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2020.09.01

ドラッグストアの黒子「日用品卸」の業績に明暗|コロナ影響で売れゆき激減の化粧品で差


ドラッグストアの店頭に並べられたトイレットペーパーなど。新型コロナウイルスの影響で紙製品は品薄になった(写真:時事通信フォト)

ドラッグストアの店頭に並べられたトイレットペーパーなど。新型コロナウイルスの影響で紙製品は品薄になった(写真:時事通信フォト)

東京郊外のあるドラッグストア。洗剤やボディソープを扱う1階の売り場はレジ前に客が列をなしていたのに対し、2階の化粧品売り場は客の姿もまばら。店員も所在なさげに店内を眺めていた。

新型コロナウイルスの感染拡大を機に自宅で過ごす時間が増えるに伴い、消費者ニーズは急激に変化した。スーパーやコンビニ、ドラッグストアなどの売り上げデータを集計した市場調査会社・インテージによると、3月以降で最も売れた商品カテゴリーは雑貨だった。

具体的には、マスクや体温計、石鹸や住居用洗剤、芳香剤・消臭剤などがよく売れた。逆に売れ行きがよくなかったのは化粧品。とくに打撃を受けたのは口紅だった。4月以降の販売額は、前年同期比でほぼ7割減の水準が続いている。

日用品や紙製品の需要伸び増益に

この消費動向の変化は、ドラッグストア店舗の商品供給を支える日用品卸会社の明暗も分けている。

日用品卸大手のあらたは、2020年4~6月期の売上高が前年同期比8.5%増の2119億円、営業利益は同40.1%増の34億円となった。あらたは洗剤など日用品の販売に強く、家庭用紙製品のペーパークリーナーなど、足元の売り上げが堅調な商品を数多く取り扱っている。

「日用品や紙製品などの需要急増で4~6月期は販売量が伸び、増収増益となった。現状ではインバウンド需要減のマイナス影響もそこまで大きくない」と、あらたのIR担当者は話す。

あらたは2021年3月期について、売上高は1.7%増の8100億円、営業利益は9.4%増の102億円と、6期連続の増収増益を見込んでいる。

あらたの最大顧客は、「ツルハドラッグ」や「くすりの福太郎」を展開するツルハホールディングスだ。

2020年5月期のツルハの売上高構成比をみると、日用雑貨品が27.3%と最も高く、コロナ影響で変化した消費者ニーズにうまくマッチしていた。化粧品の構成比は15.9%で食品や医薬品よりも低い。

あらたの販売先は約5割がドラッグストアだが、ホームセンターやスーパーマーケットなどコロナ禍でも客数が落ちなかった業態も多い。

業界首位PALTACの冴えない業績

一方、業界首位のPALTACの2020年4~6月期は、売上高が前年同期比1%減の2600億円、営業利益は同2.7%減の60億円と冴えない。日用品や衛生用品などの販売量は増えているが、PALTACが得意とする化粧品や一般用医薬品(OTC)の落ち込みのほうが大きかった。

PALTACは2021年3月期の売上高を前期比0.1%増の1兆0470億円、営業利益は同1.2%増の250億円と計画している。通期では増益を見込むものの、ピーク時の2019年3月期の営業利益253億円には届かない見込みだ。

販売先の6割を占めるドラッグストアでの販売も苦戦しており、4~6月期の売上高は前年同期比1.3%減の1634億円となった。

PALTACは「マツモトキヨシ」のような都市型店への販売が少なくない。そのマツモトキヨシホールディングスの2020年4~6月期は、売上高が前年同期比で9.8%減、営業利益は38.9%減に沈んだ。2020年3月期で同社売上高のうち化粧品は38.6%を占め、インバウンド需要減の影響も大きく出たようだ。

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ただ、採算性ではPALTACがあらたを引き離している。2020年3月期のPALTACの営業利益率は2.4%。あらたの1.2%に大きく差をつけている。利益率にこれだけ差があるのは物流の効率化に理由がある。

PALTACはサプライチェーンの効率化を推進しており、独自の物流システムを構築するなど多額の投資を行ってきた。その集大成が2019年11月に稼働した大型物流施設「RDC埼玉」(埼玉県杉戸町)だ。年間出荷能力は1200億円規模になる想定で、約230億円を投じて建設した。

RDC埼玉では、商品を積み下ろすアームロボットやベルトコンベヤーなどの省人化設備が多数稼働している。「MUJIN」や「Kyoto Robotics」など、ロボット制御技術に優れたベンチャー企業と協働し、その独自技術を採り入れている。

飲料水など重い荷物を自動化設備で荷下ろししているほか、メーカーから届けられる商品データベースへの登録を自動化している。自動倉庫に詳しいコンサルティング会社ローランド・ベルガーの小野塚征志パートナーは、「物流業務のどの工程を自動化すれば最も効果が出るのかをPALTACはわかっている。他社と比べても省人化・自動化の点でかなり進んでいる」と話す。

レイアウト見直しで生産性向上

コロナ禍で消毒液などの需要が急拡大し、出荷量が通常の2倍に膨れ上がった際にも、アームロボットなどを24時間稼働させることで物流施設内の作業員を増員することなく対応できた。

「既存の物流拠点でもオペレーションや設備のレイアウトを見直したことで生産性が3割ほど向上した。当面はRDC埼玉で新たなノウハウを蓄積し、さらなる効率化につなげる」。PALTACの嶋田政治取締役常務執行役員はそう自信をのぞかせる。

【2020年8月31日11時37分追記】初出時のローランド・ベルガ―の小野塚氏、PALTACの嶋田氏の肩書きが誤っていました。お詫びの上、表記のように修正いたします。

対するあらたは、コロナ禍でトイレットペーパーなどの出荷量が急拡大した際には、倉庫内作業員の増員で対応しており、まだまだ省人化・自動化の余地が大きい。2020年8月に発表したあらたの中期経営計画では今後3年間で約300億円を投じ、物流拠点の新設や既存拠点の物流自動化等を推進する計画だ。ただ、首都圏で大型物流施設を新設する計画はあるものの、条件の合う土地を選定中で、稼働見通しも立っていない。

利幅の薄いビジネスである卸売業にとって、物流の効率性をいかに高めるかはまさに生命線。その点ではPALTACに一日の長があるといっていい。

ドラッグストアとスーパー、コンビニ間での三つ巴の小売り戦争が繰り広げられる中、その黒子役である日用品卸会社もしのぎを削っている。

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提供元:ドラッグストアの黒子「日用品卸」の業績に明暗|東洋経済オンライン

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