2019.05.17
人間関係を円滑にする「ちょうどいい」気づかい| おせっかいや余計なお世話にならない方法
気づかいは言葉だけでは不十分な場合が多いです(写真:8x10/PIXTA)
「『気がきかない』とよく言われるけど、そもそも気のつかい方がわからない……」「自分では気をつかったつもりなのに、相手が気づいてくれない……」こんなふうに悩むことはありませんか?
本稿では、秘書としての経験を生かし、「気づかいの専門家」としてさまざまな活動に従事されている能町光香氏の新著『もっと誰からも「気がきく」と言われる46の習慣』の内容を抜粋・再構成して、そんな悩みにお答えします。
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気づかい=言葉+小さな行動
気づかいというと、「何か気の利いたことを言う」というイメージが強いかもしれませんが、実は言葉だけでは不十分な場合が多いものです。
例えば、ある日夜遅くまで続いた会議が終わり、あなたが1人で会議室の片付けをしていたとします。そこで、同僚が声をかけてくれました。
同僚:「大変でしたね。会議だったんですか?」
あなた:「そうなんです。このあとも資料をまとめないといけなくて……」
同僚:「ええ~、そうなんですか? お疲れさまです、頑張ってくださいね~!」
さて、この会話についてどう思われたでしょうか?
「気をつかってくれていい子だなぁ」と思われる方もいるかもしれませんが、「頑張ってって、それだけ?」と、何となく拍子抜けしてしまう方もいらっしゃるでしょう。確かに、声をかけて同情をしてくれたものの、どこか「気持ちがこもってない」と感じられるかもしれません。
こうした場面では、「お疲れさまです」と言いながら飴やクッキーなどを渡したり、「どうぞ」と温かいコーヒーをさりげなく持ってきたり、「2人のほうが早いですよね」と一緒に会議室を片付けはじめたり、「私になにかできることありますか?」と聞いてみたり、こうした小さな行動が伴っていれば、相手の受ける印象はだいぶ変わることでしょう。
行動といっても、本当にちょっとしたことで十分です。私は、「言葉だけではなく、気持ちを添えて行動を見せる」ことが、本当の気づかいだと思っています。
この点、「とりあえずなぐさめの言葉をかけてみる」というのが一般的な気づかいのイメージなのかもしれません。しかし、言葉だけでは相手に伝わりづらいことも多いものです。そこで小さな行動を起こせれば、きっと相手にもあなたの気持ちが伝わることでしょう。
上手に気づかいをするには、相手への想像力を欠かさないことが重要です。相手の事情を無視して、自分自身の視点で気づかいをしてしまえば、それは「余計なお世話」や「おせっかい」になってしまうこともあります。
そこで、おすすめしたいのが「感情にそっと寄り添う」ことです。相手の気持ちにそっとくっつくようなイメージをしてみてください。その人の周りに流れる空気、ピリピリしているとか、ボーっとしているとか、眠そうだとか、感じることがあると思います。
それは、相手の表情、眉毛の形、眉間のしわ、視線、目の力の強さや弱さ、口の形、声のトーン、言葉数、鼻、耳、手や足の仕草、物の置き方、ドアの閉め方……といった目に見えるものや、音として聞こえるものがヒントとなってあらわれてくるからです。
五感を使って「何となく」感じ取る
人間というのは五感を使って、それらを「何となく」感じ取っています。その人を包む空気がなんとなく重いのならば「ああ、今日はこの人は元気がないんだなぁ」と、いつもより口角が上がってすこしテンションが高かったのならば、「今日はいいことあったんだなぁ」と思いますよね?
それは、決して難しいことではありません。職場の同僚、友達、恋人、奥さんや旦那さん、お父さんお母さん……接する回数の多い人ほど、その変化に気づきやすいはずです。
そして、ちょっと服装や表情などの雰囲気が明るくなったときなどは「服の雰囲気が変わったね、何かいいことあった?」「いつもよりイキイキしているわ、何かあったの?」と聞いてみてください。
「愛の反対は無関心」という言葉があるように、自分のことをきちんと見てもらいたいのなら、自分も相手のことをきちんと見てあげること。相手が喜ぶ気づかいは、そこからはじまります。
「感情にそっと寄り添う」ことが大事だという話をしましたが、人の感情に気がまわるようになったら、今度はタイミングを意識してみましょう。とくに、人が忙しいときやカリカリしているときなどは、タイミングをよく読むことが必要です。
例えば、同僚がキーボードをたたいているとき、音がいつもよりちょっと大きかったら、「あぁ、なんだかイライラしているなぁ」と感じますよね? そんなときには、ランチに誘って少し話をしたり、チョコレートや飲み物を渡したり、タイミングよく気をつかってみましょう。
最初に述べたように、行動自体は大したことでなくてもいいのです。もちろん、「何をするか」といった行動の内容も大切ですが、より大事なのはタイミングです。
つまり、上手に気をつかうというのは、その人のことをよく気にかけ、感情の変化に気づき、その時々で必要なことを必要なタイミングで行う、ということになります。大事なのはタイミングで、それさえよければやることは大したことではなくていい。そう思うと、すこし気が楽になってきませんか?
