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2021.02.25

ビジネスセンスと脳習慣の切っても切れない縁|不確実性が増す時代に最強の武器となる「感性」


不確実性を増す今、個々人のセンスが問われるようになっています。どうすれば今からセンスを磨くことができるのでしょうか?(写真:taa/PIXTA)

不確実性を増す今、個々人のセンスが問われるようになっています。どうすれば今からセンスを磨くことができるのでしょうか?(写真:taa/PIXTA)

最近、ビジネスの現場では「感覚」や「センス」の重要性が説かれることが増えています。不確実性を増す今、従来の知識や手法では対応できない場面が多く、個々人のセンスが問われるようになっているからです。とはいえセンスや感覚は先天的なものであり、今から鍛えるのは難しい印象も……。

「それは誤解です。脳のある部分を鍛えれば、今からでもセンス・アップは可能です」と言うのは、脳内科医の加藤俊徳氏です。センスと脳の関係とは? どうすればセンスを磨くことができるのか? 氏の新刊『センスは脳で磨かれる』をもとに解説します。

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違いがわかる人、わからない人

私たちが「あの人センスがあるね」と誰かを評価するとき、その人の感性や感覚の鋭さ、敏感さが前提にあると思います。かつて、某インスタントコーヒーメーカーのCMで、「違いがわかる男の~」というのがありました。違いがわかる人は、感覚がそれだけ鋭敏で、いいものとそうでないもの、好ましいものと嫌なものを明確に感知します。

一方、違いがわからない人は、何でも一緒です。コーヒーであろうが、料理であろうが、洋服であろうが、いいものとそうでないもの、好ましいものとそうでないものの区別やこだわりがありません。感覚が敏感で、違いがわかる人はセンスがある人です。違いのわからない人は、残念ながら野暮ったく、「センスのかけらもない」などと酷評されてしまいます。

人間の感覚は元々、鋭敏にできています。というか、環境と訓練によって鋭敏に発達します。たとえば、機械やセンサーなどで検知できない数ミクロンの歪みを、旋盤工のベテランの職人などは触っただけでわかると言います。宇宙ロケットなどの精密機械では、最後の仕上げはそんな職人たちの鋭敏な感覚に頼っているそうです。

私の親戚に、某自動車メーカーのテストドライバーだった人物がいるのですが、彼は車に乗ると、車体の形が1ミリ違っただけでわかるそうです。微妙な風圧やバランスの変化が、ハンドルやアクセル、ブレーキなどの操作を通じてわかると聞いてびっくりしました。

最終的に、彼らはどんな車が、いちばん乗り心地がいいかを判断するわけですが、「乗り心地」という主観的で感覚的な世界は、もはや数値やスペックでは表現することが不可能です。だからこそ感覚のとび抜けて鋭い、テストドライバーの存在意義があるわけです。

こうした感覚やセンスの有無は、どのように決まるのでしょうか。

私はこれまでアメリカや国内の大学病院などで脳の研究に従事し、MRI画像の解析をもとに、脳の活動とその領域を分析することで、「脳番地」という概念を作り出すことに成功しました。脳番地とは同じような働きをする脳の集まりであり、その神経細胞群と関連している脳の機能の総称をいいます。

要は、見たり聞いたり、記憶したり想像したりするには、それぞれの脳の得意な領域、専門領域があるということです。各脳番地をトレーニングによって鍛えることで、その能力を高めることができます。

最近で言えば、ラジオを聞くことで脳の「聴覚系脳番地」が成長することが確認されました。大学生にラジオ番組を1日2時間聞いてもらい、それを1カ月続けたところ、著者が開発した「加藤式・MRI画像診断法」で、明らかに脳が成長した形跡が認められたのです。とくに右脳の記憶系の成長が著しかったのですが、これはいろんなことを想像しながら話を聞くからだと考えられます。

センスは職業によって後天的に鍛えられる

センスのある人、感覚と感性の鋭い人は、おそらく脳の対応した部分が発達した人だということができます。先天的なものもあるでしょうが、これまでの私の実験やデータ、経験から考えると、後天的な環境や訓練によってよく使う脳番地があり、そこが発達しているケースが多く見受けられます。

脳は使えば使うほど、神経細胞が触手を伸ばしてネットワークを作り、それが太く大きくなるので、鍛えれば鍛えるほど発達します。そうなると、職業によって鍛えられるという部分が大きい。印象的だったのは、立て板に水でしゃべりまくるアナウンサーの古舘伊知郎さんの脳を見たときです。

