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2019.02.15

アラフィフ男性は専業主婦の妻に稼いでもらえ |主婦が年収100万円以上稼ぐのは本当に損か


アラフィフ男性は「専業主婦」の妻に、そろそろ外で働いてもらったほうがいい。その理由とは? (写真:プラナ/PIXTA)

アラフィフ男性は「専業主婦」の妻に、そろそろ外で働いてもらったほうがいい。その理由とは? (写真:プラナ/PIXTA)

「漠然とした不安を抱えつつも、今までは子供の学校のお金や住宅ローンのことで頭がいっぱいで、老後について具体的に考えられませんでした。でも、さすがに50代になると、そうも言っていられなくて……」

これは筆者のところにお金の相談のために訪れたご夫婦の率直な言葉です。このように50歳を過ぎてから「老後の対策に着手しなければ」と相談に訪れる方は、年々増えています。とはいえ、このご夫婦は「慣れない資産運用にいきなり手を出して失敗したら元も子もない」と、まずはある程度知識を入れてからということでした。

そこで「自分たちの老後にお金がいくら必要で、このままだといくら不足するのか」を確認するために、まずはほぼ準備できているお金、すなわち「ご主人の会社の退職金」と「公的年金の金額」から確認することにしました。

55歳前後が老後を考えるターニングポイントになる

ご夫婦が持ってきた会社の退職金に関する書類は、ご主人が会社で受けたライフプランセミナーで取得したものでした。勤め先では55歳になると、役職定年があり年収が20%下がります。退職金は一時金と企業年金の複合型で複雑なこともあり、55歳前の人を対象とした研修があるというわけです。「退職後の生活をしっかり考えなければ」と思ったきっかけも、このセミナーだったそうです。

公的年金の情報は、「ねんきん定期便」で確認します。現在54歳のご主人のねんきん定期便に記載されている内容は、役職定年前の給与額が60歳までもらえることを前提に計算されているので、役職定年での年収減を踏まえて、こちらで再計算しました。

最近ご主人の知り合いが健康を害し、苦労をしていると聞き、「65歳まで年金がないのだから、定年後も少しは働かなければと思っていましたが、ゆとりある老後を過ごすには、計画的にしっかりと『働くこと』の重要性をひしひしと感じます」と語るご主人は、「自分1人が働き続けて」家計を維持することに不安を感じているようでした。

そうこうしているうちに、いつしか話題は、奥様へと移りました。2人のお子さんの養育のために専業主婦をしてきた奥様は、2年前から近所の学習塾で採点などのパートをしているそうです。

ご主人曰(いわ)く、「子供の教育にとても熱心だった妻は、今ではパート先でも頼りにされているようで、社員にならないかと言われているんです。なんか僕より期待されている人材って感じですよ」と誇らしげです。奥様も子供に勉強を教える仕事にやりがいを感じているとのことでしたが、同時に「夫の扶養から外れることのデメリットのほうが大きいのでは」と、二の足を踏んでいました。

実際、最近は「いつまでもパートのままでいるのがいいのか、否か」と、同年代の主婦の間でも話題になることが多いそうです。結局は「扶養のまま」という結論になるそうで、今回は奥様に「本当のところはどうなのか?」と質問されました。

簡単に言うと、もし年収100万円なら、税金を支払う必要がありません。給与所得控除が65万円、基礎控除が38万円なので、課税所得が0円となり所得税がかからないからです。また、社会保険加入も不要ですから、当然社会保険料の負担もありません。

奥様は過去25年間、第3号被保険者でした。夫の扶養になっているこの間、自ら保険料を払わずに老齢年金を増やすことができます。国民年金から支給される老齢基礎年金は、1年加入することにより約2万円の終身年金となりますから、この間で約束された老齢年金は約50万円です。ご主人と同い年の奥様が、60歳まで今まで通りパートを続ければ、保険料免除のまま、6年間で約12万円の終身年金が自動的に付加されます。

