2020.08.19
姿が見えないリモートで評価される働き方とは|上司による部下の時間管理は最大のムダな作業
リモートワーク時代、生き残るために働き方をどう変えればいいのだろうか(写真:kouta/PIXTA)
人事コンサルタントとして、1万人以上のビジネスパーソンの昇格面接や管理職研修を行い、300社以上の企業の評価・給与・育成などの人事全般に携わってきた西尾太氏による連載。エンターテインメントコンテンツのポータルサイト「アルファポリス」とのコラボにより一部をお届けする。
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リモートワークを「時間」で管理するのはナンセンス
このたびの社会情勢により、日本は未曾有の不況に陥ろうとしています。働き方に対するこれまでの常識もすべて崩れ去り、リモートワーク、オンライン会議、よりフレキシブルな通勤タイムなど、「新しい働き方」の価値観が根付いていくのは避けられそうにありません。
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このように労働環境が激変する中にあって、「より企業に求められる人材」とはどういったタイプなのか、これからの時代を生き抜いていくためには「何」をしなくてはいけないのか、私たちは改めて考える必要があります。
そこで今回は、リモートワーク時代に社員が求められること、これからの時代を生き残るための働き方について、人事の立場から提言をさせていただきます。
現在はまだ多くの企業が世の中の変化に対応しきれず、リモートワークも手探りの状態といっていいでしょう。それはITインフラの未整備といった環境面の問題だけでなく、そもそも雇用契約にリモートワークが想定されていないからです。
勤務時間は何時から何時、働く場所はココと規定し、給与や評価を決めているのが雇用契約です。その前提として「自宅で働く」は含まれていません。
そのため上司が部下に「何してる?」とLINEを送って返事が来ないと電話で確認をしたり、部下のマウスの動きを監視するといった滑稽(こっけい)な状況が起こっています。
リモートワークでは、このように社員を「時間」で管理するのはナンセンスです。部下がサボることを前提にしていては、リモートワークは機能しません。
しかし、いずれにしても今後はより多くの企業でリモート化が進められていくのは間違いないでしょう。それによって社員の評価の仕方も変わっていくはずです。
リモートワークでは、社員が働く姿をリアルタイムで確認することはできません。となると、会社は「成果」で評価するしかありません。
日本の労働法制が変わるには、まだ時間がかかるでしょうが、働く人はそれを待たずして「成果」を重視する働き方に変えていかないと危険です。
リモートワークの浸透によって、会議やハンコ、時間による管理など、これまで当たり前だったものが次々と見直され、不要論が高まっています。
それは社員に対しても同じです。
これまでは同じ場所で同じ時間を過ごすことによって「あいつ頑張ってるよね」と思われていた人も、成果を出さないと、シビアな評価を下されることになります。
では、どうしたらいいのか?
まずは自身の「ミッション」を明らかにすることが重要です。会社からやるべきことを与えられるのを待つのではなく、自ら考え、それを会社に認めさせるのです。
「私はこれをやります」「これをやるために、この会社にいるのです」
このようにして自分の価値を打ち出し、成果を出していかなければ、この戦後最悪ともいわれる不況下では、真っ先にリストラ候補になってしまうかもしれません。
自分の「ミッション」を明確にしなければ生き残れない
なぜミッションを明らかにすることが重要なのかというと、今後おそらくバブル崩壊後と同じ現象が起こる可能性が高いからです。
これから半年から1年にかけて、各企業で現在のリモートワークの結果が見えてきます。誰がどんな仕事をしたのか、どんな成果を出したのかが徹底的に検証され、「あの人、いなくても大丈夫だよね」といった判断が行われていくでしょう。
1990年代のバブル崩壊時にも、やはり同じことが起こりました。
バブル崩壊によって終身雇用・年功序列を維持できなくなった企業は、成果主義に舵を切り、成果を出せない社員はリストラされました。
その後、その行きすぎた施策に対する揺り戻しもありましたが、今また同じ現象が起きようとしています。
リモートワークの導入によって明らかになったのは、社員を「時間」で管理する、集団主義的な日本型雇用の弱点です。
そこで今また注目されているのが、「時間」ではなく「成果」を重視する欧米流のジョブ型雇用です。日立製作所や富士通はすでに「ジョブ型」の導入を公表しています。
「ジョブ型」についてはバブル崩壊後にもその動きがあって、実はうまくいかなかったということもあり、その是非については改めてお伝えしたいと思いますが、いずれにしても「成果重視」になることは間違いなさそうです。
「成果」は、そこに至る「プロセス」によってもたされますが、リモートワークではその「プロセス」が見えにくい以上、どの企業も今後はより「成果」を重視していくはずです。
歴史は繰り返します。自ら仕事を生み出し、成果を出せない社員は「不要」というシビアな判断が下されていくことになるでしょう。
そうなる前に、自分でミッションを掲げ、会社に認めてもらい、出す成果を明らかにして、自分の居場所を確保する必要があるのです。
たとえリストラはされなくても、会社が決めた仕事を淡々とやっていくだけでは、これからの時代は収入が上がらなくなっていくはずです。
あなたが「価値」を提供する相手は誰ですか?
目標設定会議などでよく見かけるのは、たとえば経理の「数字の管理」といったミッションの記述ですが、それは「担当業務」であって「ミッション」ではありません。
「〇〇をより〇〇する」
これがミッションの定義の仕方です。
ミッションとは、その数字を「より」どうするのかを示さなくてはいけません。また、このような会話もよく交わされます。
「私は総務なので、ミッションと言われても……」
「では、あなたが価値を提供する相手は誰なんですか?」
「いや、総務なんで顧客と接点がないもので……」
総務だから顧客がいない。経理だからお客さんと接点がない。こうした発言をする人が多くいますが、それは間違いです。
価値を提供する相手は、「顧客」とは限りません。例えば総務だったら、経営者・社員・株主です。
「経営者に対して購買業務をより効率化して価値を提供する」「社員に対してより働きやすい環境を提供する」「株主が自社に対してより好感度を高めるような施策を展開する」など、総務として価値提供する相手も方法もいくらでもあるはずです。
ミッションの具体的な考え方
どんな仕事にも、必ず価値を提供している相手がいます。その価値を提供している相手に「より」何をもらすのか。これがミッションの考え方です。
「経営者により早く経営数値を報告し、経営判断をしやすくする」
「社員の経費精算をよりやりやすくし、業務の効率を高めて働きやすくする」
経理なら、このようにして自身のミッションを考えるのです。こうして自分でミッションを掲げ、それを明示し、会社に認めてもらいましょう。
たった1行でもいいのです。そのミッションが、会社が想定している役割とズレていたら、成果を出しても評価されません。まずはミッションを明確にすることが重要なのです。
いろいろな会社を見ていると、まずここがズレている人が非常に多いです。それでは、リモートワーク時代に生き残ることはできません。
よく考えてみてください。
あなたが価値を提供する相手は誰なのか? ミッションは、何を「より」どうするのか?
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提供元:姿が見えないリモートで評価される働き方とは|東洋経済オンライン