2020.11.05
忙しすぎる人が知らない「何もしない」の作法|携帯の電源を切ったり無視するだけでは不十分
ただ何もせず座っているだけで心をリセットできる方法を紹介します(写真:asaya/PIXTA)
瞑想やマインドフルネスというものにとっつきにくさを感じていたり、スピリチュアルなイメージから敬遠しがちな人もいるのではないでしょうか。
しかし、マイクロソフト創業者のビル・ゲイツ氏がたびたび推薦するマインドフルネスの入門書の邦訳版『頭を「からっぽ」にするレッスン 10分間瞑想でマインドフルに生きる』では、手軽で日常に取り入れやすい、実践的な心のエクササイズを紹介しています。
本稿では、同書から一部を抜粋しお届けします。
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「何もしない」ことを体験してみる
あなたが最後に、テレビにも音楽にも本にも雑誌にも、食べ物にも飲み物にも、電話にもパソコンにも、友だちにも家族にもいっさい邪魔されたり気をとられたりせず、考えなくてはならないことも答えを出さなくてはならないこともなく、ただじっと座っていたのはいつのことですか?
これまで瞑想(やそれに似たもの)に目を向けたことがなければ、たぶん一度もないのではないでしょうか。なぜなら、私たちはたとえベッドに横になっているときでも、たいてい何かを考えているからです。
だから多くの人にとって、いっさい何もしないというのは、よくて退屈、悪ければ実におそろしいことに思えるのです。私たちは始終何かをすることに忙しくて、ただじっと心を休めることの意味を顧みることさえありません。私たちは「何かをする」ことに取りつかれていて、そこには「考える」ことも含まれます。だから、最初は何もしないでじっと座っていることに少々居心地の悪さを感じたとしても不思議はありません。
エクササイズ1:何もしない
今すぐやってみましょう。今座っている場所から動かず、本を閉じて膝の上に置きます。座り方にとくに指定はありません。軽く目を閉じ、1、2分そのままでいます。いろいろな考えが頭に浮かんできてもかまいません。今の段階では浮かんでは消えるにまかせ、たとえ 1、2分でも、何もせずにじっと座っているのがどんな感じか体験してみましょう。
何もしないでいるのはどうでしたか? とてもリラックスできたのではないでしょうか。あるいは「何もしないエクササイズなんておかしい、何かしたい」と感じたでしょうか。何かに集中したい、意識を向ける対象がほしいと感じたかもしれませんが、心配はいりません。これはテストではないし、次の章で瞑想を実践するときには、意識を向けなければならないことはたくさんあります。
ただし、今の段階で、つねに何かしている癖やそうしたくなる気持ちについて気づいておくのはいいことです。何かをしたくならなかったという人は、もう一度、今度はあと 1、2分長くエクササイズをしてみるといいでしょう。
テレビを見たり、音楽を聴いたり、酒を飲んだり、買い物したり、友だちと出かけるのが悪いと言っているのではありません。むしろ大いに楽しむべきです。ただ、これらは一定量の一時的な幸福をもたらすものであって、持続的なからっぽの状態をもたらすものではないと知っておくのはいいことです。
忘れていても心の奥底には存在している
あなたは1日の仕事を終え、頭の中が忙しすぎて疲労困憊して帰ってきたことがないでしょうか。そこで、頭を切り替えるためにテレビでも見ることにしました。真剣にのめり込めるほど面白い番組だったら、頭を埋め尽くしていた考えから、つかの間解放されたように感じられたかもしれません。
でも大して面白くなかったり、頻繁にコマーシャルが入ったりしたら、そのすきをとらえてそれらの考えがしばしば頭に浮かんでくるでしょう。いずれにしても、番組が終わった途端に、さっきまでの思考や感情が一気によみがえってくることはよくあることです。同じ強さではないにせよ、それらは心の奥のほうにずっと存在していた可能性が高いからです。
そしてほとんどの人はまさにこんなふうに、次から次にいろいろなことに気をとられながら日々を過ごしています。職場では忙しすぎたり、別のことに気をとられたりして、自分の気持ちを意識する暇がありません。そして家に帰ったとき、突如として多くの考えが押し寄せてくるのです。
あるいは、帰宅後もなんやかやと気をそらせることができたとすれば、ベッドに入るまで、それらの考えにすら気づかないかもしれません。けれども頭を枕につけた途端、心が突然、猛スピードで暴走し始めるのです。
もちろん、その考えはずっとそこにあって、ただ気をそらすものがなくなったから、その存在に気づいたというだけのことです。あるいは逆のパターンもあるかもしれません。人づきあいや家庭生活に忙しくて、職場に着いてはじめて、自分がどれだけ疲れていたか、頭の中をどんな考えが駆け巡っていたかに気づく人もいます。
これらのことに気をとられていたら、注意力が散漫になり、とても最高の力を発揮することはできません。言うまでもないことですが、心が次から次に浮かぶ考えをあたふたと追いかけているような状態では、集中力が著しく削がれることになります。
エクササイズ2:五感を意識する
今度も2分間の短いエクササイズをしてみましょう。前と同じように、今いる場所に座ったままでかまいません。本を膝においたら、五感の1つに軽く意識を集中させます。
