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2018.12.25

平成30年間を「節約の歴史」で振り返ってみた| 主婦雑誌に携わり続けてきた著者が分析


消費税の開始、バブル崩壊、相次ぐ金融機関の破綻など、平成は経済に関わるたくさんのことがありました(写真:Nottomanv1/iStock)

消費税の開始、バブル崩壊、相次ぐ金融機関の破綻など、平成は経済に関わるたくさんのことがありました(写真:Nottomanv1/iStock)

平成の終わりがいよいよ近づいてきた。巷には「平成最後の〇〇」という言葉があふれ、この30年を振り返る企画がメディアで催されている。せっかくなので、筆者もこの機会に「平成30年間で節約はどう変わってきたか」を書いてみたい。

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筆者自身は平成元年(1989年)には雑誌編集者をしていた。最初はOL(当時の言い方)向けに、次に主婦を主な読者対象とする生活情報誌に長く携わり、その間、節約ネタや貯蓄ネタを扱ってきた。世間に目を向ければ、翌平成2年(1990年)には『すてきな奥さん』という雑誌が創刊され、一大節約ブームが起きる。

というのも、イケイケだったバブルが陰り始め、前年には3%の消費税も導入された。平成3年(1991年)には株価が急落、バブル崩壊となり、失われた20年に突入してしまう。それでもまだ預金金利は今では信じられないほど高かったし、そのうち経済も回復するだろうという期待も漂っていたように思う。まだ株はいけますとの営業マンのセールストークを覚えているからだ。

しかし、平成9年(1997年)には山一證券の自主廃業など金融機関の破綻も相次ぎ、景気先行きへの不安が日本を覆う。平成元年からの10年間は、どんどん家計も下り坂に向かう時期だったとも言える。

平成当初は手間をかける節約ブーム(1989~1998年)

本題の節約の歴史に戻ろう。平成1桁の時代はまだ昭和のにおいが残っており、主婦が手間をかけた節約ネタが多かった。例えば、浴槽の残り湯を洗濯や洗車に使い回す、米のとぎ汁で食器を洗う、コンセントはまめに抜くといったものだ。また、着古した下着は細かく切ってボロ布にしてテイッシュ代わりに使う。ラップは買わず大きさに合う皿をふた代わりに器にかぶせるなど、代用して出費を減らすというワザも多い。

さらには、街で配っているポケットティッシュや試供品は必ずもらい、できれば何度も往復する、お一人様ひとつ限りの特売品は家族で並ぶといった、人に自慢にしにくいワザも。今なお節約と聞くと顔をしかめる人がいるのは、このあたりのイメージが強いからだろう。

しかし、当時自分が関わっていた雑誌や他社のムックを見直してみると、「なるほど」と思うワザも多い。例えば、新しい洗剤を下ろす時にはボトルに使い始めの日付と、前回書いた日付から割り出した使用サイクルを書いておく。そうすると、使いすぎにブレーキがかかるし、そろそろなくなりそうなころがわかるので、うまく特売日を狙って購入できるという(まだネット通販がほとんど利用されていない時代だ)。

また、電気代が安あがりだが本体は高い蛍光灯と、本体は安いが電気代は割高な白熱灯を使い分け、長時間点灯させる必要がないトイレや玄関は白熱灯に換えるというワザも(これまたLEDがない時代の話だ)。なお、蛍光灯や照明器具はこまめに掃除しておけば明るさがキープできるという。今にも通じる話かもしれない。

家族への誕生日プレゼントにする衣服や小物は、カタログ通販の処分セール時期に来年の分を買っておくというツワモノもいる。今のようにファストファッションが隆盛でなかった時代がうかがえる。

ちなみに、家計の出費を劇的に安くした救世主である100円ショップは、平成から徐々に存在感を示し始めた。ダイソーが直営店の第1号店を出したのが平成3年(1991年)。楽天市場がスタートしたのが平成9年(1997年)。Yahoo!オークション開始が平成11年(1999年)となっている(いずれもホームページより)。なお、ファストファッションが流行語となったのは、随分下って平成21年(2009年)だ。

11年以降はデジタル節約の黎明期(1999~2008年)

次の10年間で、筆者が個人的に注目しているのは「捨てる」ブームだ。

『「捨てる!」技術』(辰巳渚氏)が平成12年(2000年)に発売される少し前から、エコブームと相まって「シンプルに暮らす」といったキーワードが雑誌にも躍り始めている。これまでのドケチ節約とは違うアプローチで、「不要なモノを持ちすぎない」「適量を買って使い切る」「手作りする」といったキーワードが主婦雑誌の誌面に躍るようになった。モノを持たないことは、買わないことであるから、形を変えた節約と言える。そこに「捨て」ブームが加わり、所有しない方が豊かな暮らしであるという流れが生まれた。

これは、平成7年(1995年)に起きた阪神・淡路大震災の影響も多分にあったと思う。当時、取材した読者から、「モノを持っても震災が起きれば壊れるだけ」という声をいくつか聞いていた。

無料で配られる試供品を集めていた時代とは空気が異なり、タダでもらえるものでもいらないものはゴミになるだけだから断る、家がすっきりしていれば掃除機をかけるのも楽だから電気代が浮く、子ども服はフリマやヤフオクに出して処分しつつ小遣い稼ぎをする。

