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2019.04.02

「夢に向かって頑張る」が科学的にアウトな理由| UCLA医学部教授が教える「意志力不要」の技術


夢」を現実に変える方法は、「小さな」目標を段階的に達成していくことだ(写真:Elnur/PIXTA)

夢」を現実に変える方法は、「小さな」目標を段階的に達成していくことだ(写真:Elnur/PIXTA)

新年度を迎えるにあたり、「ラジオ英会話を毎日聴こう」「ジム通いを続けよう」「ダイエットして3キロ体重を減らそう」と心新たにする人もいるだろう。だが、残念ながら、「ラジオ英会話の5月号のテキストはもういいや」「ジムはいつの間にか行かなくなった」「ダイエットは明日から」という人のなんと多いことか。
だからといって性格を変える必要はない。性格を変えなくても、科学的に裏付けのある方法を取り入れるだけで、誰でも物事を続けやすくなり、目標にしたことをなし遂げられるようになる。
数千人の行動を変えたUCLA医学部教授の15年にわたる研究の成果が、『UCLA医学部教授が教える科学的に証明された究極の「なし遂げる力」』だ。最新脳科学と心理学からわかった科学的方法では、人生を変える7つの力を利用する。今回、7つの力のうち「目標を小さく刻む力」について、本書の本文から抜粋し、一部編集のうえ掲載する。

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目標を「十分に」小さくする効果

生まれて初めてはしごを登ったときのことを思い出してほしい。登る前は恐かったはずだ。しかし、1段目に足を置き、片手を上げて頭上の段をつかみ、もう一方の足を2段目に置き、さらにもう一方の手で1つ上の段をつかむことで、リズムが生まれ、想像していたほど難しくはないと感じたのではないだろうか。

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『UCLA医学部教授が教える科学的に証明された究極の「なし遂げる力」』(東洋経済新報社) クリックすると、アマゾンのサイトにジャンプします

次の段に集中していれば、下を見ない限り、怖くて身体が動かなくなったりはしない。1歩踏み出すごとに、自信が強まり、いちばん上まで登り続けられる可能性が高まっていく。これが、「目標を小さく刻む力」だ。

はしごの概念そのものは単純だし、ありふれている。だが、それを効果的に実践するのは、思っているよりもはるかに難しい。「大きな目標に到達するには、小さなステップを1つずつ乗り越えていくことが大切」と頭では理解していても、その“小さな”ステップが、実際には大きすぎるケースがほとんどだからだ。

これには理由がある。小さなステップを計画するのは、楽しくないのだ。誰でも、大きな夢を描くほうが楽しい。「来月に参列する結婚式までに5キロやせる」と「今日ジムに行く」のどちらの考えを浮かべることが、ワクワクした気持ちになるだろうか?

今日ジムでトレーニングをしている自分より、結婚式に参列している5キロやせた自分を想像するほうが、気分が高まるはずだ。今日ジムに行っても見違えるほどスリムになるわけではない。それよりも、結婚式場にスッキリした体型で登場し、驚いた知人たちが口をあんぐりと開けている様子を想像するほうが興奮する。

だからこそ、人は「100ポンドやせる方法」「100万ドル稼ぐ方法」「100万回ダウンロードを達成する方法」をうたう書籍やセミナーが好きなのだ。大きな夢を描くことは楽しい。実際、夢には人を行動に向かわせる力がある。

だが、遠い将来の大きな夢のことばかりを考えていると逆効果が生じる。夢を実現できそうな未来があまりにも遠くにあるので、気持ちがくじけ、実現する前に途中で諦めてしまうのだ。

大きな夢の実現に情熱を抱きつつ、小さなステップを現実的に計画するにはどうすればよいのだろう? その答えは、「夢」「目標」「ステップ」の違いと、それが心に及ぼす影響を理解することにある。まずは、“小さい”という概念に注目してみるところから始めよう。

どれくらい小さければ、“小さい”のか

私たちは、「自分は小さなステップで目標を目指している」と考えている。だが、実際にはそのステップは十分に小さくはないことが多い。“小さい”という概念は主観的なものだ。身の回りにいる5人に、ある物事を達成するために必要なステップをすべて挙げてもらえば、それぞれのステップの大きさは異なっているはずだ。

目標達成のためのステップを計画したが、それが十分に小さくないというケースは多い。そこで私は、誰でも簡単にステップを十分に小さくできる、「はしごモデル」を開発した。これは「ステップ」「目標」「夢」の3つの要素から成っている。

ステップの大きさは、夢と目標のどちらを意識しているかによって変わる。夢は目標よりも大きく、一般的には達成に3カ月以上かかる、初挑戦のものが対象になる。

例えば、アプリ開発者にとっての念願である100万回ダウンロードだ。夢を持ち、折に触れて思い出すのは意欲を保つために重要だ。だが、夢ばかり考えていると、逆に達成を諦めやすくなってしまう。何かを達成したければ、夢ではなく目標に集中すべきなのだ。

目標は夢を達成するための中間的な計画で、短期的なものと長期的なものがある。長期目標は、通常は達成に1カ月から3カ月かかる(「外国語の基礎を学ぶ」など)。3カ月以上かかるものにしてもよいが、その場合は過去に達成したことがあるものだけにする。そうでなければ、それは夢である。

例えば、100万回ダウンロードはアプリ開発者にとっての夢だが、過去にほかのアプリでそれを達成したことのある起業家にとっては、長期目標にすぎない。もう一度達成することは現実的なものとして捉えやすいので、それは夢ではなく目標になる。短期目標は、1週間から1カ月で達成できるものにする。

