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2020.08.18

東京メトロ「改札外乗換」、初乗り運賃で1日観光│ 60分の乗換時間を利用し170円で食事も観光も


改札の外に出てから乗り換える「改札外乗換駅」を利用して観光や食事を楽しもう。写真は東京メトロ総合研修訓練センターの模擬改札口。(撮影:尾形文繁)

改札の外に出てから乗り換える「改札外乗換駅」を利用して観光や食事を楽しもう。写真は東京メトロ総合研修訓練センターの模擬改札口。(撮影:尾形文繁)

東京メトロには、同じ鉄道会社の駅であっても、いったん改札の外に出なければ乗り換えることができない「改札外乗換駅」が存在する。この6月6日より、東京メトロは「改札外乗換駅」の乗換制限時間を従来の30分から60分に拡大した。

なぜ、乗換制限時間が拡大されたのか。同社によると「6月6日に改札外乗換駅を追加したが、追加された虎ノ門・虎ノ門ヒルズ駅と、銀座・銀座一丁目駅の乗り換えが地上経由であることもあり、都営地下鉄様とも協議のうえで、乗換時間に余裕を持たせた」とのことだ。

改札外乗換駅は14駅

東京メトロで60分乗り換えの対象となる、改札外乗換駅は以下の14駅である。

上野、三越前、渋谷、池袋、大手町、飯田橋、新宿三丁目、上野広小路・仲御徒町、人形町・水天宮前、築地・新富町、銀座・銀座一丁目、淡路町・新御茶ノ水、日比谷・有楽町、虎ノ門・虎ノ門ヒルズ

乗換制限時間を過ぎると切符は無効となるが、60分以内なら改札外で行動できる。60分あれば食事をしたり、駅周辺を観光したりすることも可能だ。

注意すべきは、改札外乗換にはルールがあることだ。まず「オレンジ色の自動改札から改札外に出場しなければ、改札外に出られずに切符を回収される」こと。また、改札内で接続している路線同士(池袋駅の有楽町線と副都心線、日比谷駅の千代田線と日比谷線、飯田橋駅の有楽町線と南北線では不可)だと、上記の駅でも改札外乗換はできないことだ。

ルールを守れば、連続して改札外乗換を行うこともできる。例えば、以下のような乗り換えである。

丸ノ内線東京駅→大手町駅(改札外乗換で東西線大手町駅へ)→東西線日本橋駅(銀座線へ乗り換え)→三越前駅(改札外乗換で半蔵門線三越前駅へ)→水天宮前駅(改札外乗換で日比谷線人形町駅へ)→仲御徒町駅(改札外乗換で銀座線上野広小路駅へ)→上野

これだけ乗り換えても、初乗り運賃の170円(ICカード168円)である。改札外乗換が可能な大手町駅、三越前駅、水天宮前・人形町駅、仲御徒町・上野広小路駅の近隣には観光・商用施設があり、東京観光を格安で楽しめる。

ただし、東京メトロの乗り換えにはルールがある。旅客営業規定の第2節・第21条(1)には、片道乗車券の発売ルールとして、以下のように記載されている。

旅客が普通旅客運賃計算経路の連続した区間を片道1回乗車する場合に発売する。ただし、その経路が折り返しになる場合を除く。
(1)「乗換駅への運賃が目的駅までの運賃より高い場合は、運賃計算経路として認められない」
(2)「改札外に出て、同じ路線を継続乗車することは認められない」
(3)「同じ区間を折り返したり、経路が重複する乗車は認められない」ということだ。

(1)は、170円の切符なら乗換駅も含めて、170円区間に収まる必要がある。例えば、上記で書いた東京→上野駅の経路に続けて、日比谷線上野駅→北千住駅(千代田線へ乗り換え)→新御茶ノ水駅、と移動したとする。この場合、出発駅と目的駅は東京~上野駅から、東京~新御茶ノ水駅に変わる。東京駅から新御茶ノ水駅までは170円区間だが、途中の北千住駅が東京駅から200円区間なので、この場合は200円の切符が必要だ。

(2)は、例えば千代田線に乗車して、新御茶ノ水駅で改札外に出た後、再び新御茶ノ水駅の改札に入って、千代田線を継続乗車するケースだ。これは乗り換えていないので「改札外乗換」ではなく、不可だ。

