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2021.06.15

普通の食材で「究極ハンバーグ」手間なく作るコツ|ポイントは「牛乳」と「玉ねぎをすりおろす」


肉感とやわらかさを両立させたハンバーグの作り方を解説します(筆者撮影)

肉感とやわらかさを両立させたハンバーグの作り方を解説します(筆者撮影)

在宅勤務、外出自粛によって、家で料理をする人が増えたのではないでしょうか。料理の腕を上げるために、まず作れるようになっておきたいのが、飽きのこない定番の料理です。料理初心者でも無理なく作る方法について、新著『最高のおにぎりの作り方』を上梓した、作家で料理家でもある樋口直哉氏が解説します。

第3回は「ハンバーグ」です。
第1回:市販の蒸し麺で超簡単「最高の焼きそば」の作り方
第2回:手間かけずに再現「懐かしのナポリタン」の作り方

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市販の蒸し麺で超簡単「最高の焼きそば」の作り方 ※外部サイトに遷移します

手間かけずに再現「懐かしのナポリタン」の作り方 ※外部サイトに遷移します

ご飯と相性のいいやわらかさを目指す

拙著『定番の“当たり前”を見直す新しい料理の教科書』で最も反響があったメニューがハンバーグです。あのレシピも悪くはないのですが、「ちょっとかたい」という声がありました。

そこで今回はご飯と相性のいい「やわらかさ」を目指すことにしました。また前回は材料に「黒毛和牛の挽き肉」と指定したのですが「そんなの手に入らない」という声を受けて、スーパーで普通に売られている輸入牛挽き肉を使うことにします。

究極を目指すハンバーグのレシピは『ゼラチンを加えればしっとりする』『いや、パン粉の代わりにお麩を……』という具合に材料が増えがち。僕が目指すのは足し算のおいしさでも引き算の美学でもなく、材料ごとの役割を見ながら、レシピを見直すこと。そういうわけで出来上がったレシピがこちらです。

目指すところは「肉感とやわらかさを両立させた普通の材料でつくる究極のハンバーグ」です。

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【材料(2人前)】

〈ハンバーグ〉
牛挽き肉 200g
牛乳 大さじ2
塩 2g
砂糖 2g
玉ねぎ 1/4個
生パン粉 10g
胡椒 適量
ナツメグ 少々(あれば)

〈きのこソース〉
しめじ 1/2パック
舞茸 1/2パック
(もしくはどちらかを1パック)
しょうゆ 大さじ3
みりん 大さじ1
砂糖 大さじ2
水 50cc
片栗粉 小さじ1

実際に作ってみよう

(1)牛乳に塩と砂糖を加えてよく溶かす。牛挽き肉をボウルに入れ、味付けした牛乳をまんべんなくかけ、冷凍庫で10~15分間冷やす。

塩と砂糖を加えて味付けした牛乳を、牛挽き肉にまんべんなくかけ、冷凍庫で10~15分間冷やす。(筆者撮影)

塩と砂糖を加えて味付けした牛乳を、牛挽き肉にまんべんなくかけ、冷凍庫で10~15分間冷やす。(筆者撮影)

(2)おろし金で玉ねぎをすりおろし、生パン粉、胡椒、ナツメグと一緒に①の挽き肉に加える。挽き肉の半分だけ手で握るようにして20回ほど混ぜる。全体をざっくりと混ぜ合わせ、140g前後になるように2等分する。

すりおろした玉ねぎ、生パン粉、胡椒、ナツメグを入れる(筆者撮影)

すりおろした玉ねぎ、生パン粉、胡椒、ナツメグを入れる(筆者撮影)

(3)表面が滑らかになるように小判形に成形する。このとき、切れ目があると焼いているときにそこから崩れるので注意。

表面が滑らかになるように小判形に成形する。真ん中はへこませないこと(筆者撮影)

表面が滑らかになるように小判形に成形する。真ん中はへこませないこと(筆者撮影)

(4)分量外のサラダ油小さじ1を引いた中火のフライパンでハンバーグの種を焼きはじめる。焦げ目をつけるための温度なので、フライパンの表面温度の目安は180℃。時間の目安は2分~2分30秒。

フライパンの表面温度の目安は180℃。時間の目安は2分~2分30秒(筆者撮影)

フライパンの表面温度の目安は180℃。時間の目安は2分~2分30秒(筆者撮影)

