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2021.06.23

やる気がない人とある人が分かれる生物学的理由|目の前の仕事が大事に思えなくてもしょうがない


無理せずにやる気、集中力を発揮する最適解とは?(写真:Pangaea、mits/PIXTA)

無理せずにやる気、集中力を発揮する最適解とは?(写真:Pangaea、mits/PIXTA)

目の前の仕事に集中できない、やる気すら出ないなど、どうしても仕事に身が入らないときもあるでしょう。リモートワークではなおさらという方も多いのではないでしょうか。生物学的な視点から、人間が努力してもどうにもならないことと、その理由をまとめた書籍『生物学的に、しょうがない!』より、集中ややる気のメカニズムにかかわるパートを抜粋、再構成してお届けします。

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気が散って集中できないの、しょうがない!

仕事に「集中できない」となげく人も、好きなゲームには没頭しているものです。つまり、「集中できない」のは、「集中すべきもの」のほかに「集中したいもの」があり、そちらに気持ちが奪われて、注意散漫になっているからなのです。

「集中したいもの」があるのは、いいことなんです。人生の喜びです。これを否定してはいけません。

だから、「集中すべきもの」のほうを考えましょう。集中すべきなのに集中できないのだとしたら、ほとんど社会の側の責任です。

狩猟採集時代を思い起こしましょう。

何時間も草原を歩いて、獲物を追いつめ「いざ狙い打ちだ」というときに、あるいは、食べられそうな木の実が見つかったときに、作業に集中できないという人はおそらくいないでしょう。

このような意義が「集中すべき仕事」に感じられなければ、集中できないのが、いや、集中しないのが当然です。それを「集中力に欠けている」とか「注意散漫だ」などと言う上司がいたら、その上司がリーダーシップに欠けているのです。ダメ出しよりも、仕事の意義や重要さを部下にもっと語らねばなりません。

考えてもみてください。機械でもできそうな単調な仕事を1日中時間どおりに続けたならば、何かほかのことを考えて注意がおろそかになりますよね。「集中力に欠ける」のはあたり前のことです。

また、注意散漫は否定的にとらえられがちですが、そうでもないのです。

おいしそうな木の実が見つかりみんなで集めているときに、茂みに猛獣が潜んでいるのが見えたらどうしますか。木の実を放り出して一目散に逃げますよね。もし採集に集中している人がいれば、真っ先に餌食になってしまいます。

つまり、注意散漫は、もっと大事なことに気づいたときに、そちらに思考を切り替えるための自然な仕組みなのです。仕事中にゲームのボスを倒す作戦を思いついて仕事がおろそかになるのは、生き残り戦略の一端なのです。

でも、さすがに仕事中にゲームのことを考えていてはいけないですよね。状況をわきまえて何を考えるべきか選択すること、たとえば、仕事中にゲームの様子が心にわき上がってきたら無視することが、文明社会では要求されます。

ところが、心にわき上がってくるものの重要度を判断して、それほどではないものを「無視する」ことには高度な認知能力が必要なのです。文明社会では、私たちが得意でないことをやらされているのです。

だからこそ、もっと仕事の大切さが理解でき、生き生きと仕事ができる社会になってほしいものです。

やる気が出ないの、しょうがない!

さて、みなさんに質問です。

「やる気」は出さないといけないのでしょうか?

出す必要がなければ、ダラダラしていてもいいのではないのでしょうか。

うちのペットの猫は、ほとんど1日中寝ています。ときどき起き上がっては、餌を食べたり排泄したりしています。気持ちよさそうに丸くなって寝ているので、私がちょっかいを出すと迷惑そうに「ちろり」とにらんで、また寝てしまいます。

「ペットとしてのやる気がないな」と、私も諦めぎみです。

動物は基本、生きるために「やる気」を出さざるを得ない生物です。動かなくとも日光で栄養を作れる植物ならばいいのですが、動物は、食べ物を求めて動き回らねばならないのです。時には、捕食者から逃げ回ることも必要です。

でも、食料が足りて安全も確保されていれば「やる気」は不要です。むしろ、あれこれ動き回るとエネルギーを消費して、また食料が必要になってしまうので、寝ているのが効果的なのです。

人間も同様です。衣食住と安全が確保されれば「現状維持」でいいので、やる気は出ないものです。よくベンチャー立ち上げには「ハングリー精神が必要だ」と言われますが、まさに、現状が悲惨なときほどやる気が出るのです。

だから、企業では社員のやる気を出させるために、「プロジェクトが成功したらボーナスを出すよ」「社長賞が待っているよ」といったインセンティブを提示するのです。想像力のある社員ならば、将来のいい生活を夢見て、「いっちょうがんばるか」となります。ま、斜に構えた社員ならば内心「そんな口ぐるまには乗らないぞ」と思うので、やる気は出ないでしょうねぇ。

それでも、やる気を出したいときのヒントが出版業界にあります。

売れっ子の作家センセイが雑誌に連載しているときに、締め切りに間に合うよう原稿執筆のやる気を出させる方法です。センセイを旅館に缶詰めにして、編集者が部屋の前に陣取ってせかすのです。「センセイ、いい加減に原稿書いてもらわないと私、クビになっちゃうんです」とプレッシャーをかけます。すると、「十分に売れたので印税はもういいや」と考えているセンセイであっても、「あいつのためなら」と奮起するものです。

人間は人のために働く動物なので、こうしたやる気の出し方があります。企業のプロジェクトが仲のいいチームで進行していたならば、仲間のためにと思うと、不思議とやる気が出るのです。

社会性がうまく刺激される環境を探そう

人類が文明社会を築いて地球を制覇できた主要因として「社会性」が挙げられます。動物の中で唯一人間だけが、他者を率先して助けようとします。そしてまた、「周りの人は自分を助けてくれる」と生まれながらに思うのです。長かった狩猟採集時代の協力生活は、この「社会性」を進化させました。

さらに社会性は、コミュニケーションを増大させ、言語の形成に強く寄与しました。なぜなら、周りの人が有益な情報を教えてくれると思えるから、みんながコミュニケーションをとろうとするためです。みんながたがいにライバル同士であれば、有益な情報は隠すことが多くなるので、コミュニケーションは増えず、言語は登場しなかったでしょう。

私たちの心は、社会性に強く動機づけられます。「他者のために」と思うとやる気が出るし、上司から感謝されれば会社への愛着がわきます。人と一緒ならば、つらい勉強やダイエットも続けていけるでしょう。自分ひとりでは運動が続けられないので、わざわざ友達を誘ってジョギングしているという人も多いでしょう。

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生物学的にしょうがないことの一部は、自分の社会性をうまく刺激する環境を探し当てれば、改善が期待できます。友達がいれば協力を求めての環境作りもできますが、いなくとも環境を探せばよいのです。

たとえば、ジムに行くのがそれに該当します。ジムで運動がしやすいのは、みんなが運動しているので自分も運動が促されるという同調の現れです。また、そこに友達がいなくともインストラクターがいれば、運動させてくれます。

一方、社会性があるがゆえに人から悪影響を受ける問題もあります。ライバル意識で不要な物をたくさん買い込んだり、人から悪い遊びへと誘われたりもします。現代では、厚い友達関係を限定的に持っているよりも、薄い関係でも多様な選択肢を持っているほうが有利になっているのです。

自分に合った「社会性刺激環境」を多数確保しておけば、「しょうがないこと」をどうしても改善したいときに役立つでしょう。

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提供元:やる気がない人とある人が分かれる生物学的理由|東洋経済オンライン

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