目標は、夢よりも数値化しやすい。「有名なロック・スターになりたい」(夢)よりも、「CDを1000枚売りたい」(目標)のほうが、はるかに定量的だ。

最後はステップだ。これは通常、1週間未満で達成できるものにする。ステップは、目標の達成に向けて途中でチェックする小さなタスクだ。「マドリードのタパス・レストランで、メニューを正しく発音して注文する」という目標を達成するためには、「スペイン語の入門書を買うこと」が1つ目のステップになる。

小説の第1章を書くという目標では、「明日のスケジュール表に執筆の時間を書き込む」ことを1つ目のステップにしてもいい。

1週間の短期目標が効果的

おすすめなのは、1週間程度で達成できる短期目標を立て、その実現のために2日未満のステップを計画することだ。例えば私たちの研究室では、学生とスタッフは毎週末のミーティングで、次週の目標を計画し、それを達成するためにどのようなステップをとるべきかを話し合う。

ロック・スターを夢見る少女は、「お気に入りの曲を週末までに演奏できるようになる」を短期目標に、「曲を選ぶ」「楽譜を手に入れる」「スケジュール帳に練習する時間を書き込む」「練習する」「通しで演奏する時間を金曜日につくる」「実行する」などをステップにできる。

重要なのは、「目標」に注目することだ。マインドセットを軌道修正し、小さく具体的な目標に集中することで、「目標を小さく刻む力」を正しく使おう。実践するのは、最初は難しいと感じるかもしれない。目標やステップの達成に必要な期間を適切に見積もるのは簡単ではないからだ。

そこで、周りにいる信頼できる人(3人程度が望ましい)の力を借りてみよう。自分が「目標」だと思っているものが、他人にとってもそう思えるものなのか、意見を尋ねてみよう。「3カ月以内で達成するのは難しいのでは?」と言われたのなら、それは目標ではなく夢なのかもしれない。

モチベーションを高めるために、心の奥に夢を抱いておくことは大切だ。だが、エネルギーを投じるべきは、達成に1週間から1カ月かかる短期目標と、その実現のための小さなステップを計画し、実行することだ。

はしごのように「目標を小さく刻む力」が効果的な理由はいくつもあるが、最もシンプルなのは、段階的に目標を達成しやすくすることだ。例えばフルマラソンを走るとする。数カ月前から開始する日々の練習は、小さなステップに例えられる。

マラソンに初挑戦した私の友人は、一切練習をしなかった。根性さえあれば、練習なしでも42.195キロを完走できると考えたのだ。友人にとって、フルマラソンの完走は「目標」ではなく「夢」だった。レース当日、序盤こそ調子がよかったが、30キロ付近で体力が尽きて失速し、途中棄権した。「もうマラソンはこりごりだ、死ぬまで走らない」と言っている。

練習せずに成功する人もいる。だが失敗したら、もう二度とマラソンなど走りたいと思わなくなるだろう。もし友人がぶっつけ本番方式ではなく、目標を小さく刻んでいたら、「無理なく走れる距離を5キロずつ増やす」といった短期目標を設定し、その実現のために「スムーズに呼吸する」といったステップを達成しながら、徐々に走力を高められたはずだ。走る距離も、5キロ、10キロ、15キロ、20キロと延ばしていけただろう。

人は近い将来の小さな報酬に惹かれやすい

神経科学でも、「目標を小さく刻む力」が継続力を高めることを、脳が報酬に反応する仕組みに基づいて説明している。ある種の行動(「チョコレートを食べる」「お金を稼ぐ」「セックスをする」など)によって、脳内から快感を誘発する脳内化学物質であるドーパミンが分泌されると、人は再びそれを味わおうとして行動を繰り返すようになるのだ。興味深いのは、脳が報酬を絶対的なものではなく、相対的なものとして捉えていることだ。

具体的に説明しよう。「ドーパミンの分泌量は、報酬そのものの大きさではなく、期待値に対する大きさに応じて増える」ことを明らかにした神経科学の研究がある。被験者の脳内を調べたところ、ドーパミンは「小~中規模の報酬を期待し、中規模の報酬を得たとき」には分泌されたが、「中~大規模な報酬を期待し、中規模の報酬を得たとき」には分泌されていなかった。

例えば、ある男性が1~5ドルが手に入ると期待しているときに5ドルを得ればドーパミンが分泌されるが、5~25ドルが手に入ることを期待していたときに5ドルを得ても分泌されない。どちらの場合も5ドルを得たが、期待値が違った。報酬が期待値を上回ると脳からドーパミンが分泌され、下回ると分泌されないのだ。

つまり、人の気分は実際に達成したことではなく、達成しようとしていたことに応じて変わる。例えば、新しくオープンしたスポーツジムの営業担当者が、「月末までに新規会員100人」という目標を立てたとする。

この時点ではこの数字は「夢」かもしれない。だが、「週末までに10人」という短期目標を立ててそれを実現すれば、「月末までに100人」と同じくらいの達成感を味わえる。

翌週に「週末までに20人」という短期目標を立ててそれを実現すれば、ドーパミンが分泌されて気分がよくなり、さらに多くの会員を獲得し続けたいと思うようになる。「年末までに1000人」という大きな夢を持つだけの場合よりも、1日、1週間といった短期間のサイクルでドーパミンの快感を味わえる。やがては、夢を実現できる確率も高まるのだ。

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提供元:「夢に向かって頑張る」が科学的にアウトな理由|東洋経済オンライン

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