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2019.01.25

太る原因は「食べ過ぎ」に限らないという新説|食べ過ぎや運動不足より影響が大きい「遺伝」


肥満の原因は何でしょうか(写真:Vadym Petrochenko/PIXTA)

肥満の原因は何でしょうか(写真:Vadym Petrochenko/PIXTA)

肥満になる年齢がどんどん下がっていることをご存じでしょうか? 22年間にわたって行われた研究によると、肥満はどの年齢層の子どもにも増えており、ゼロカ月から6カ月の赤ちゃんにもその傾向が見られたとのことです。

ゼロカ月で太っているという現象から、「遺伝は、食べ過ぎや運度不足以上に体重に及ぼす影響が大きい」と語るのは、『トロント最高の医師が教える 世界最新の太らないカラダ』の著者ジェイソン・ファン氏。増える子どもの肥満から、「遺伝はどれくらい体重に影響するのか」、その真相に迫ります。

『トロント最高の医師が教える 世界最新の太らないカラダ』 ※外部サイトに遷移します

成人後、17倍太りやすい

「子どもの頃に肥満だった人は、寿命が短い傾向にある」という研究報告があります。それほど、子ども時代の肥満は危険なのですが、関連して取り上げられるのが「肥満は、氏か育ちか」という問題です。

肥満の子にはたいてい肥満の兄弟がいます。そして、肥満の子どもは肥満の大人になり、肥満の大人は肥満の子どもを持つ傾向が高い。これは、否定しようがない事実です。子どもの頃に太っていた人が、大人になって太る確率は、そうでない人の17倍以上とされています。しかし、これが「遺伝的なもの」なのか、「生活環境によるもの」なのかは、長年謎でした。

確かに、家族は同じ環境下で暮らします。同じものを同じ頻度で同じように食べ、車を共有したりするなど、「食べる量が増え、運動量が減ったことが原因=環境説」が優位でした。しかし、近年では、「環境の影響は小さい」という研究結果が出ています。

肥満研究の権威・アルバート・J・スタンカード博士が「養子を迎え入れた家族」を対象に調査を行いました。デンマークで養子になった540人をピックアップし、それぞれ“生みの親”と“育ての親”と体重の比較を行ったのです。もし、肥満に最も影響を与えるのが環境だとすれば、養子は養父母に似るはずで、逆に遺伝的要素が最も強いのであれば、彼らは生みの親に似るはずです。

結果、養父母と養子の体重に、相関関係はまったく見られませんでした。養父母がやせていても太っていても、養子の体重に違いがなかったのです。一方、養子を生みの親と比較したところ、双方の体重にはっきりと一貫した相関関係が見られました。生みの親は育児にまったく関与していないにもかかわらず、肥満の傾向が実の子に受け継がれていたのです。太っている両親の子どもを、やせている家庭で育てたケースでも、子どもはやはり肥満になりました。

また、「別々の環境で育てられた一卵性の双子研究」もこの結果を支持しています。一卵性の双子の遺伝物質は100%同じで、二卵性の双子の場合は25%同じ遺伝物質を持っています。

スタンカード博士が「別々に育てられた一卵性・二卵性の双子」と「一緒に育てられた一卵性・二卵性の双子」について調査したところ、別々の環境で育てられた一卵性の双子は環境の差異にかかわらず、似たような体型になったのです。そして、「肥満を決定づける要因の約70%が遺伝によるもの」という結果が導き出されました。

この結果はあなたの体重が増えやすい原因の70%は血筋によるものということを意味します。肥満は、圧倒的に遺伝の影響が大きいのです。

母親の体重増加に関連?