(5)片面に焦げ目がついたら裏返す。火を限界まで弱火にして、蓋をして蒸し焼きにする。目安は4分。4分経ったら、蓋を開け、火を強めたところに酒小さじ1(分量外)を加え、蓋をして火を止めて、さらに3分間休ませる。

片面に焦げ目がついたら裏返す。火を限界まで弱火にして、蓋をして蒸し焼きに。4分経ったら、火を強めて、酒小さじ1を投入。再度蓋をして、火を止めて3分間待つ(筆者撮影)

片面に焦げ目がついたら裏返す。火を限界まで弱火にして、蓋をして蒸し焼きに。4分経ったら、火を強めて、酒小さじ1を投入。再度蓋をして、火を止めて3分間待つ(筆者撮影)

(6)ハンバーグを盛り付け、フライパンを洗わずにきのこ類を軽く炒める。しょうゆ、みりん、砂糖、水、片栗粉を混ぜ合わせたものを加え、混ぜながらよく加熱し、アルコール分を飛ばす。ハンバーグにかける。

ハンバーグを焼いたフライパンをそのまま使って、きのこソースを作る(筆者撮影)

ハンバーグを焼いたフライパンをそのまま使って、きのこソースを作る(筆者撮影)

【おいしさの根拠】 牛乳を含ませることでやわらかな食感に

(1)かたい問題の解決

かたい、という問題を解決するためには2つの方法があります。1つはいわゆる「つなぎ」を増やすこと。タンパク質と違って加熱しても収縮しないパン粉などのつなぎはやわらかさを保つことに貢献します。あるいは卵を加えても、卵は肉ほど強く収縮せず、さらには水分を抱え込むので、やはりやわらかさを保つことに貢献するでしょう。

しかし、つなぎを増やすと単純に肉の味が薄くなりますし、挽き肉200gの場合の卵の量の目安は1/2個なので「残った卵はどうするんだ!」という問題がでてきます。

僕のハンバーグレシピの基本の考え方は「卵を入れない」というものです。理由としてはハンバーグをつくる際の失敗パターンとして「肉だねがやわらかくなりすぎて成形できない」というケースがありますが、これは卵白の量が多すぎたことが原因だから。

ほかに卵を入れると「卵黄に含まれるレシチンが脂肪分を乳化させ、口当たりよくまろやかになる」という主張もありますが、乳化状態は加熱すれば壊れるので効果は疑わしいところです。

肉同士を決着させているのは「肉のタンパク質」

「卵がつなぎになってバラバラの挽き肉をつなげる」という意見もありますが、肉同土を結着させているのはあくまで「肉のタンパク質」です。

ソーセージには卵が入っていませんが(昔の安物は卵を入れて増量していましたが)バラバラにならずにちゃんとまとまっていますよね? ふわふわ感を簡単に出せるのはメリットですが、肉の味が薄まるというデメリットがそれを上回るので、僕は卵を入れていません。

2つ目の方法は水分を加えることです。今回はこちらの方法を採用し、ハンバーグをやわらかくするために牛乳に塩と砂糖を溶かし、牛挽き肉に振りかけ、冷凍庫で10~15分間冷やすことにしました。

これはブライニング(塩水処理)と呼ばれる調理法で、砂糖が入った塩水に漬けることでタンパク質のミオシンを変性させてしっとりとした食感にし、さらに肉に水分を含ませることができます。水分を肉に練り込む技法はソーセージづくりでは一般的で、挽き肉は面白いほど水分を吸い、焼き上がりがやわらかくなります。

ただ、肉の味が薄くなることとハンバーグの場合はソーセージと違って肉汁の流出を防ぎ止める皮がないので、焼いている間に味が水分とともに流れ出てしまう、というデメリットもあります。

そのデメリットを踏まえてもなお、ブライニングを行うことにした理由は以下の2つ。

●牛乳に含まれるラクトン香をつけるため

和牛と輸入牛の違いはいろいろとありますが、その1つに和牛の脂肪に含まれているラクトン類という香気成分があります。ラクトン類は和牛特有の甘い香りのもと。ラクトンは牛乳にも含まれているので、それを浸透させることで「高級な和牛っぽい」香りをつけます。