今の段階では音か視覚がいいでしょう。目を閉じて背景の音に集中するのがおすすめですが、ときどき予測不能な音がすることもあるので、目を開けて部屋の中の特定のもの、あるいは壁の1点をじっと見つめてもいいでしょう。音と視覚のどちらを選んでも、それにできるだけ長い間集中してみましょう。
ただし、あくまで軽く、ゆったりとです。何かの考えが浮かんだり、別の五感に気をとられたら、もう一度集中する対象に意識を戻して続けてください。
どうでしたか? 簡単に集中を保てたでしょうか。それとも何度も別の考えが浮かんで気がそれてしまったでしょうか。気がそれるまでにどれくらいの時間がかかりましたか。ひょっとすると、ぼんやりした意識を保ちつつ、同時に別のことを考えることができたという人もいるかもしれません。
信じられないかもしれませんが、 1分間、対象への集中を保てれば大したものです。これを聞いてずいぶん心配になる人もいるかもしれません。仕事や子どもの世話では、あるいは友だちの話を聞いたり、車の運転をしているときには、もっとずっと長い時間集中しなければならないのですから。
あるがままに生きる道を見つける
私たちが心の中で起きていることから目をそらす手段がまだ足りないように、現代社会には携帯電話につながった電子メールやソーシャルメディアがあります。私たちはまさに24時間休みなく気をそらされ続けています。
それらはたしかに便利かもしれませんが、私たちは今や、ほんの少しでも退屈を感じた瞬間にオンラインに接続して頭をいっぱいにしてしまいます。ちょっと考えてみてください。あなたが朝起きて一番にすることはなんですか?
メールをチェックすることでしょうか。フェイスブックでメッセージを送ったり、友だちや同僚とツイッターでやりとりすることでしょうか。夜寝る前に最後にすることは? 調査が正しいとすれば、あなたが1日の初めと終わりのどちらかに、これらのうち少なくともどれか1つをしている可能性はかなり高いでしょう。全部しているという人もいるかもしれません。常時接続状態にある人がスイッチを切るのは簡単なことではありません。
私の知りあいのほぼ全員が、毎日のデータの洪水に溺れそうな気がすると言っています。かつて僧として生きていた当時の私なら、「電源を切って使わなければいい」と言っていたでしょう。でも、下界に戻ってきた今では、私自身もこれらすべてを仕事に使っています。ただスイッチを切ったり無視すればすむ問題でないのはわかっています。
だから、やめたり変えたりしようとする代わりに、それらに溺れず、上手に付き合う方法を知る必要があります。
そのためには、心のトレーニングの基本原則に立ち返る必要があります。マインドフルネスでは何も変える必要はありません。自分自身の心をより意識するようになるにつれ、外の生活で何かを変えようと思うこともあるかもしれませんが、それはすべてあなた次第です。何かを諦める必要はないし、ライフスタイルを大きく変える必要もありません。そういう極端な変化を維持するのは難しいからです。
実はマインドフルネスを取り入れたライフスタイルを実践しやすい理由もここにあります。あなたがそうしたいなら、今までとまったく同じ生活を続けてかまいません。
マインドフルネスとは、その生活の体験を変える方法を学ぶことです。心の底に充実感をもちつつ、あるがままに生きるための道を見つけることなのです。そこで何かを変えたいと感じたなら、もちろんそうすればいいのです。違うのは、なんであれ、そうやって変えたことは長続きするということです。
頭をからっぽにしたほうがいい理由
忙しい生活を送り、たくさんの責任や選択を抱える私たちの心と体は、つねに働きすぎの状態にあります。人々が私の働いているクリニックに来る理由はさまざまですが、最も多いのはストレス性の症状です。
自発的にやってくる人もいれば、家族やパートナーや友人に言われて来る人もいます。あまりに症状がひどいので医師にすすめられて来たという人もいます。けれども大部分は、もう少し楽に生きる方法を見つけたいと思っているごく普通の人々です。
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仕事でプレッシャーにさらされていたり、家庭生活に悩んでいたり、強迫観念に苦しんでいたり、自分や他人を傷つけるような行動を繰り返してしまう人々。その多くは、ただ毎日の生活でもう少しだけ頭をからっぽにできたらと望んでいるのです。
ストレスは私たちをおかしくさせます。言わなければよかったと思うようなことを言わせ、しなければよかったと思うようなことをさせます。自分自身に対する感じ方や、他人との関わり方に影響を与えます。
もちろん、ある種のストレスや困難があるからこそ、充実感を味わえたり、目標を達成できることもあります。でもそれが別の種類の(あまり役に立たない)ストレスにまで波及することも極めて多く、そうなると私たちは途方にくれてしまいます。
そのようなときこそ、心をトレーニングし、人生で何が起ころうと、いつでも心の奥底にある充実感や幸福感に触れられるようにすることが大きくものを言います。それこそが「からっぽ」をつくるということなのです。
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提供元:忙しすぎる人が知らない「何もしない」の作法|東洋経済オンライン