2019.01.07
歯を失った人が頼るインプラントの最新事情|実は50年の歴史を持つ伝統的な治療法だ
失った歯を補う最新治療を紹介します(写真:iryouchin/iStock)
ひどい虫歯や不慮の事故などが原因で、歯を抜かなければならなくなった――。
そんな事態に直面した人が、抜けた歯を補う治療法には「ブリッジ治療」「入れ歯治療」「インプラント治療」などがあります。今までは、歯を失うと前後の歯を削ってブリッジを入れる治療が一般的でしたが、歯を削ることによって、前後の歯まで悪くしてしまうことが多くありました。
一方、周りの歯に悪い影響を与えずにできるのが「インプラント治療」です。筆者は歯や口周りの情報を「ムシバラボ」というサイトで発信していますが、その中で紹介していることの1つです。
成功率の高いインプラント治療
インプラントは失った歯の代わりにチタンでできた人工物を入れ、歯の機能を回復していきます。新しい治療に思われがちですが、実はインプラント治療自体は約50年の歴史があり、現在は世界各地で行われ、成功率も非常に高く、多くの人が利用しています。
コンピューターでシミュレーションしたデータを3Dプリンタで製作した「サージカルガイド」(または「サージカルステント」と呼ばれる)(筆者提供)【2019年1月6日18時50分追記】初出時の説明に誤りがあったため、上記のように修正しました
インプラントは歯の根の代わりに人工歯根を使っているだけで、被せ物にセラミックを使えば歯と同じようにすることができます。
奥歯の場合は機能面やかむ力によって被せ物や構造を変えることがありますが、前歯はインプラントとは気付かれないようにきれいにできます。
インプラント治療は誰でも適応可能ではありません。糖尿病、高血圧、心臓疾患、歯周病などに重度に罹患している人は、診察時の容態を担当医師と診察時に相談のうえ、問題なく治療できるか、対象の疾患が落ち着くまで治療について検討するか、しっかりとかかりつけの歯科医師とご相談することをお勧めしています。
また、お口の歯周病の治療や、インプラントを予定している部位周囲の歯の根っこの先が膿んでいたりする場合は、術前に治療をすましておくことが必要です。
インプラント治療で使用するパーツは、大きく3つに分かれています。人工歯根であるインプラント、被せ物とインプラント本体をつなぐアバットメント、いちばん上にくる被せ物です。
まずは人工歯根であるインプラントです。インプラント体とは外科手術で顎の歯槽骨部分に埋め込む人工歯根のことで、生体親和性の高いチタン製でネジのような形状をしています。アバットメントとは、インプラント体と上部構造を、ネジを使って連結させるパーツです。ただ単に連結するだけでなく、かむ力や方向を補正しインプラント体の強度を助ける、上部構造を保護するといった役割を果たします。
被せ物の冠とは、義歯に当たる部分で、素材はさまざまです。大きく分けて「金属系」、生体親和性が高く金属アレルギーの心配がない「セラミック系」、生体親和性が高く強度が強い「ジルコニア系」に分けられます。また、上記の構成とは別にインプラントと土台が一緒になっているものや、土台と冠が一緒になっているものもあります。
CT撮影ができる歯科院を選ぼう
インプラントの治療は、神経や血管など生死に関わる繊細な箇所の治療です。診療前にCT撮影を行ってくれる歯科院・歯医者を選びましょう。CT撮影を通し、患者一人ひとりの口内環境に合わせて、担当の専門医に自分に適した術式について説明を受けましょう。
その際、インプラントの治療に関するシミュレーションを確認できるクリニックを選ぶことが重要です。患者の口内環境によって、最適なインプラントの太さや長さは異なります。インプラント処置をする位置などを含めて、CT画像で事前に説明を受けることができるクリニックを選ぶことが、治療したインプラントを少しでも長持ちさせる第一歩です。
最新の診断システム「ガイデットサージェリー」。3Dで手術のシュミレーションができる(筆者提供)
さらに現在では「ガイデッドサージェリー」という方法も出てきました。CTスキャンで撮影した画像データとお口の中の3Dスキャンしたデータをもとに、コンピューター上でインプラントの手術のシミュレーションをもとにした治療計画を立て、その治療計画どおりに精確に行われる手術、またはそのシステムのことを指します。
専用のコンピューターソフトを使ったシミュレーションでは、インプラントを埋め込む適切な位置や角度、深さを診断することができます。そして、そのシミュレーションのデータをもとに手術用のテンプレートを作製し、患者の歯肉に装着することで、的確な位置と角度でインプラントを埋め込むことが可能となります。 そうすることで、安心安全かつ治療時間も短くできます。
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提供元:歯を失った人が頼るインプラントの最新事情|東洋経済オンライン