感情に気を配るだけでいい
いつもよりすこし顔色が悪かったら、「大丈夫? 最近がんばりすぎていない?」とか、「すこし休んだらどう? コーヒーでも買ってこようか?」とか、そんな具合です。あるいは、咳をしていたらさっとのど飴を渡すとか、眠そうだったらそっとガムを渡すとか、それだけで十分なのです。
皆さんも「気にかけてもらえたことがうれしい」と思ったことはありませんか? 相手にそう感じてもらうには、疲れているとき、イライラしているときなど、感情に気を配るだけでいいのです。
私もよく、「なんか集中できないなぁ」と思っていると、上司が「コーヒーが飲みたいな。ちょっと外に出ない?」なんて声をかけてくれることもありました。ほんの15分間コーヒーを飲みに行き、他愛もない話をするだけですが、これが本当にいい気分転換になっていました。
でもこれが、「どうした、何か悩みでもあるの? 時間とって話そうか?」なんていう仰々しい感じになると、ありがた迷惑になってしまいます。過剰な気づかいは相手に余計な負担をかけ、お互いが気疲れしてしまうものです。
普段の生活の中で大切なのは、何かを買ってあげるとか、食事をご馳走するとか、そんな大きな気づかいではありません。繰り返しますが、大事なのはタイミング。小さな変化や違いに気づき、それを言葉や行動であらわすことです。
以前、視察目的で上司と社員数名でハワイに行ったときのことです。当時の上司は外国人で、あとのスタッフはみんな日本人でした。夜になってビュッフェ形式の食事をとることになったのですが、ある男性社員が上司のためにありとあらゆるものを持ってきます。
お肉、野菜、ご飯、フルーツ……その人としては最大限の気づかいだったと思うのですが、肝心の上司は「これ食べないといけないのかな……?」と、すこし迷惑な様子でした。
というのも、上司はその日体調があまり優れず、重たい食事をあまりしたくなかったようなのです。さらに、「ビュッフェスタイルだから、自分で好きなものを選んで食べたい」という思いもあったようでした。ただ上司も、「部下の厚意を無下にするわけにもいかない」と、結局もらったプレートを食べていました。
したたかさが伝わってしまう
その社員の方が一生懸命気をきかせたのはわかりますが、気づかいの方向性が違っていたのかもしれません。すると、せっかくの気づかいも「余計なお世話」や「いらぬおせっかい」になってしまいます。このように、気づかいがうまくいかず空回りしてしまうのには、動機によるところがいちばん大きいと思います。
もし「相手に嫌われないようにしよう」「好かれよう」「親切だと思われたい」というような動機であれば、それは、相手本位ではなく自分本位の姿勢です。相手のことではなく、自分のことをいちばんに考えてしまっているのです。「この人に喜んでもらいたい」という動機のない気づかいからは、なんとなくいやらしさやしたたかさが伝わってしまうものです。
こういったケースでよく見るのは、本や雑誌などで得た紋切り型の「テクニック」です。例えば、「大勢での飲み会などでは、料理は最初の1回だけ取り分ける」「名刺交換などでは相手の名前や会社名を復唱する」などです。たしかにこれらも大事だと思います。しかし、それ以上に大事なのは、その時々の相手の気持ちや場の空気です。
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ノウハウやテクニックは、それだけ覚えても意味がありません。通用する人や場面もあるでしょう。ですが、逆にまったく通用しない場合もあるのです。気づかいが空回りしてしまう人は、次のことを考えてみてください。
「本当にその行動は相手にとって必要、または適切か?」
自分の行動に対して「ありがとう」という言葉がほしいと思うのは、いけないことではありません。しかし、それを過剰に期待すべきでもありません。最初から結果を求めるのではなく、「やっていくうちに結果がついてくる」と、肩肘を張らず、気楽に、自然に行う気づかいこそが、だんだんと感謝、好感を生んでいくのです。
本稿のポイントをまとめると、以下のようになります。
1. 言葉だけでなく、小さな行動を起こす
2. 相手のことをよく見て、想像力を働かせる
3. 気づかいはタイミングが命
4. 気づかいは本来、相手のためのもの
以上のことを意識して、ぜひ相手に喜んでもらえる気づかいをしてみましょう。
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提供元:人間関係を円滑にする「ちょうどいい」気づかい|東洋経済オンライン