古舘さんはスポーツ系の実況で定評がありました。ですから、視覚系脳番地が発達していると思いきや、聴覚系脳番地が大変発達していたのです。しかも左脳ではなく、右脳が極端に発達していました。古舘さんの誰もまねできない流れるような実況は、左脳の論理的な思考では追いつかず、右脳のイメージ的な瞬間のひらめきが関係しているのです。だからこそ誰もまねができない。

古舘さんのような極端なケースだけでなく一般の人でも、接客業や営業職ならば視覚系、聴覚系や伝達系が発達していますし、教師やコンサルタントなど人前で話をする職業では、言語系や思考系が発達している傾向があります。いずれにしてもポイントは、脳は筋肉と同様に、鍛えるほどに成長し強化されていくということです。先天的にすべてが決まっているというものでは、決してありません。

世の中には、さまざまな脳トレのメニューやカリキュラムがありますが、センスという非常に人間的で高度な脳の働きも、意図的に鍛え上げる方法はあります。ここでは、具体的なやり方の1つをお伝えしましょう。

センスにかかわる脳は、「見る脳」「聞く脳」「感じる脳」「動く脳」の4つの脳番地が基本になると考えます。これらの脳番地をバランスよく動かし、緊密に情報をやり取りする中で、センスが鍛え上げられていくのです。

なかでも「視覚」というのは非常に大きな意味と力を持っています。情報をキャッチするセンスとして、「見るセンス」は中心的な役割を担うからです。

その鍛え方はこうです。電車の中や街中を歩いているとき、あるいは職場や取引先などで、私たちは毎日たくさんの人と面しています。ところが、意外に目に入っているようで、しっかりと見ていないことが多いのではないでしょうか?

打ち合わせで対面した相手の服装をちゃんと覚えているでしょうか? 顔の特徴や髪形がどんなふうだったか? 意外に正確に思い出せないことが多いと思います。ただ漠然と見るのではなく注意を払って見ることで、私たちの視覚系と理解系の脳番地が活発に働き連動するようになります。その際のポイントが「テーマを決める」ことです。

たとえば、「今日はセンスのいい格好をしている女性を3人探そう」とか、「高価な腕時計をしている人を3人探そう」「年収の高そうな人を3人探そう」というようなテーマを掲げるのです。そしてそれにふさわしいと思う人を探します。最初からテーマが決まっているので、見るポイントが絞られます。すると、それだけ集中力が高まります。

また、見た目から想像しますから、推理力や洞察力、すなわち「思考系脳番地」が鍛え上げられます。その意味で、電車の中の人や街行く人の顔や容姿を見て、職業や性格、生活環境を想像するというのも大変いい訓練になるでしょう。

何の予備知識もなく、服装や表情、態度や仕草などから、さまざまに想像を働かせる。注意して相手を見る。そして、理解系や思考系などを存分に働かせる。脳にとっては大変効果的なトレーニングになります。

今、ビジネスにセンスが必要

センスというと、美的感覚の重んじられる芸術家や前述した職人など、特別な能力が必要な人にだけ求められると思うかもしれません。しかし、決してそうではないはずです。たとえば、新規開拓の営業先を回ることを考えてみましょう。どんな地域のどんな人たちを回るのが最も有効か判断するのも、1つのセンスです。また、訪問した先の相手の態度や表情から、押すべきか退くべきかを判断するのも1つのセンスでしょう。

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相手がいま何を求めているか? それに対して自分がどう応えられるかを想像し、どんな言葉や物腰で相手に対するのが最適かを判断するのもセンスなら、契約やクロージングに持ち込むタイミングを計るのもセンス。膨大な情報の何に感応し、どう選択するか? その後、それに対応してどう行動するか? 達人と呼ばれる人たちの一連の流れのなかには、そのセンスが確固としてあるのです。

営業だろうと企画職だろうと、あるいは商品開発だろうと、同じ。つまりビジネスにおいてもあらゆる場面でセンスが問われていて、センスのある脳をいかに作り出すかが問われています。「見る」「聞く」「感じる」「動く」──まずは皆さんの仕事でとくに重要な部分のセンスから、脳トレで磨いてみてはいかがでしょうか。

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提供元:ビジネスセンスと脳習慣の切っても切れない縁|東洋経済オンライン

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