンハンドフード」、かつ、かわいくて写真映えのいいものを要素として取り入れている(筆者撮影
実は同店が位置するSHIBUYA109渋谷店地下2階全体が2019年6月にオープンした「MOG MOG STAND」という食べ歩きを切り口としたフロアで、スイーツやジェラート、コラボカフェなど10店舗が出店。ちょっと腰掛けて食べられるイーティングスペースや、今の時代は欠かせない、フォトスポットを備えていることも特徴だ。
イマダキッチンで展開する食品も、手軽に食べ歩きができる「ワンハンドフード」。また味のみならず外見も重要で、かわいくてSNS映えすることが第一条件となる。話題性や口コミ力アップの狙いもあるが、「若い人に思い出をつくってもらいたい」というのが企画者としての気持ちだそうだ。
そのため同社では、SNS映えについても研究を重ねている。
「映える条件としては、鮮やかな色合い。とくに赤が決め手です。またモノを単体で撮るよりは、手に持って撮ったほうが、『いいね』をもらえることが多いんです」(中島氏)
もちろん、ヤクルトのアイス屋さんの商品も、SNS映えの基本をしっかり押さえている。
また、店舗装飾にもSNS映えを意識した工夫を凝らしている。周囲の壁には、制服を着た女の子、プールサイドの風景、カラフルなフルーツといったイラストのラッピングを施した。これも、背景にして撮ると商品がきれいに見えるよう意図して配色が考えられている。
SHIBUYA109エンタテイメント、マーケティング戦略事業部ソリューション戦略部の中島わか菜氏(筆者撮影)
加えて、まだ世に知られていない若手アーティストを起用していることもポイントだ。SHIBUYA109エンタテイメントでは15〜24歳の若者で構成される「SHIBUYA109 lab.」というチームを抱え、若者の生の声を拾って、企画に活かしている。イマダキッチンの店舗装飾にも、インスタグラムの中から若者に選んでもらい、人気No.1のアーティストを起用するのだという。
では、今回のヤクルトのアイス屋さんの反響はどうだろうか。
「集客に関しては緊急事態宣言を考慮した対応も行っておりますが、ウェブメディアやSNSの反響は非常に高いです。とくに今回はいつもと客層が異なる点で特徴的です。イマダキッチンの客層は女性中心なのですが、今回は男女比で4対6と、男性が増えている。いつもの客層に加えてヤクルト好きの方が加わっているわけです。『これまでSHIBUYA109に来たことがなかった』という方もいらっしゃるようです」(中島氏)
海外からの反応が意外に高い
また面白いことに、海外からの反応が意外に高いのだそうだ。というのも、ヤクルトは1960年代に海外に進出。現在、海外では39の国と地域で現地生産を基本に商品を販売している。「ヤクルトレディ」による宅配も実施しているのだそう。
そのヤクルトにも、今回のコラボについてコメントをもらった。
「女性を中心としたプロジェクトチームによるブランド『三つ星Factory』にて、数年前から企画検討していた。そのような中でイマダキッチン様とコラボできる機会をいただき、実現に至った。今回のコラボを通じて若い消費者の方にヤクルトに興味を持ってもらい、接点ができることをうれしく思っている」(ヤクルト本社広報室)とのことだ。
なお、ヤクルト発売の「アイス de ヤクルト」を東急ストアにて取り扱っている。中身はイマダキッチンで提供されているアイスクリームタイプのものと同じだが、カップ入りのため持ち帰れる。数量限定で売り切れ次第終了となる。アイスの今後の展開については、今回の販売状況を踏まえて検討していくようだ。
このように、客層の裾野を広げることにも役立っている「昭和レトロ」。考えてみれば昭和期に大きく成長した企業や商品は多々あり、今後もさまざまな展開が考えられそうだ。
また今、ニュースと言えば新型コロナの話題で埋め尽くされている感があり、2019年の渋谷スクランブルスクエア開業も忘れ去られてしまったかのようだが、渋谷は今、2027年まで予定されている大開発のまっただ中で、めまぐるしく変わり続けている。とくにコロナ禍であることもあり、大人は敬遠しがちだが、ときには出かけてみると、思わぬ発見を得られるのではないだろうか。
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提供元:渋谷「ヤクルトのアイス屋さん」の意外な反響|東洋経済オンライン