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2020.08.03

文章が劇的に「伝わるようになる」鉄板ルール|わかりにくい文章には明らかな共通点がある


「わかりやすく、読みやすい文章」をかけるようになるコツを伝授します(写真:zak/PIXTA)

「わかりやすく、読みやすい文章」をかけるようになるコツを伝授します(写真:zak/PIXTA)

「あなたの文章はわかりにくい」「なんだか読みにくい」「何が言いたいのかわからない」。せっかく苦労して書いた文章にこんなことを言われた経験はありませんか。『メモの魔力』『言語化力』など話題書50冊以上手掛けてきたプロ編集者、竹村俊助氏が、文章の素人でも「わかりやすく、読みやすい文章」をかけるようになるコツを伝授します(本稿は、『書くのがしんどい』より抜粋・編集を加えたものです)。

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「わかりやすい文章」ってなんだろう

突然ですが、「わかりやすい文章」とはなんでしょうか?いろいろな定義があるでしょうが、ぼくがいちばんしっくり来ているのは、「読む速度と理解する速度が一致する文章」という定義です。理解が追いつかない文章だと、何度も読むはめになります。一方で、わかりきったことをくどくどと書かれるとイライラしてしまう。読みながらスーッと脳に染み込んでいくような文章が「わかりやすい文章」なのです。

たとえば、次のような文章があります。適切な例が思い浮かばなかったので、テキトーに国会の答弁書から引っ張ってきました(ちゃんと読まなくてもいいです)。

労働政策審議会の各分科会の委員並びに臨時委員及び専門委員は、労働政策審議会令第三条において、労働者を代表する者、使用者を代表する者及び公益を代表する者並びに障害者を代表する者のうちから、厚生労働大臣が任命することとされている。

労働者代表委員及び使用者代表委員については、我が国の労使それぞれの代表的団体の意見を踏まえ、労働者及び使用者の利益を代表するにふさわしいかなど種々の要素を同大臣が総合的に勘案して、公益代表委員については、公益を代表するにふさわしい経験、識見を有しているかなど種々の要素を同大臣が総合的に勘案して、障害者代表委員については、我が国の代表的な障害者関係団体の意見を踏まえ、障害者の利益を代表するにふさわしいかなど種々の要素を同大臣が総合的に勘案して、適格者をそれぞれ任命している。

労働政策審議会の委員は、厚生労働大臣が任命します。
大臣は、
(1)「労働者」を代表する人
(2)「使用者(経営者など)」を代表する人
(3)「公益」を代表する人
(4)「障害者」を代表する人
のなかから委員を選びます。
これは「労働政策審議会令」の第三条に書いてあります。
(1)〜(4)、それぞれの選び方はこうです。
(1)労働者を代表する人が、労働者の代表的な団体の意見を聞きます。そして「労働者の利益を代表するにふさわしいか」などを大臣が総合的に考えて選びます。(2)使用者も同じです。
(3)公益を代表する人は、「公益を代表するにふさわしい経験、学識や意見を持っているか」などを大臣が総合的に考えて選びます。
(4)障害者を代表する人は、まず、代表的な障害者関係団体の意見を聞きます。そして「障害者の利益を代表するにふさわしいか」などを大臣が総合的に考えて選びます。

よくわかんないですよね? 政治家や官僚のみなさんがやりとりするぶんには、これでいいのかもしれません。公的な文書なので、読みやすさよりも正確性を重視しているのでしょう。ただ、これは一般の人が読んでパッとわかるようなものではありません。「読む速度に理解する速度が追いつかない」文章だと言えます。

この文章で言いたいのは、「労働政策審議会のメンバーは厚生労働大臣が選びますよ」ということです。そのうえで「どういう人の中から、どういう基準で選ぶのか」が書かれています。

ぼくなりに理解して整理してみると次のようになります。

専門家ではないので、細かいところは間違っているかもしれません。ただ、大枠はこういった感じでしょう。後者の文章は、ある程度「読む速度」と「理解する速度」を一致させることができたのではないかと思います。前提として大切なのは、書き手が内容をきちんと理解しているということです。

