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2021.04.07

脳の仕組みを知れば一変!集中力を鍛えるコツ|3つの「情報処理ネットワーク」を意識する


集中力を高めるには、脳の仕組みを知るのが近道です(写真:ブルーバックイメージ/PIXTA)

集中力を高めるには、脳の仕組みを知るのが近道です(写真:ブルーバックイメージ/PIXTA)

「仕事中に集中力が切れてしまった」「やる気が起きない」「集中力がいったん途切れると、再び集中するのに時間がかかる」・・・・・・。そういった悩みを抱える人は多いのではないでしょうか。ではどうすれば改善できるのか。「集中の仕組みを知れば、誰でも集中力を育むことができます」と、神経科学者の青砥瑞人氏は言います。その脳が集中する仕組みについて、青砥氏の新著『4 Focus 脳が冴えわたる4つの集中』から一部抜粋・再編集して解説します。

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脳には3つの情報処理ネットワークがある

私はよく講演やセミナーの場で、参加者の皆さんにこんな質問をしています。もしよければ、あなたもチャレンジしてください。

「自宅を出てから最寄りの駅までの道のりって、おそらく今まで何百回、何千回と歩いていますよね。その間に何本の電信柱があるか、覚えていますか?」

正確な本数が答えられる人には出会ったことがありません。ただ、毎日見ているわけですから、情報としては脳に届いているはずです。でも、覚えていない。これは注意を向けていないからです。

実は「意識して注意を向ける」「集中する」という行為には多くのエネルギーが必要で、脳を疲弊させます。私たちは無意識のうちに膨大な情報を受け取っているので、それらすべてに注意力を働かせようとしていたら、たちまちエネルギー不足になってしまうのです。

そこで、脳は省エネのために「いらないことには注意を向けない」という仕組みを築いてきました。

人間の脳には大きく分けて、3つの情報処理のネットワークがあります。

(1)デフォルトモード・ネットワーク……無意識に近い状態で、記憶や経験に準じてオートマチックに情報処理や指示出しをする

(2)セントラル・エグゼクティブ・ネットワーク……自発的に意識を向けたときに活発に働く

(3)サリエンス・ネットワーク……(1)と(2)の対極的なネットワークの切り替え役を担う

(画像提供:KADOKAWA)

(画像提供:KADOKAWA)

脳は1万年前と大きく変わっていない

電信柱の例で言えば、駅までの道を歩くとき、ぼんやり考えごとをしていても駅にたどり着けるのは、デフォルトモード・ネットワークが働き、経験と記憶に沿ってあなたを導いてくれるからです。

それでも途中で歩道が狭くなり、車が間近に通り過ぎていく場所や、赤になるとなかなか変わらない信号など、注意を向けないとネガティブな出来事が起きる危険性がある場所では、毎日、その道を通っていてもサリエンス・ネットワークが「!」とアラートを出し、セントラル・エグゼクティブ・ネットワークにバトンを渡します。これは私たちに危険を回避する本能があるからです。

話はいきなり壮大になりますが、私たちの脳は1万年前のホモ・サピエンスと大きく変わっていません。太古の昔、原野で暮らしていた私たちの祖先は、多くの生命の危機に晒される環境の中で生きていました。その環境下で生存競争に勝ち抜くため、生きるか死ぬかの重要な情報に注意を向けることを最優先事項とした仕組みが進化していったのです。

一方で、「お気に入りのパン屋のショーウィンドーに新作が出ている!」「この間、閉店した店で改装工事が始まった!」といったポジティブな変化に対してもサリエンス・ネットワークは反応し、好奇心を伴った形でセントラル・エグゼクティブ・ネットワークが働き始めます。

かなり簡略化していますが、いつも通る道を歩くとき、私たちの脳ではこんなふうに脳の情報処理ネットワークが切り替わり、注意を向ける対象を選んでいるのです。

私たちは目の前に見えている世界のうち、1000分の1ほどの範囲にだけ注意を向けています。当然ながら、あなたの家から駅までの間にある電信柱は急に倒れてきたり、動き出したりしません。生命を脅かすような危険な存在ではなく、喜びを与えてくれる情報も発信しないので、注意を向けられることもなく、記憶されることもなく、そこにあるのです。

