2020.04.16
「寝たのに調子がよくない」人に教えたい睡眠法 |今がチャンス「睡眠負債」返済する3つの方法
たまってしまった睡眠負債を返済する3つの方法とは?(写真:EKAKI/PIXTA)
免疫力の高い体をつくったり、日中のパフォーマンスを最大化するためにやるべきこと。それは、たまりにたまった睡眠負債を返済することと、体内時計を調整したり、セロトニンを増やしたりして睡眠の質を上げること――そう語るのは『最強の睡眠 世界の最新論文と450年企業経営者による実践でついにわかった』の著者で、睡眠研究家の西川ユカコ氏だ。本記事では、「睡眠負債」を返済するための具体的メソッドを紹介する。
『最強の睡眠 世界の最新論文と450年企業経営者による実践でついにわかった』 ※外部サイトに遷移します
今こそ睡眠負債を返済する絶好のチャンス
前回(「たいていの人は自分の『睡眠タイプ』を知らない」)お伝えしたとおり、免疫力を高めるための睡眠時間も、成人が心身ともにずっと健康でいるために必要な睡眠時間も7~9時間です。ただ、忙しい皆さんのことなので、コンスタントに7~9時間眠れている人はかなり少ないでしょう。
「たいていの人は自分の『睡眠タイプ』を知らない」 ※外部サイトに遷移します
ですが、時短勤務や在宅勤務などで平時よりも時間が作りやすい今なら、睡眠負債の返済に取り組み始める絶好のチャンスであるといえます。早速、私が普段から用いている下記のチェックシートで、あなたの睡眠を検証してみましょう。
チェック1は睡眠負債がたまった場合の特有の症状、チェック2が睡眠不足のときに起きる主な症状です。
さて、結果はどうだったでしょうか。働き盛りのビジネスパーソンならば、多かれ少なかれ睡眠負債はたまっているはずです。免疫力強化のため、また最高の体調で最大のパフォーマンスを発揮するために、それらをできるだけ早く返済していきましょう。
まず、睡眠負債は1週間単位で考え、検証していきます。もっとも、誰でも数週間で完済できるというわけではありません。私自身もかつては相当にひどい状況だったので、完全な状態まで戻すのに1年以上かかりました。でも、そんな私が今はすっかり「絶好調」。ですから、慌てる必要はありません。
これから紹介する3つの方法を試していけば、心身の「調子がいい」を確実に感じられるようになるはずです。睡眠の専門家として、1人の体験者として約束しますから、できることからしっかりとやっていきましょう。
(1)平日はいつもより30分早く寝る
最も無理がなく、かつ自分に合った睡眠時間に近づける方法です。いつも24時に寝床についていた人なら、それを23時30分にします。見たいテレビがあっても断行してください。
これを1週間実践してみると、睡眠負債がたまっている人はとくに何も感じませんが、さほど負債がたまっていない人は、少し調子が上向くはずです。とにかく1週間、30分早く寝た自分を褒めながら、次の週はさらに30分早く寝るようにします。
こうして30分ずつの短縮を淡々と進め、平日でも毎日7~9時間の睡眠を確保できるように持っていきます。そして、今後はそれを守ります。
なぜ30分ずつ早めるのがいいのか
7~9時間睡眠のどれが今の自分に合っているかは、試してみて最も心身の快調を感じられるところをつかむしかありません。難しければ、まずは8時間を目標にするといいでしょう。
ちなみに、なぜ30分ずつ早めていくかというと、それが誰でもいちばん無理なく眠りにつきやすいからです。いつものリズムをいきなり変えようとすれば、かえって寝つくことが難しくなって逆効果です。
ご参考までにお伝えすると、いつも寝床につく2~4時間前を「睡眠禁止帯」と呼びます。これは1日の中でも脳波的にいちばん眠りに入りにくくなる時間帯です。ただし睡眠負債をため込んでいる場合は別です。
例えばいつも25時に寝ている人が、21時や22時などいつもよりずっと早い時間に眠れるのなら、どんどん早く寝てしまってください。私もそうやって睡眠負債の返済スピードを上げました。
