2020.11.04
心臓病死のリスク、「月曜午前」が最も高いワケ|健康診断で発見が難しい「職場高血圧」に注意
高血圧は自覚症状がないので要注意です(写真:ABC/PIXTA)
休み明けの仕事再開によるストレスによって、血圧が上がり、心臓に負担がかかることがあります。食事や運動、生活習慣によって血圧を正しく効率的に下げる方法を解説した、内科医・奥田昌子氏の著書『血圧を最速で下げる』から一部を抜粋・再構成し、高血圧を改善する方法を紹介します。
前回:「減塩で血圧は下がらない」医者が語る衝撃事実
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月曜午前は「魔の時間帯」
日常生活にひそむ目に見えないストレスは血圧を想像以上に押し上げます。たとえば、会社勤めの人が心筋梗塞をはじめとする心臓病で亡くなる危険は、週のなかでも月曜日が最も高いことが示されています。
仕事を再開するストレスで血圧が上がり、心臓に負担がかかるからでしょう。とくに月曜午前は発生数が多いことから、「魔の時間帯」と呼ばれています。
こういう話を聞くと、「血圧がもともと高い人たちだったんだろう」と考えそうになりますが、それは少し違います。
健康診断で正常血圧と判定された会社員およそ160人について、日々の血圧の変動を詳しく調べた研究があります。すると、全体の半数近くがじつは高血圧であり、17%が仕事中に血圧の高い状態が続く「職場高血圧」でした。
この人たちは血圧が上がるたびに血管が傷つき、心臓に負担がかかっていますが、血圧が正常値まで下がることもあるため、健康診断だけでは発見が困難です。
本人もまさか自分が高血圧とは思いもせず、何の対策も取ろうとしません。その結果、こういう人は一般的な高血圧患者さん以上に脳血管障害や心臓病を起こしやすいことがわかっています。
週のスタートを穏やかに切るために、「魔の時間帯」に仕事を集中させないよう意識して業務計画を立てましょう。いきなりエンジン全開で走るのではなく、ウォームアップにあてるためです。
気をつけたいのが週末の飲酒です。大量に飲酒すると翌日まで影響が残るため、ストレスが少ない人でも月曜朝の血圧は他の曜日より高いことが知られています。飲酒は就寝する3時間前までに切り上げましょう。
そして、昨今増えているのが睡眠時無呼吸症候群です。無呼吸といっても呼吸が完全に止まるわけではなく、眠っているあいだに10秒以上止まると「無呼吸」と判定されます。呼吸が一晩に何十回も停止して、それが何年も続くとなれば、体にとって重大なストレスです。
慢性的な睡眠不足に陥るだけでなく、血管の壁をしっかり修復することもできません。呼吸を再開させるときに心臓が強く働くことも明らかになっています。
これにより、睡眠時無呼吸症候群の人は約半数が高血圧で、心臓のリズムが乱れる不整脈の危険は一般の人の2倍、脳血管障害は4倍も高くなります。深夜から明け方までのあいだに心臓に異常をきたして突然死する人の割合も約2.6倍高いのです。
肥満しているせいで息の通り道が狭くなって発症する例が多いものの、日本人を含む東アジア人はもともと喉の作りが小さいために、肥満でなくても睡眠時無呼吸症候群になることがあります。
狭くなった喉を空気が無理に通ると「いびき」が発生するため、いびきをかいているとか、呼吸が止まっていると家族に指摘されたら要注意です。
また、こういう状態は口呼吸になりやすく、一人暮らしの人は、朝起きたときに口や喉が乾燥しているのを手がかりにして睡眠時無呼吸症候群が見つかることもあります。
血圧の薬を飲んでいて、生活習慣も改善したのに効果が不十分という場合に睡眠時無呼吸症候群が隠れていることも珍しくありません。これらの症状が気になる人は、耳鼻科、呼吸器科、専門の睡眠時無呼吸クリニックなどで一度調べてもらいましょう。
休日の朝寝坊は1時間半までに
ストレスはあの手この手で血圧を上げます。血圧が通常は午前中に最も高くなるのは、交感神経が活動を開始する時間だからです。ストレスが続くと交感神経ばかりが活発に働いて、血圧が下がらなくなってしまいます。
一方の副交感神経はリラックスのための神経です。おもに夜になると働いて、心臓の収縮をやわらげ、血圧を下げます。血圧を安定させるには、性質のことなる2つの神経が一日を通じてバランスよく働くようにすることが大切なのです。
といっても、難しいことではありません。体は便利にできていて、規則正しい生活を送っていれば、いつもの時間になると2つの神経が自動的に切り替わり、交感神経の暴走を抑えられるようになります。
基本は、平日と休日の起床時間が大きくズレないようにすることです。平日は朝6時に起きるのなら、休日も7時半ごろには床を離れましょう。
