2020.07.21
誰でも「服」を確実に減らせるたった3つの手順 |捨てるか迷ったとき何を基準にすればいい?
捨てられずにため込んでいた衣類の、上手な手放し方を解説します(写真:InspirationGP/iStock)
新型コロナウイルスの影響は、この夏も続きそうだ。ゴールデンウイークがそうであったように、夏休みにも、「どうせ家ですごすなら、片付けでもするか」という方も多いだろう。そこで今回は、雑誌『ハルメク』で掲載した片付け特集の中から、不要品、なかでも捨てられずにため込む方が多い衣類について、上手な手放し方を解説したい。
すっきりクローゼットを作るには
「1回くらい着るかも」「捨てるにはもったいないかも」などの理由で、クローゼットは服であふれがちだ。とりわけ、雑誌『ハルメク』の読者層である60代、70代の女性たちは、暮らしてきた時間が長い分、「〇〇のときに着た記念の服」や、「思い切って買った高価な服」などが蓄積していて、なかなか捨てられない。
親から譲り受けた着物が、一度も着ないまま大量に眠っている方もいる。結果、クローゼットや引き出しが満杯になって服の出し入れが億劫になり、いつも手前にある同じ服ばかり着る羽目に──。こうなるとますます、何のために大量の服を残してあるのかわからなくなる。
大事なのは「今の自分」に必要な服だけを残すこと、裏を返せば「今の自分に必要のない服」は潔く手放すことだ。とはいえ、言うは易く行いは難しい。整理収納アドバイザーの井田典子さんが、服を手放すプロセスと考え方について、教えてくれた。
服を手放すためのたった3つのステップ
1. 範囲を決めて、服をすべて出す
まずは、減らしたいと思っているカテゴリー(例:スポーツウェア)や、片付けたいと思っている場所(例:引き出し1つ)など、範囲を決めて服を全部出す。範囲を絞ればそれほど労力はかからない。すべて出して1カ所に集めてみれば、活躍していない服、存在を忘れていた服などの多さに直面し、「捨てるスイッチ」が入りやすくなる。
2. 数を把握する
次に、Tシャツやパンツなど、カテゴリーごとに数を数える。そのとき「Tシャツ〇枚」とアイテム名と枚数を書き記してみると、現実を直視できるし、後で見返すこともできて便利だ。正しい数量を知ることで「持ちすぎている」ことを実感でき、「減らしても困らない」と覚悟が決まってくる。
3. 手元に残す服を選ぶ
最後は、残す服と手放す服に分けていく。服を広げたり、実際に触ることで、デザインは古くないか、シミはないか、「今の自分」が着たいと思える服かどうかを判断しやすくなる。迷ったときは、鏡の前で服を体に当ててみると客観的に判断できる。どうしても判断がつかないときは「保留ボックス」を作って入れておき、1年後にもう一度確認を。「この1年、結局着なかったな」とわかれば、手放す踏ん切りがつきやすくなる。
前述の3ステップのなかで、もっとも難しいのは3の「選ぶ」ではないだろうか。捨てられないタイプの人ほど「これもいる、これもいる」に陥ってしまい、ほとんど減らせない結果になりがちだ。そこで井田さんに、迷ったときの判断基準も聞いてみた。
・似たようなデザインの服は数を絞る
分散していた服を1カ所に集めてみると、同じような服をたくさん所有していることに気づくはず。白シャツばかり何枚もあるとか、黒のタートルネックがやたらあるとか、筆者にも身に覚えがある。収納スペースには限りがあるから、状態のよいものだけに絞って、ほかは潔く処分しよう。
・生地がヘタっていたりシミのある服は潮時
仕分ける際には、実際に広げてみて、生地の状態や虫食い、シミをチェックすることが大切。いくら高価でも、くたびれた服を着ている人はすてきには見えないと心得よう。「手入れすればまた着られる」と思いながら何年も手入れしそびれている服があれば、思い切って処分を。