わかりにくい文章を劇的にわかりやすく変えるには

たまに、書き手自身が書く内容をぼんやりとしか把握していない場合があります。そういう人の書く文章が読みやすくなるはずがありません。書き手が理解していないものを読み手が理解できるはずがないのです。

わかりやすい文章のつくり方をひとつずつ見ていきましょう。まずは「一文をなるべく短くする」ということです。先ほどの例で言えば、

労働政策審議会の各分科会の委員並びに臨時委員及び専門委員は、労働政策審議会令第三条において、労働者を代表する者、使用者を代表する者及び公益を代表する者並びに障害者を代表する者のうちから、厚生労働大臣が任命することとされている。

は、長すぎます。一文が長すぎる。よって、いくつかに分けます。すると、

・労働政策審議会の委員は、厚生労働大臣が任命します。
・大臣は、(1)「労働者」を代表する人、(2)「使用者(経営者など)」を代表する人、(3)「公益」を代表する人、(4)「障害者」を代表する人のなかから委員を選びます。
・これは「労働政策審議会令」の第三条に書いてあります。

と3つの文に分けられます。

別の例を出しましょう。例えばこんな文があったらどうでしょうか?

国境の長いトンネルを抜けると雪国だったんですけど、夜の底が白くなったころに信号所に汽車が止まって、向側の座席から娘が立って来て、島村の前のガラス窓を落すと、雪の冷気が流れこみました。

途中から理解が追いつかなくなって「ちょっと何言ってるかよくわからない」状態になったのではないでしょうか?

国境の長いトンネルを抜けると雪国であった。夜の底が白くなった。信号所に汽車が止まった。
向側の座席から娘が立って来て、島村の前のガラス窓を落した。雪の冷気が流れこんだ。
(川端康成『雪国』より)

一文は短いほうが理解しやすいですし、リズムができて読みやすいことがわかるでしょう。「国境の長いトンネルを抜けると雪国であったのだが……」とダラダラ続くと、なんだか歯切れも悪いし、疲れてしまいます。

短い文はバカっぽいと思うかもしれません。「頭をよく見せたい」「ちゃんとした文章を書きたい」と思えば思うほど、文は長くなりがちです。しかし逆なのです。短くシンプルな文ほどわかりやすくて、むしろ頭がよく見えるはずです。

労働政策審議会の各分科会の委員並びに臨時委員及び専門委員は、労働政策審議会令第三条において、労働者を代表する者、使用者を代表する者及び公益を代表する者並びに障害者を代表する者のうちから、厚生労働大臣が任命することとされている。

この文は、ひとつの文であらゆることを言おうとしています。一度にすべて伝えようとすると、読み手に情報がなだれ込んでしまい、理解が追いつかなくなります。上記の文を分解すると、以下のことを言っています。

・委員は大臣が任命する
・それは労働政策審議会令第三条に記されている
・委員は労働者、使用者などの代表者のなかから選ぶ

ひとつの文で複数のことを伝えようとしない。基本的にひとつの文ではひとつのことが伝わればいい。ひとつずつ伝えることです。

情報も1つずつ伝える方がいい

目の前の人に、りんごとみかんとバナナを一度に渡すとどうなるでしょうか? 困るはずです。いくつかは落としてしまうでしょう。そうではなく、ひとつずつ渡す。「はい、りんご」「はい、みかん」というように渡していけば、相手も落とさずに処理できるはずです。

猫は動物であり哺乳類である一方で犬も動物であり哺乳類であるが、ぼくは猫だけが好きなのであって同じ動物だったとしても犬は好きではない。

ではなく、

猫は動物です。哺乳類でもあります。犬も動物です。哺乳類です。ぼくは、猫が好きです。猫も犬も動物です。ただ、犬は好きではありません。

と書けばいいわけです。

記事画像

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「AはBです」というようにシンプルに言い切ることが大切なのです。一度にすべてを伝えようとするから、わかりにくくなります。「AはBです」「CもBです」と一つひとつ処理していく。

「ここまではわかりますよね? ここまではわかりますよね?」と読み手に確認するように書いていけば、わかりにくい文章は生まれないはずです。

記事画像

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「イラっとさせられる文章」に共通する3大NG

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提供元:文章が劇的に「伝わるようになる」鉄板ルール|東洋経済オンライン

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