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2020.12.11

ワクチン接種後の「睡眠不足」が何ともヤバい訳|免疫を獲得したいなら必ずしっかり寝てほしい


ワクチンを打った後の夜にちゃんと眠れるかどうかがポイントです(写真:Tero Vesalainen、RyanKing999/iStock)

ワクチンを打った後の夜にちゃんと眠れるかどうかがポイントです(写真:Tero Vesalainen、RyanKing999/iStock)

待望される新型コロナウイルスのワクチン。ワクチンを無事接種したとしても、「接種した後の行動」によっては抗体がうまく獲得できないことがあります。スウェーデン・ウプサラ大学の睡眠研究者で『Sleep, Sleep, Sleep』を著したクリスティアン・ベネディクト氏は、抗体をしっかり獲得するアドバイスとして「ワクチン接種後は何より眠ってほしい」と、ワクチン接種後の睡眠の重要性を説きます。

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体内では毎日「細菌」「ウイルス」と戦っている

睡眠研究者として今、とにかくお願いしたいのは、「予防接種をしたら、必ずしっかり寝てほしい」ということです。とくに、コロナウイルスのワクチンが待たれる現在、実際の接種前に皆さんに知ってほしい事実があります。

それは、ワクチンを接種した一晩目の過ごし方が、免疫を獲得するうえで非常に重要になってくるということ。「予防接種をした日の夜に睡眠不足だと、抗体が獲得できない」という研究事例が報告されているのです。

人間は日々、細菌やウイルスにさらされていて、皮膚や肺、腸といった器官から取り込まれた細菌たちは体内で悪事を働こうと試みます。

しかし、私たちの体には「免疫システム」という防御の仕組みがあり、ほとんどの侵入者から体を守ることができます。

これは「自警団」のような存在で、侵入者を発見すると体に属しているかどうか、例えば心臓や肝臓などの組織の一部かどうかをチェックします。そして体固有の細胞ではないと判断すると、「異質な侵入者」として攻撃を仕掛け退治する、これが免疫の仕組みです。

私は、睡眠不足がこの免疫システムにどのような影響を与えるか、実験で調べました。すると、徹夜をした後、体内の自警団は疲弊していて、異物発見時の食らいつきが弱かったのです。つまり、十分な睡眠が取れなかった後は免疫システムが十分機能せず、感染症にかかりやすくなることがわかりました。

また、点鼻薬によって風邪ウイルスを投与された被験者の睡眠時間と健康状態を調べた研究では、6時間睡眠の被験者は7時間睡眠の被験者よりも、風邪をひくリスクが4倍も高いことが判明しました。

「予防接種の効き目」はその日の睡眠時間で決まる

より特定の侵入者に的を絞って対応する「特異的免疫システム」という、成長とともに進化する免疫系統も人体には備わっています。

これは、侵入者の情報を記録し、体内にある「B細胞」がその異物(抗原)に合致する抗体を作り出す免疫反応です。抗原と抗体がドッキングすることで、体の免疫システムが侵入者を的確に見つけられ、より狙いを定めて敵を倒すことができます。

ところが、睡眠不足はこの免疫システムを弱めることが研究によって確認されています。

B細胞が抗体を産生するうえで、極めて重要な役割を果たすのが、病原体との接触後の「最初の夜」。

ドイツで実施された研究では、医学生を2グループに分け、肝炎のワクチン接種を行いました。その夜、一方のグループにはよく眠ってもらい、他方のグループには徹夜をしてもらうという研究です。

1カ月後に両グループの免疫反応を比較したところ、ワクチンを接種した夜に睡眠を取らなかった被験者は、肝炎に対する抗体と免疫細胞の形成が少なかったことが確認されました。つまり、予防接種の効果はたった一晩の睡眠不足によって低下し、被験者は肝炎ウイルスに対する十分な備えを得ることができなかったのです。

徹夜したグループのうちの数名は、獲得した抗体があまりにも少なく、改めてワクチン接種を受けなければなりませんでした。もう一方のしっかり眠ったグループは全員、何ら問題なく抗体を獲得できたことから、睡眠は予防接種の効果を左右する極めて重要なファクターといえます。

ナチュラルキラー細胞は「夜」活性化する

ワクチンを接種したときにいちばん大切なのは、とにかくぐっすり眠ることなのです。

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また、ワクチンの接種後だけでなく、日々の睡眠と感染症リスクは密接に関わっています。夜、しっかりと眠ることは体の免疫力をキープするうえで欠かせません。

体内の自警団は「ナチュラルキラー細胞」と呼ばれています。私たちの体の細胞をチェックする役割を担っており、がん細胞の破壊などを行ってくれる貴重な保護細胞です。

このナチュラルキラー細胞は眠っている間に活動するのですが、夜のホルモンである「メラトニン」が分泌されると、それが自警団出発の合図になることがわかっています。

就寝前にメラトニンを分泌させ、ぐっすり眠るために、私は次のような睡眠法をお勧めします。

(1)日中(できれば午前中)多くの時間を屋外で過ごし、可能なかぎり日光をたくさん浴びる

(2) 運動は「午前中・屋外」で。少なくとも、就寝3〜4時間前にはトレーニングを終える

(3)夕方〜夜にかけて、コンピュータ、スマートフォン、タブレットのブルーライトを避ける

(4)15時以降のカフェイン接種を控える

(5)暗い寝室で眠る。ほんのわずかの光でもメラトニンの分泌量が減る

(6)夜中に目が覚めても、明かりをつけない

世界がコロナウイルスに脅かされている今、とにかくお伝えしたいのは「今こそちゃんと眠ってほしい」という一言に尽きます。そしてワクチンが完成し、接種をしたなら、その晩はぐっすり眠ることを最優先してほしいと強く願います。

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提供元:ワクチン接種後の「睡眠不足」が何ともヤバい訳|東洋経済オンライン

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