・もう一度お金を出しても買うか?を自問する
お気に入りだけど着ていない服を手に、「これから着るかも」と迷うときは、「購入したときのお金をもう一度払ってでも欲しいか?」と自分に問いかけるべし。NOならそれは、今の自分に必要のない服だということ。手放す判断を。
・「もったいない」は90%着ない
例えば娘が手放した服を「まだ着られるから」「もったいないから」と自分の引き出しにしまうシニア女性は多い。このように「もったいない」だけが理由で残った服にはほぼ出番はない。着ない服を増やして、スペースを無駄にするだけだと自覚しよう。
「捨てる」以外にもある!古着を社会に役立てるには
こうして「今の自分に必要ない服」を選びだしたら、あとはゴミ袋に詰めて収集日を待つ──のではなく、今、それをもう一度社会に生かす取り組みが注目を集めている。いわゆる寄付である。
例えば雑誌『ハルメク』で紹介して大反響だったのが「古着deワクチン」という寄付の仕組み。回収キットを購入することで、「認定NPO法人 世界の子どもにワクチンを 日本委員会」を通じて、開発途上国の子どもにポリオワクチンを届けることができるというものだ。
回収された古着は開発途上国で販売され、その売り上げの一部もワクチン代になる。同時に、これらに関わる業務で福祉作業所や開発途上国での雇用も生み出されている。
雑誌『ハルメク』の読者世代はとくに、終活の片付けや遺品整理をかねて利用する方も多い。思い出のある服をただ捨てるだけでは気が進まなくても、次に誰かが着てくれるなら手放しやすくなるし、子どもたちの命を救えるならなおさらだ。実際、誌面で紹介したときにはあまりにも大反響だったため、シニアにとっての利用しやすさを考慮した、ハルメク読者向けの「ハルメク 古着でワクチン」の提供を始めたほどだ。
ほかにも、食器やキッチン用品を寄付できる「ワールドギフト」、本やCDを寄付できる「こどものみらい古本募金」、着物や人形を寄付できる「セカンドライフ」などなど、さまざまな取り組みがある。回収の費用や方法はさまざまだから、自分にあった形を探してみてはどうだろうか。
「残した服」を賢く収納して、どんどん活用しよう
こうしてクローゼットに「今の自分に必要な服」だけが残ったら、今度こそすっきりと収納しよう。場所をとらず、取り出しやすく、お気に入りの服の出番が増える片付けのコツを、整理収納アドバイザーの井田さんに聞いた。
・よく着る服は、コーディネートをしてハンガーにセットしておく
ワンピースとジャケットにネックレス、ブラウスとスカートにベルトなど、よく着る組み合わせでコーディネートしてハンガーにかけておけば、着こなしに迷わず、場所もとらない。忙しくてもさっと取り出して着られるから出番も増える。
・たんすに収納するときは輪を上にする
服を畳んでたんすに入れるとき、下から上へと重ねてしまうと下のものを着なくなるし、取り出したあとも散らかりやすい。たたんだ輪のほうを上にして立てた状態で並べれば、色や柄が一目でわかり、服が取り出しやすくなる。よく着る服は手前の列、頻度が低い服は奥にしまうのも整頓のコツ。
・普段使いの小物はクローゼットの入り口にかけて出し入れしやすく
よく使うバッグやストールの置き場所は取り出しやすい位置に固定しよう。いつでも目に入る位置にあれば存在を忘れず、活用の機会も増えるはずだ。収納しづらい場合は、ワイヤーハンガーの両端を折り曲げれば、小物掛けとしても使える。
いかがだっただろうか。コロナウイルスの影響が当分続きそうな今、マスクをつけて炎天下に出かけるよりも、家で不要品の片付けに精を出し、手放したものが誰かの役に立っていることを想像しながら過ごすのは、なかなかいいものだ。