(3)は「経路の重複」に注意が必要だ。例えば、丸ノ内線大手町駅→淡路町駅(改札外乗換で新御茶ノ水駅へ)→千代田線大手町駅、は経路の重複(大手町駅に戻ってきた)なので不可。

こうしたルールを守れば、1日乗車券(600円)よりも安く、東京巡りを楽しめる。出発駅と到着駅が限定されるが、200円切符で改札外乗換14駅すべてを回ることも可能だ。

実際に改札外乗換14駅に行ってみた

改札外乗換の例として、筆者は14駅すべてを訪れ、どの程度、観光できるのかを試してみた。

■半蔵門線大手町駅→東西線大手町駅

皇室所蔵絵画・書・工芸品を無料で見られる三の丸尚蔵館(筆者撮影)

皇室所蔵絵画・書・工芸品を無料で見られる三の丸尚蔵館(筆者撮影)

大手町駅で改札外乗換を行うには、いったん、丸ノ内線ホームに出るといい。丸ノ内線から東西線に乗り換えようとすると、オレンジ色の改札口から改札外に出られる。

大手町駅からはOOTEMORIや新丸の内ビル、オアゾといった商業施設で買い物が楽しめる。東京駅にも近く、東京ステーションギャラリーで芸術鑑賞も可能だ。

筆者は皇居内の江戸城和田倉門、江戸城大手門を観光した。D3出口から近い和田倉門は、木製の橋が今でも残る。C10出口から近い大手門は、同心番所、百人番所が残るほか、皇室所蔵絵画・書・工芸品を無料で見られる三の丸尚蔵館もある(所要時間:43分33秒)。

■銀座線三越前駅→半蔵門線三越前駅

銀座線の三越方面改札にオレンジ色の改札がある。日本橋三越本店や、コレド室町といった商業施設での買い物が楽しめるほか、三井記念美術館での芸術鑑賞も可能だ。

筆者はB3出口から近い貨幣博物館を訪れた。巨大な石貨や、我が国の歴代貨幣の展示、金銭史のビデオ鑑賞など、無料とは思えない充実の展示が楽しめる。(所要時間:40分1秒)

■半蔵門線水天宮前駅→日比谷線人形町駅

水天宮駅(筆者撮影)

水天宮駅(筆者撮影)

人形町駅(筆者撮影)

人形町駅(筆者撮影)

水天宮前駅の水天宮方面改札にオレンジ色の改札がある。筆者は5番出口から美しい境内の水天宮を訪れた。7番出口が近い甘酒横丁は食べ物屋も多く、楽しい。オススメは人形町今半。高級料理の印象が強いが、すき焼きコロッケなどのお総菜もあり、安価にも楽しめる。(所要時間:48分39秒)

■日比谷線仲御徒町駅→銀座線上野広小路駅

仲御徒町駅のJR御徒町駅方面改札にオレンジ色の改札がある。筆者はA8出口からアメヤ横丁に出た。活気ある商店街で、アメリカ軍の払い下げ品を販売している中田商店など、個性的なお店も見られる。上野広小路駅C6出口から徒歩7分ほどの下町風俗資料館は、大人300円と安価な入館料だが、大正・昭和時代の商家や駄菓子屋、銭湯の番台など、実物が豊富で見ごたえがある。上野松坂屋での買い物も可能。(所要時間:52分2秒)

上野の森美術館も徒歩圏内

■銀座線上野駅→日比谷線上野駅

上野駅は銀座線と日比谷線を乗り換えれば、オレンジ色の改札口が見つかる。筆者は上野公園の観光スポット、西郷隆盛像を訪れた。上野の森美術館も徒歩圏内だが、休館日で今回は訪れなかった。やや遠いが、不忍池の弁天堂も風景が美しい。(所要時間:16分8秒)

■千代田線新御茶ノ水駅→丸ノ内線淡路町駅

新御茶ノ水駅からは丸ノ内線乗換の案内に従えば、オレンジ色の改札を通れる。B3b出口から、坂を上がるとほどなくニコライ堂がある。拝観料300円で大聖堂が見学できるが、聖堂内の造作は重厚ですばらしい。(所要時間:36分32秒)

