2021.03.24
仕事をラクラクこなす人の脳は老化が進む驚愕|30代からの脳の老化を食い止める2つの方法
「老い知らず」の脳をつくる2つの方法をお伝えします(写真:metamorworks/PIXTA)
30代後半も過ぎると、人の脳の老化はどんどん進んでいきます。「最近、あまり頭をつかっていない」「楽なルーティーンワークに終始している」。そんな人は「脳の老化が進み、感覚や感性も衰えていくでしょう」と、脳内科医の加藤俊徳氏は警鐘を鳴らします。
では、どうすれば脳の老化を食い止めることができるのか。加藤氏は、意外な経験が老化を防ぐカギを握ると言います。それは一体……? 加藤氏の新刊『センスは脳で磨かれる』をもとに解説します。
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仕事が早い! は実は危険
20代から30代になり、仕事の全貌をほぼつかんだ頃、仕事が楽に回せるようになったなと思う瞬間はきませんでしたか? 営業にしても企画にしても、事務処理にしても、若い頃あれだけつまずき、試行錯誤して時間がかかっていた仕事が、ウソのように簡単に処理できてしまう。半分の時間もかからずにこなせてしまう。脳が仕事の仕方を学習し回路ができ上がったことで、ムダな労力をかけずに処理することができるようになった証しです。
それ自体は、大変望ましいことです。ところが楽になったことにかまけて、自分の仕事をそれだけに限定し、9時~5時で要領よく仕事をこなすだけになってしまう人が結構いるのです。
「仕事が楽になった瞬間こそ危ない」と、私はよく話をしています。
脳は、放っておけばエネルギーを使わない楽なほうを選ぶものです。すると楽にこなせる状況に甘んじて、新しい挑戦をしようとせず、仕事をルーティーン化するようになります。守りに入った脳は、新たな分野に挑戦したり、未知の領域に足を踏み入れようとする冒険心を起こしません。
でき上がった脳の回路で処理できる仕事だけに限定し、楽に仕事を処理できるほうを選択します。すると脳はどんどん衰え、退化していきます。そうなると、ますます仕事に対する意欲や、積極性が失われていき、さらに脳の老化が進んでいくのです。
何か新しいことに直面すると、私たちの脳は各所が活性化し、連絡を取り合って対処するようにできています。しかしそのやり方を覚え、回路ができてしまうと、脳はできる限り“省エネ”を試みようとします。最初と同じように、脳をフル回転させるのではなく、前回使って有効だった脳だけを働かせ、最小限の労力で済ませようとするのです。
このこと自体は、脳の素晴らしい機能の一面であることは確かです。なぜなら目の前で起きるすべてのことを、つねに脳がフル回転で対応していたら、あっという間に脳がオーバーヒートしてしまうからです。そうならないために、脳はルーティーン的な行動を、脳の中のでき上がった回路を使って、なかば無意識に処理するようになっているのです。これがいわゆる「習慣化」とよばれるものの正体です。
朝起きて歯を磨き、顔を洗う。コーヒーを飲みながら新聞を読む。これらの行動は、いちいち頭の中で考えながら行うものではありませんね。体が自然と覚えていて、そのように考えなくても動いてしまう。脳は省エネのために習慣化を行うようにできているのです。
失敗すると脳はフル回転する
省エネという点では非常に合理的な脳の仕組みですが、じつはこれが諸刃の剣なのです。習慣化が進んでいきそれに頼ることは、楽になると同時にマンネリ化をもたらします。脳はほとんど働こうとせず、老化と退化が進んでしまうことになるのです。
ではどうすれば脳の老化を防げるのか。一番効果的な方法が〝失敗体験〟をすることです。失敗体験ほど、たくさんの情報を得られる体験はありません。それは強烈な刺激となり、脳のさまざまな部分を活性化させます。
人は失敗をすると、落ち込み、ショックを受けます。そのストレスはある程度のものであれば、脳に対する強烈な刺激になります。さらになぜ失敗したのか、その理由を考えます。脳をフル回転させ、失敗の原因を探り、次回どうしたらいいか、対応策や改善策を考えます。
ところが、大過なく事が運んだときは、これまでの経験から何も変える必要がないことが多く、ほとんど脳は働きません。成功したときの喜びのようなものは、ドーパミンなど脳内物質の分泌で感じるかもしれませんが、脳全体がフル回転するわけではありません。失敗したときにこそ、脳は成長するのです。
脳の成長のために大事なのは、失敗したときにしっかりと現実と向き合うことです。失敗したことを認め、なぜうまく行かなかったのかを冷静に考える。ここで、ごまかしたり逃げたりして脳が成長するためのターニングポイントをスルーすると、せっかくのチャンスを逃すことになります。
また、チャレンジする精神も大事になります。「チャレンジ」と「失敗」は表裏のものです。残念ながら若い人の傾向として、失敗を恐れるあまりチャレンジをしないということがあります。
未知の領域にチャレンジすることが、大いに脳を使うことにつながります。そして仮に失敗しても、それにしっかりと向き合うことで、さらに脳を使い成長させることができる。失敗を恐れ、チャレンジしない人はみすみすそのチャンスを逃しているのです。
初めての店に行ったほうがいい
失敗体験に加えて、「初めて」の体験も、脳への刺激となります。たとえば会社から帰宅する際、いつもと違う道を通ってみる。普段とは違う景色や人の流れがあるでしょう。新しいお店や気になる施設などを発見するかもしれません。
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昼食は、ほぼ行く店が何軒か決まっていて、そのローテーションというビジネスパーソンも多いと思います。意識して、最低週に1回は、新しい店で昼食を食べるようにしてみる。なかにはハズレの店もあるかもしれませんが、隠れた名店、おいしいお店に出くわすかもしれません。
それを続けていくことで、自然とおいしい店と、そうでない店のそれぞれの特徴や共通点などが見えてきます。いい店と、そうでない店を見分けるセンスも自然と身につくでしょう。何より、新しい店に飛び込むことで脳がフル回転しますから、それだけで感覚が研ぎ澄まされていくのです。
最近、ビジネスにおいて重要と言われるセンスや感性も、日々意図的にブラッシュアップしていかないと鈍ってしまいます。こうした「初めて」や「失敗」の体験を通じて脳を刺激し、老化を防ぎ、感覚・感性を鋭く磨いていってほしいと思います。
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提供元:仕事をラクラクこなす人の脳は老化が進む驚愕|東洋経済オンライン