一方、今のあなたのように、文章に注意を向けているときは、意識的に対象に注意を向けるセントラル・エグゼクティブ・ネットワークが働いています。

額の真ん中に人差し指を当ててみてください。その奥にある前頭前野をメインとした脳のネットワークで、私たちが意図したところに注意を向けたり、何かを考えようと問いを立てたりと、特定の場所に人間の意識を向かわせる役割があります。

ただし、セントラル・エグゼクティブ・ネットワークが働き、「意識して注意を向ける」「何かに集中する」という行為を続けるには、多くのエネルギーが必要です。脳にも大きな負荷がかかるため、時間が経つにつれて注意力はどうしても散漫になり、集中力は続かなくなっていきます。

ですから、もし、あなたが「自分は集中力が足りない」「どうしてすぐに気が散ってしまうんだろう?」と悩んでいるとしたら、自分を責める必要はありません。

脳の仕組みから言うと、注意力や集中力が続かないのは当然。意識して、さまざまな物事に注意を向けられる時間は限られているのです。

ただ、この限られた時間に注意を向け、学んだこと、体験したことはデフォルトモード・ネットワークでの意思決定にも影響を与えます。集中して学んだことは、私たちの経験、記憶として強く残るからです。

例えば、パートナーが妊娠し、出産・子育てのことを意識的に学び始めると、街を歩いていても妊婦さんや小さな子ども、ベビーカーに乗った赤ちゃんに注意が向かうようになります。あるいは、必要に迫られて英会話の勉強を始めた人は、通勤電車で聞こえてくる英語での会話や街頭で耳に入る洋楽の歌詞に、以前よりも意識が向くようになります。

この無意識の注意に気づくのは、サリエンス・ネットワークの役割です。デフォルトモード・ネットワークが受け取った情報――「あ! 妊婦さんがいる」「赤ちゃんだ!」「英語の歌詞が聞こえる!」――に、サリエンス・ネットワークが反応。すると、セントラル・エグゼクティブ・ネットワークが注意の対象に意識を向けます。

「妊婦さんに席を譲ろう」

「赤ちゃんが笑っている。1歳くらいかな」

「あ、この曲の歌詞、こんな意味だったのか」

デフォルトモード・ネットワークが自然と反応し、サリエンス・ネットワークがそのシグナルに気づけるのは、それ以前にあなたが意識的に注意を向けた事柄が記憶として定着しているからです。

集中して学んだことは、あなたの中に深く残ります。一度、四則計算の方法を覚えればいつでも暗算ができるように、記憶が無意識の行動や選択を導いてくれるようになります。デフォルトモード・ネットワークは、あなたが経験してきた記憶や経験を土台に「記憶ドリブン」の行動や意思決定を導いてくれるのです。

記憶ドリブンを優れたものにすることがカギ

通勤や通学などで道を歩くとき、私たちはいちいちセントラル・エグゼクティブ・ネットワークを使って、意思決定はしていません。もちろん初めてその道を通るときは「まっすぐ進もう」「次の交差点を右に曲がろう」「次に通るときは、角にあるお店を目印にしよう」など、セントラル・エグゼクティブ・ネットワークを使った注意を向け、選択していきます。

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『4 Focus 脳が冴えわたる4つの集中』(KADOKAWA) クリックすると、アマゾンのサイトにジャンプします

しかし、何回も同じ道を行き来するうち、行動と経験が脳の中で記憶され、定着し、記憶ドリブンが作られ、無意識でもスムーズに歩けるようになります。脳のパフォーマンスを高める観点で言うと、この記憶ドリブンをいかに優れたものにしていくかが大きなカギを握っているのです。

集中力の仕組みを知ってスムーズに集中できる感覚を養っていけば、その経験の蓄積が記憶ドリブンとなります。

すると、ストレスや疲れでセントラル・エグゼクティブ・ネットワークがうまく働かなくなり、注意力が散漫になったときも、記憶ドリブンに沿って働くデフォルトモード・ネットワークが必要な対応を取るよう、あなたを動かしてくれるようになるのです。この仕組みを仕事や学びに活用していくことができれば、集中力が高まります。

あなたの思い描いている理想の状態と、これからの行動を一致させ、役立つ記憶ドリブンを作っていきましょう。セントラル・エグゼクティブ・ネットワークで理想とする方向に注意を向け、行動し、デフォルトモード・ネットワークに好影響を与える記憶ドリブンを作っていくイメージです。ここに集中力を高め、人生を豊かにしていくヒントがあります。

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提供元:脳の仕組みを知れば一変!集中力を鍛えるコツ|東洋経済オンライン

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