■丸ノ内線池袋駅→有楽町線池袋駅

丸ノ内線池袋駅と有楽町線池袋駅は必ず改札外乗換なので、オレンジ色の改札を通ればいい。筆者は西武池袋本店の屋上にある食と緑の空中庭園を訪れた。ここはクロード・モネの名画をイメージした睡蓮の庭が美しい。食べ物屋は7店舗があり(オススメはシシリアンライスを提供する、ココの台所)、さらに天空のビアテラスも楽しい。ほかには日本最大級の売り場面積を誇るジュンク堂書店や、老眼めがね博物館も徒歩圏内である。(所要時間:38分30秒)

■有楽町線飯田橋駅→東西線飯田橋駅

B4b出口から軽子坂を上がると、かくれんぼ横丁、芸者新道、兵庫横丁など、石畳の古風で美しい街並みが印象的だ。兵庫横町の近くには、お洒落な神楽坂通りもある。(所要時間:50分35秒)

■丸ノ内線新宿三丁目駅→副都心線新宿三丁目駅

新宿三丁目では新宿御苑が楽しめる(筆者撮影)

新宿三丁目では新宿御苑が楽しめる(筆者撮影)

E5出口から徒歩8分の距離に新宿御苑がある。旧御凉亭(台湾閣)、旧洋館 御休所といったレトロな建築物や大温室は見ごたえがあるが、広いので目的地を絞ったほうがいい。新宿マルイ本館やタカシマヤ タイムズスクエアなど、商業施設も充実。(所要時間:53分5秒)

■副都心線渋谷駅→銀座線渋谷駅

B6出口と直結した渋谷スクランブルスクエアは、有料だが高さ229mからの眺望を楽しめる。ただし、土休日だと60分以内で観光を終えるのは厳しそう。14階のNHKプラスクロスSHIBUYAは、人気番組の展示を無料で楽しめる。B2出口から近い渋谷のんべい横丁はインパクトが強い飲み屋街。A12出口から近い、忠犬ハチ公像も見ておきたい(所要時間:57分50秒)。

■銀座線虎ノ門駅→日比谷線虎ノ門ヒルズ駅

虎ノ門駅3番出口より虎ノ門 金刀比羅宮が近い。時間によっては境内にキッチンカーも置かれ、憩いのひと時を楽しめる。虎ノ門ヒルズ駅と隣接する虎ノ門ヒルズは1~4階が商業施設で、特に虎ノ門横丁は東京の人気店26店舗が集結している。(所要時間:42分59秒)

■日比谷線日比谷駅→有楽町線有楽町駅

日比谷駅A14出口からは日比谷公園が目の前。有楽町駅D5出口からは東京国際フォーラムが近く、地上の大江戸骨董市や地下1階の相田みつを美術館に行きやすい。出光美術館も徒歩圏内だ。(所要時間:50分12秒)

銀座観光は「改札外乗換」で

■有楽町線銀座一丁目駅→日比谷線銀座駅

銀座一丁目駅9番出口に商用施設メルサが隣接。2階のカンティーユは極めて精緻な細工とレアストーンに目を奪われる美術館のような宝飾店。8番出口からは、本物のガス灯が灯される銀座ガス灯通りが楽しい。日本最大級の文房具店・伊東屋や、レトロ建築物・銀座和光(銀座駅A9出口)など、見どころ豊富。(所要時間:48分12秒)

■日比谷線築地駅→有楽町線新富町駅

築地駅は築地場外市場が近いが、オレンジの改札口の関係で、新富町駅に近い4番出口から下車することに注意。場外市場では寿司屋が並ぶが、筆者のオススメは創作和食居酒屋・斬。醤油まで自作したこだわりの和食が安価に楽しめる。(所要時間:58分50秒)

これほどたくさんの場所に足を運べば、わずか170円で東京在住の筆者でも旅行気分が味わえる。ただ、問題が一つある。実は、上記の行程は3日間に分けて訪問した。すべて回ると合計20kmほど歩くことになる。もし実行する場合は、無理のない範囲にとどめることや、動きやすい恰好、コロナ対策のうがい、手洗いを心がけたい。

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提供元:東京メトロ「改札外乗換」、初乗り運賃で1日観光

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