朝も入浴するかシャワーを浴びると、皮膚に当たる湯の刺激で副交感神経から交感神経に穏やかにバトンが渡ります。日中はできるだけ体を動かして、起きているときと寝ているときの活動にメリハリをつけましょう。
昼寝は30分にとどめ、15時までに起きるようにすれば、夜の睡眠に影響を与えにくいようです。
さて、近年は「食べ過ぎ高血圧」という新たな難敵もいます。ようするに肥満による高血圧ということです。
幸いなことに、減量すれば血圧はたいてい下がります。45~66歳の高血圧患者さん、合わせて2100人を対象とする8つの調査を総合的に分析した研究からは、約4kg減量するだけで上の血圧が4.5ミリ、下が3.2ミリ下がることが明らかになっています。
理想は20歳のときの体重に戻すことです。人の体は20歳前後にできあがるため、それ以降増えた体重はほとんどが余分な脂肪だからです。
高血圧と診断を受けている人が、20歳のころの体重まで減らして必要な減塩を行えば、半数以上の人が薬を飲まなくてもよくなると考える専門家もいるくらいです。
一日当たりで減らす摂取カロリーを算出
ただし、まずは現実的な目標として、体格指数(BMI)でぎりぎり普通体重に入るレベルを目指しましょう。
こちらの式を見てください。男女共通です。
身長(m)×身長(m)×25=目標体重(kg)
現在、身長が170cmで体重が78kgの人なら、目標体重は約72.3kgとなり、今より6kg減らせばよいことになります。一気に下げるのは体にとって負担なので、毎月2kgまでの減量にとどめてください。6kgを3ヵ月以上かけて落とす計算です。
そのためには、一日あたりの摂取カロリーをどれくらい減らせばよいでしょうか。
減らしたい体重(kg)×25=一日に減らすべきカロリー(kcal)
6kg落とすのが目標の人は、一日の摂取カロリーをこれまでより150kcal減らせばよいのです。ちょうどカステラ1切れくらいです。これならなんとかなりそうな気がしませんか。
「いや、自分は6kgじゃとうてい足りない」という人も無理は禁物です。まずは6kgの減量を目指しましょう。
血圧を下げるには運動が欠かせません。けれども、こと減量に関しては、運動だけで達成するのは不可能といってよいでしょう。運動によるカロリー消費は想像するより少ないからです。
たとえば体重70kgの男性が運動で150kcal消費しようとすると、ジョギングなら約12分、自転車なら30分、ウォーキングなら45分かかります。これを毎日続けるのは、ちょっと大変です。
しかも、さわやかな汗を流して帰宅して、プリンを1個食べるか、ペットボトルのアイスティーを1本飲んだら、せっかくの150kcalが一瞬で帳消しです。これは厳しいですね。運動はするにしても、減量の基本はやはり摂取カロリーを減らすことです。
無駄なカロリーを見つけ出す
まずは、これまで無駄に摂取していた150kcalを見つけてください。体重が気になっていながら落とせなかったのは、必ず何かを余分に食べているからです。「そんなに食べてないんだけど」と言う人がよくいますが、体重計の数字を見れば、どこかに盲点があるのは明らかです。
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探す手がかりは、お菓子、果物、アイスクリーム、乳製品、カロリーのあるペットボトル飲料、揚げ物、おかずの品数、飲酒などです。
「おかずの品数」は少し意外かもしれませんが、あれもこれもと添えればカロリーオーバーします。「健康によい」といわれる食品も毎日食べなくてもよいでしょう。そのせいで肥満したらむしろ逆効果です。
ここにあげた食習慣をすべてやめる必要はないので、ひとつだけルールを決めて実行してください。ペットボトルはカロリーのないお茶に変える、おかずは一汁二菜にする、平日は晩酌しない、お菓子、果物は3日に一度にする、という具合です。この程度でも150kcalなら楽に減らせます。
ここでおすすめなのが、食事の内容をカレンダーか手帳に書いておくことです。人間は目の前のことに集中するようにできているため、おとといの食事内容となると忘却のかなたです。「親子丼、味噌汁、漬け物」程度でよいでしょう。たくあんだったか、柴漬けだったかまでは書かなくてかまいません。
あとになってメモを見返すたびに発見がありますし、着実に痩せていく自分の減量記録を見るのは楽しいものです。
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提供元:心臓病死のリスク、「月曜午前」が最も高いワケ|東洋経済オンライン