筆者が「実は奥様の保険料は、ご主人が負担しているのではなく、第2号被保険者(会社員、公務員)全体で負担しているんです」とお伝えすると、少しけげんそうな顔をされました。扶養されている妻が免除されている額は、国民年金保険料月1万6340円(平成30年度)に相当します。過去25年分だと約500万円にもなります。

保険料を払っても、払わなくても同額の終身年金を得られるのですから、「やっぱり扶養のままのほうが、絶対得ですね」という奥様の感想はとても素直なものでした。

主婦が正社員になったら「夫婦では損」なのか?

では、例えば、月20万円、年収にして240万円で正社員となった場合はどうでしょうか。年収が130万円を超えると、社会保険に加入します。健康保険、介護保険、雇用保険、年金の保険料は、給与の約15%ですから36万円です。給与所得控除90万円、基礎控除38万円を合わせて年収から差し引くと、課税所得は76万円となり、支払うべき所得税は3万8000円です。

妻の働き方は、夫の税金にも影響します。妻の年収が100万円だと、夫が受けられる配偶者控除は38万円ですが、年収が240万円だとその恩恵が受けられません。ご主人の場合、負担すべき所得税率は20%ですから、7万6000円の増税となります。

「配偶者控除がなくなる」「夫が増税になる」という話が先に立ちそうですが、よく考えてみてください。つまり、妻が正社員として働くことにより、家計全体では240万円-140万円-7.6万円となり、ネットでは約92万円のプラスになる、ということです。

もちろん収入が100万円から240万円と倍以上になっても、実際に家計に入ってくるお金が2倍になるわけではありません。しかし、今の職場が気に入り、やりがいを感じている奥様にとっては、100万円近くの資金が手もとで増えるのであれば、悪くはないのかなということです。

それだけではありません。当然、健康保険の被保険者になれば、傷病手当金もつきます。厚生年金への加入によって、65歳以降の老齢厚生年金も加算されていきます。60歳までの6年間の加入による老齢厚生年金の加算額は、約8万円です。今後、給与が増えたり勤続年数が延びれば、さらに年金額が増えていきます。

「年金って、自分が働くことで増やせるんですね」とおっしゃる奥様に、「そうなんです! 年金はもらうものではなく、作るものなんです」とお伝えしました。ご主人は「『もらう』と思えば、扶養のまま保険料を払わずにもらったほうが得だと思いますが、『作る』となると考え方が変わりますね」と、どこかふっきれた様子です。

「扶養の範囲」に固執しないほうが豊かになる

確かに、会社員の扶養の妻は、税金も社会保険も優遇されています。しかし、それは育児や介護などの事情で働けない環境にいる人のために主に設けられている仕組みであり、最低保障なのです。

したがって、働ける環境にあるのであれば、「扶養の範囲」に固執することなく働いたほうが、経済的には豊かになります。どちらか一方が、長く働いて老後の家計を支えると考えるよりも、夫婦2人で、今できることを最大限実行しようと行動したほうが、健全な思考も保てるでしょう。

余裕資金が作れたら、iDeCo(個人型確定拠出年金)やNISA(少額投資非課税制度)といった、資産形成の税制優遇の仕組みにも取り組みやすくなります。さらに、将来にわたってお金の状態がみえてくると、必要以上に万が一の備えにお金を配分することもなくなり、お金の有効活用も可能になります。

帰り際、「これまで子育てを一生懸命頑張ってくれた妻は、実は社会に出ても能力を発揮できるとずっと思っていたんです。何より、彼女が働くことに楽しさを見いだすことができるのなら、お金以上にいいことだと思います。これからは仕事帰りに待ち合わせをして、食事に行ったりもしたいですね」というご主人の言葉に、奥様もほほ笑んでいたのが印象的でした。

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提供元:アラフィフ男性は専業主婦の妻に稼いでもらえ|東洋経済オンライン

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