●焼いているときに浮かんでくるブヨブヨを抑えるため

ハンバーグを焼いていると表面にブヨブヨとしたアクのようなものが浮いてくることがあります。これはタンパク質の一部で、食べても無害なのですが、見た目に美しくありません。塩水に漬けることでこのブヨブヨの発生を(完璧ではないのですが)抑えることができます。

玉ねぎはみじん切りではなくすりおろす

(2)玉ねぎの処理問題

(筆者撮影)

(筆者撮影)

ハンバーグに入れる玉ねぎは普通、みじん切りにします。しかしみじん切りは意外と難しいもの。僕のレシピはさっぱりさせるために生の玉ねぎを入れるのが基本なのですが、玉ねぎの周りではタンパク質の収縮が起きないのでみじん切りが大きすぎると焼いているときに崩れる原因になってしまいます。

そこで今回は玉ねぎをすりおろすことにしました。プラスチック製のペラペラのおろし金だとちょっと大変ですが、セラミックかステンレス(写真は銅です)製のしっかりとしたおろし金を使えば、玉ねぎをすりおろすのは簡単。

あとはすべての材料を混ぜるだけ……なのですが、最後の問題が浮上します。それは肉をよく捏ねるか、捏ねないか問題です。

(3)肉はよく捏ねるべきか、捏ねるべきでないか問題

ハンバーグづくりは「肉をよく捏ねるべき派」と「あまり捏ねない派」に分かれます。肉に塩を加えて捏ねるとミオシンというタンパク質が溶け出し、これに火を通すと凝固し、ゲルの網目構造をつくります。つまり、肉を捏ねる目的は内部に抱え込む肉汁を増やし、ジューシーな仕上がりにするためです。

デメリットは肉を捏ねると挽き肉の粒感がなくなり、いわゆる「肉らしい風味」が弱くなること。手で捏ねる場合は特にこの傾向が顕著で、肉らしさが弱くなって、すり身のような食感になってしまいます。

また、網目構造は保水性を向上させますが、強くなりすぎると加熱したときに縮んで、ちょうどスポンジを絞るように肉汁が流出してしまうので、食感がかたくなります。前著(『定番の“当たり前”を見直す新しい料理の教科書』)ではこれを嫌い「肉はあまり捏ねないほうがいいですよ」という趣旨のことを書きました。とはいえ、肉を捏ねたほうが成形しやすいですし、食べたときに「バラバラにならない」というメリットも。

解決策として肉だねの半分だけをよく捏ねることにしました。肉の結着力を上げるためには低温も重要な要素なので、温度を上げないために冷凍庫で肉(とボウル)をよく冷やしておきます。利き手で握りしめるようにして、半分の肉を捏ね、最後にもう半分をさっくりと混ぜます。これはいわば捏ねる派と捏ねない派のいいとこ取り。挽き肉の粒を滑らかな肉だねが包み込むことで、成形もしやすくなります。

真ん中はへこませない

2人前の分量なので2等分にしますが、1個の重さは140g前後です。このとき、できるだけ表面を滑らかにすることで、焼いている最中に割れることを防ぎ、ミオシンの膜によって肉汁を閉じ込められる効果もあります。

記事画像

『最高のおにぎりの作り方』(KADOKAWA) クリックすると、アマゾンのサイトにジャンプします

真ん中はへこませません。へこませるとその部分だけ焼き色がつかなくなり、おいしさが落ちるからです。

ハンバーグは意外と火が通りづらい料理なので、じっくりと焼きます。かといって最初から最後まで弱火で焼くと完全に火が通るまでに水分が蒸発し、パサパサになってしまうので、はじめは中火で焦げ目をつけて、片面を焼いたら、裏返して弱火で蒸し焼きにするのがコツです。

最後の酒はダメ押しの加熱です。ハンバーグは多少焦げても問題なく食べられるので、見た目に影響する表面になる部分の焼き色だけきれいにつけたら後はじっくりと焼きましょう。

しょうゆを使ったきのこのソースは肉の味を引き立てるグルタミン酸やグアニル酸のうま味がたっぷり。ご飯にあわせるためにちょっと塩気を濃い目にしたので、好みでしょうゆを加減し、味が濃いな、と思ったら大根おろしを添えるとバランスがとれます。基本的に材料さえそろえておけば一気呵成に仕上がるので、手間もかかりません。

記事画像

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提供元:普通の食材で「究極ハンバーグ」手間なく作るコツ|東洋経済オンライン

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