肥満は遺伝が7割とはいえ、過食を促したり、脂肪を蓄積させたりする「太らせる遺伝子」が存在するわけではありません。

そもそも肥満というのは、糖や脂肪を体内にため込ませる働きのある「インスリン」というホルモンが原因で起こります。なかでも、精製された炭水化物や糖、人工甘味料を摂取すると多量のインスリンが分泌され、脂肪と糖が体にたまり、BMIや胴回りが大きくなっていく、という仕組みです。

インスリンは大人の肥満だけでなく、子どもの肥満も引き起こします。では、なぜ幼児のインスリン値は高くなるのでしょうか? ハーバード・メディカルスクールのデイヴィッド・ラドウィグ教授が、51万3501人の母親とその子ども116万4750人の体重に関連性があるかどうかを調査しました。その結果、妊娠中の母親の体重の増加は、新生児の体重増加と強い関連性があることが判明したのです。

胎児は母親の血液から栄養を取り込むため、インスリン過多などのホルモンバランスの乱れが、胎盤を通じて自動的に、そして直接的に、成長途中の胎児に伝わります。そして、それが体質となって受け継がれていくのです。

この遺伝の影響は強く、従来の「カロリーを制限して運動量を増やす」というダイエット法では太刀打ちできないことが判明しています。ジョンズホプキンス大学公衆衛生大学院が、41校1704人の児童を対象に肥満予防の特別プログラムを行った調査を見てみましょう。

肥満と糖尿病のリスクを抱える子どもには、学校のカフェテリアで朝食と昼食を提供し、低脂質の食事についての教育を行いました。また、授業の合間に運動をする特別な時間を設けたり、体育の授業を増やしたりして学校での身体活動を活発にしました。

しかし、生徒たちの体重の変化はゼロ。運動もカロリー制限も、体重にはまったく影響がなかったのです。その後、同様の大規模調査がいくつか行われましたが、いずれも体重に変化は見られず、体脂肪率に至っては「28%から32.2%に増加した」という報告も出るほどでした。

では、この遺伝傾向に対して打つ手はないのでしょうか? 逆説的ですが、「遺伝が7割」なのであれば、「残りの3割は私たちが自分でコントロールできる」ということになります。

この3割を最大限に活用するにはどうすればよいか――そのヒントが得られる「太った子どもたちが、遺伝傾向に打ち勝ってやせた」プログラムをご紹介しましょう。

甘い飲み物を減らしたら…

オーストラリアのロンプ&チョンプ社が2004年から4年間、ゼロ〜5歳までの約1万2000人の子どもを対象に実施したプログラムがあります。このプログラムで掲げられた目標は2つ。

(1).「糖分が多く含まれている飲み物」を減らす
(2).「エネルギー密度の高い間食」を減らす

甘い飲み物には砂糖が大量に含まれており、また飲み物という性質上、吸収しやすく、血糖値が上がりやすい特徴があります。また、間食によく食べられるクッキーやクラッカーなどは、精製された炭水化物を多く含んでいます。ゆえに、上記2つを実践して糖分と精製された炭水化物の摂取量を減らせば、インスリンが減ることになります。

このプログラムでは、袋詰めのスナック菓子やフルーツジュースが1日約2分の1カップに減らされました。すると、2歳から3歳半の実験群の子どもたちは、プログラム対象外の子どもたちと比べて、はるかに健康的な体重に近づき、肥満率は2~3%にまで減少したのです。

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イギリスの南西部では、6つの学校で「炭酸飲料を飲むのをやめよう」というキャンペーンが行われました。目標はただ1つ、「7歳から11歳の子どもが飲む炭酸飲料を減らす」というものです。

このキャンペーンのおかげで、1日の炭酸飲料消費量は150ml減り、肥満率も有意に減少しました。対して、いつもどおりの生活を送った子どもたちは、最大7.5%も肥満率が増えていたとのこと。「加糖された飲み物」を減らすことには、確かな肥満予防効果があるということにほかなりません。

確かに肥満の7割は遺伝で、母親が太っていると子どもは有意に太りやすいというのは事実です。とはいえ手を打たなければ、大人になっても太りやすい体質は変わらず、とくに心臓血管系の疾病リスクが上がります。

しかし、残りの30%は自分たちの手でコントロールでき、事実、子どもの頃に太っていても、大人になったときに通常の体重になれば、これまで太っていた時期がない人と同程度の寿命を獲得することができるのです。

大人になってからでも、「加糖飲料を減らす」「間食を減らす」など、精製された炭水化物と糖分摂取を少なくできれば、遺伝に屈することなく減量を果たすことができるのです。

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提供元:太る原因は「食べ過ぎ」に限らないという新説|東洋経済オンライン

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