2021.02.12
リモートで生産性下がった会社「やりがちな事」|性悪説になった管理だと誰も幸せにならない
テレワークで従業員の生産性の低下を防ぐにはどうしたらいいのでしょうか(写真:Fast&Slow/PIXTA)
2度のうつ病を患った経験から働き方を根本的に見直し、「全社員週休3日」というベンチャー企業のクロスリバーを立ち上げた越川慎司氏。最新刊『週休3日でも年収を3倍にした仕事術』では、「週休3日(週30時間労働)」で年収をマイクロソフト役員時代の3倍以上にできた秘密を開示している。本稿では、テレワークの生産性を高める「意外な秘訣」を紹介してもらった。
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性悪説で在宅勤務を進めると、生産性が下がる
新型コロナウイルスの影響で、急にテレワークをすることになった人は多かったのではないかと思います。2020年2月末に政府が学校に休校要請をした途端、クロスリバーにはテレワークに関する問い合わせが殺到。その数は1カ月で170社以上にものぼりました。
テレワークは時短の観点からみても効果的ですから、この機会に移行するのが良いと思うのですが、現実には業務に支障をきたしたチームも少なからずあったようです。
いろいろなケースがあったと思いますが、特に問題なのはテレワーク導入に伴い報告頻度を増やしすぎて、生産性を逆に下げてしまっているケースです。在宅勤務になると「サボるのではないか」と疑心暗鬼になり、日報の提出といった報告・連絡を過度に求める企業は少なくありません。
一般的に、性悪説で働き方改革を進めると管理コストが増えます。サボってしまうのではないかという前提で管理すると、報告のための資料作成と会議が増えてしまいます。それで業績が上がるならまだ良いのですが、そうでもないのです。
弊社の匿名式アンケート調査では、在宅勤務でサボる人の94%はオフィスで勤務をしていてもサボっていました。サボる人はオフィスだろうが在宅だろうがサボります。それより、詳細な報告といった余計な作業によって、きちんと働いている人の生産性を下げるほうが問題です。
サボる問題は、場所の問題ではなく、職責と評価の問題です。サボる・サボらないは個人の自制心だけでなく、組織として正しい目標設定と評価ができているかどうかにも起因します。
行動目標、いわゆる山の頂上だけ決めて、登り方は任せることが大切です。クライアント企業の管理職の方々に、「目の前に部下がいないテレワーク時代の管理職トレーニング」というプログラムを毎日のようにオンラインで提供していますが、時間で管理する労務管理は、労働基準法上は確かに必要です。
しかし、性善説で勇気を持って任せないと部下が育ちません。行動目標だけ設定して任せてみる。それで到達できなかったら、山の登り方が合っていないので、違う方法を考える─ー。このほうが建設的だと思います。
クロスリバーでは、隠し事をしない、腹を割って話せるという心理的安全性がある前提で、「共通目標を持って任せて、あとはメンバーが自主的に達成する」という姿を目指しています。
「達成する人にはより自由を与える。成果が出ない人には自由を制御して仕事のやり方も含めて指導する」というのが新時代のリーダーに求められることだと信じています。
不安でもマイクロ・マネジメントはしない
コロナ禍の影響でテレワークを導入した企業の半分以上は、評価制度の改定を検討しています。今回テレワークを体験したことによって、「仕事=出勤すること」ではないことがわかったわけです。
「働いたことによって達成した成果を評価してもらう」「それを達成するためにはどういう行動をすればいいのだろう?」ということを、いま一度、働く個人と人事部、経営者が三位一体(さんみいったい)となって考えるべきだと思います。
いまのメンバーシップ型の評価では限界があることは経営者もわかっています。長期間で特定の技術を学ぶという場合はメンバーシップ型が向いています。時間をかけて若い人たちを訓練していくわけですから。ドイツや日本のように自動車産業がある国には、ギルド制や徒弟制、終身雇用があります。技能を後世に残すという意味では賛成です。
しかし、ホワイトカラーに長期の育成が必要かというと、そうではないと思います。今後は定量的な行動目標の達成度を評価する「ジョブ型」と、チームで達成した成果にどれだけ寄与したかを評価する「メンバーシップ型」を組み合わせたハイブリッド型評価になっていくと思います。
クロスリバー社内の報告は、始業時に今日やることを、終業時に今日やった仕事を箇条書きで、簡単にチャットで流すぐらいにしています。週報を出してもらうつもりはありません。
「経営者として、そのマネジメントだと不安ではないですか?」とメディアからよく質問を受けます。それに対して私は「不安です」ときっぱり答えます。
メンバーたちが何をやっているのか、しっかりアウトプットしてくれるのだろうかと不安に思うこともあります。自分でやったほうが早いと思うこともあります。それでも、勇気を持ってメンバーに任せることが自分のミッションだと思っています。
3大「テレワーク疲れ」
やり方を任せる(いちいち把握しようとしない)一方で、委任したメンバーの感情は把握しておくようにしています。
そこで、注力しているのが「感情共有」です。
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クロスリバーのような完全テレワークのバーチャルチームでは、メンバーが抱えている感情を理解し共感することが非常に重要だと思っています。テレワークで生産性が落ちる理由は、「孤立化」であることに気づいたからです。
「テレワーク疲れ」は次の3つからきています。
(1)目の疲れ、(2)腰の痛み、そして(3)精神的な疲労である「孤立化」です。
テクノロジーが進んでいつでもどこでも一人で仕事ができるようになった反面、1人きりで夜遅くまで苦しんでいても誰も気づいてくれなくなりました。「自分は世の中の役に立っていない」といった卑屈な気持ちも孤立化から生まれます。
ですから、クロスリバーでは、終業のときに「感情共有」をすることにしています。感情共有といっても難しいことではありません。「今日楽しかった」「寂しかった」といったことをチャット上でお互い吐露するだけです。
テレワークで寂しくなるのは当然のことで、悪いことではありません。「みんなに会いたいな」「寂しいな」「みんなと楽しく飲みに行きたいな」といった一言を誰かが入れると、「俺もそうだよ」「いいね、確かに」という感情共有が広がっていきます。
チームで働く上でこうした感情共有というのはとても重要だと思っていますので、終業の際にチャットで自由につぶやいてもらい、他のメンバーからは「いいね」「たいへんだね」といった共感反応を返す、といったやりとりをするようにしています。
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提供元:リモートで生産性下がった会社「やりがちな事」|東洋経済オンライン