(2)休日の寝坊は平日の起床時間+2時間まで
平日は朝6時に起きている人なら、休日は遅くとも8時には起きます。どんなに眠くても起きましょう。その努力は必ず、「快眠体質」と「パフォーマンスの高い人生」を手に入れることにつながります。
たとえ睡眠負債がたまっていなくても、休日に2時間以上の寝坊はしないほうがいいでしょう。「社会的ジェットラグ」を引き起こし、体内時計も狂います。体内時計が狂えばうまく眠れなくなり、睡眠負債をためてしまいます。
大事なことは「休日扱い」しないこと
なお、「起きる」ということは「目覚める」とは違います。目覚めていつまでもベッドの中でもぞもぞしていても、起きたことにはなりません。また、休みの前日も休日も、できる限りいつもと同じ時刻、もしくはいつもより早めにベッドに向かってください。
大事なのは休日を特別扱いしないことです。仕事を忘れて楽しく過ごすことは大事ですが、睡眠については「例外」はつくらないほうが、かえって体がラクになり、翌日、翌週をよりラクに、より高いパフォーマンスで過ごすことができます。
(3)昼寝をうまく利用する
昼寝については、上手に利用することで睡眠負債の返済スピードが上がります。平日には12〜15時までの間に15〜20分。55歳以上は30分まで。休日には12〜15時までの間に最長1時間半まで。このルールを守って、積極的に昼寝をしましょう。
もちろん平日には、無理に昼寝をする必要はありませんが、「ちょっと疲れたな」というときに取り入れると脳がリフレッシュして頭がスッキリし、午後のパフォーマンスがグンと上がります。
週末の昼寝は睡眠負債返済のために大切ですが、くれぐれも「1時間半を超えない」こと。昼寝には夜の睡眠とは違った心地よさがあるため、長く眠ってしまいがちです。しかし、それによってせっかく整いつつある体内時計が乱れます。
ちゃんと目覚ましをかけて、決めた時間に起きましょう。
これらの方法について、①〜③まで、すべて同時にスタートさせるのが難しい場合は、できることから始めましょう。また、どうしても実行できない日もあるでしょう。
「今日も先週より30分早く寝よう」と思っていたのが、突発的な事案によって「2時間も遅くなってしまった」ということもあるかもしれません。でもそこで絶望して投げ出してしまったら、せっかくの努力が水の泡。そういうときは、先週より30分早く寝る日をもう1〜2日増やして、帳尻を合わせます。とにかく淡々と続けていきましょう。
目的は「睡眠負債を返済」すること
私たち日本人は私も含めて生真面目な人が多いので、1日や2日ルールを守れなかっただけで「やっぱりできなかった」「こんなの初めからできるはずがないんだ」などと、挫折してしまうことも多いと思うんです。でも、よく考えてみてください。目的はルールを厳守することではなく、睡眠負債を返済することにあります。
『最強の睡眠 世界の最新論文と450年企業経営者による実践でついにわかった』 クリックすると、アマゾンのサイトにジャンプします
だから、ルールを守れなかった日に「ゲームオーバー」してしまうのではなく、自分をなだめて、おだてて、なんとか続けること。言ってみれば、「生きること」と同じです。
それに邪魔が入ったり、気分が乗らなかったりするときがあってもブレずに目標を達成できるのは、能力の高い大人の証しだと思います。あなたがプレーすべきは「今週は8時間眠る」といったルールを厳守するゲームではなく、「睡眠負債を返済する」というゲームのほうです。
睡眠負債は、あなたがあなた自身に課したものです。踏み倒して逃げ切ることはできません。免疫力を高めるためにも、本来自分がもっている力を最大限発揮するためにも、もちろん体調のいい自分で気分よく毎日を過ごすためにも……睡眠負債を返済するメリットはたくさんありすぎて書ききれませんが、とにかく一刻も早く返済してしまいましょう。
【あわせて読みたい】※外部サイトに遷移します
提供元:「寝たのに調子がよくない」人に教えたい睡眠法|東洋経済オンライン