このころは一般家庭にもPCが普及したため、インターネットを介して安くものを買うという主婦も増えてきた。それにもひと工夫し、当時のNTTの「テレホーダイ」「タイムプラス」という割引サービスを使って、ネットに接続していた主婦も。まだ参加者が少なかったインターネット懸賞で稼ぎを上げていたという成功談も載っている。

この期間は先述のPCのように、手を掛けた節約よりも節約ツールを利用した「お得ワザ」も多くなる。今では当たり前になった、ポイントカード(紙だが)や、クレジットカードを使った割引についてだ。

主婦にとって身近なのはデパートカードだったようで、たぶん一般的な国際ブランド付きカードより年会費が安かったあるいは無料だったからだと思われる。当時は、会計時にカード提示だけでつねに5%オフという驚くようなサービスも行われていたため、節約達人主婦は先に金券ショップで商品券を買っておき、カード提示の5%オフとダブルで安く買っていたと自慢している。勉強になる。

また、ガラケーを使いこなす主婦が増えてきたのもこのころだ。ドコモのiモード全盛時にはパケット代を節約する方法も語られている。「メールは半角カタカナで入力する」「絵文字ひと文字だけで要件を伝える」「画像はカラーでなくモノクロで送る」等々。「長い用件はFAXで」というのは、固定電話がまだどの家庭にも必ずあったからこそできる話だろう。

平成13年(2001年)にはSuicaが、PASUMO、nanaco、WAONは19年(2007年)からサービスが開始した。14~15年(2002~2003年)には、Tポイントや楽天スーパーポイントが、今とは異なる形ではあるが動き出している。今に続く節約ツールが産声を上げた10年間だとも言えるだろう。

節約はテクニックから思想の時代に(2009~2018年)

しかし、時代は過酷になっていく。

平成19年(2007年)のサブプライムローン不良債権化に続いて、翌年20年(2008年)にはリーマンショックが起きた。日本企業の業績は悪化、さらに為替も円高に向かってまっしぐら。その数年前から有名大卒であっても正社員になれない時代が続く。派遣切りなんて言葉も飛び交った。

デフレの空気はますます濃くなり、ファストファッションが流行語に選ばれた。給料はとんと増えず、使えるお金が限られる中、より安いものを求める消費者と、より安いものを売る企業が、今に続くデフレマインドをともに培ってしまった。

さらに、平成23年(2011年)の東日本大震災以降、「本当の豊かさとは」がしきりに語られるようになったと思う。多くのものを持つことよりも、自分が本当に満足できるものを厳選する、という意識はさらに濃くなり、『断捨離』(やましたひでこ氏)や『人生がときめく片づけの魔法』(近藤麻理恵氏)がブームになっていたこともあわせ、ものとの付き合い方が生き方を変えるというメンタリズムが定着した。

将来が不安になり、かつ給料が増えない世の中では、お金はますます重要となり、節約意識も高まる。しかし、平成の最初と大きく違うのは、特売日に買いだめをするという節約主婦は減ったことだ。100万円貯めている主婦は、普段から買いだめはせず、必要以上にストックは持たず、冷蔵庫の食材は使い切れる分だけ。洋服もクローゼットに10着程度で納めている。その分、家族レジャーはお金をかける。節約テクよりも、節約思想が尊ばれるようになった。

また、情報アンテナが高く、ITを使いこなせる者が節約勝ち組になった。例えば懸賞や商品モニターでのプチ稼ぎの場合、エントリー者が少ないほど確率が上がる原則がある。PCが一家に一台になってからはハガキよりもPCでHP経由のほうが当たりやすく、それがガラケーからの応募になり、ツイッターからの応募になり、スマホがデフォルトになってからはインスタへと移り変わっていく。それにいち早く気づいた者が達人と呼ばれるのだ。

そして、平成30年(2018年)の今、主婦雑誌に躍るのは、格安スマホ、新電気プラン、ふるさと納税でお米や牛肉ゲット、#ポイ活といったキーワードだ。主婦が子ども服を売買していたヤフオクはメルカリに代わり、カードの還元率やポイントサイト情報も節約主婦のたしなみのひとつになった。

情報収集の場は雑誌からSNSに代わり、平成当初のように自分の手を動かすのではなく、いかにお得情報をネットで効率よく集められるかという能力が、節約達人の条件になったのだ。

平成は「もの」への意識が変化した時代だった

内閣府は先ごろ、2012年12月を起点とする景気回復の長さが2017年9月時点で「いざなぎ景気」を超えたと正式に判定したとか。2012年と言えば平成24年、第2次安倍内閣がスタートした年だ。はっきり言って、「なんか、チョー景気いいよね!」という気はまったくしないし、節約志向は変わっていないと思う。

しかし、平成30年を駆け足で俯瞰(ふかん)してみて、いちばん変わったことは、ものへの意識だと再確認できた。ものを買うことが豊かだった時代は、買わないことは貧しさを意味し、節約はマイナスの行為だった。それが今では、ものの数を適正にコントロールできる人がスマートだと賛美される。同じ「買わない」でも、そこが違う。平成当初よく目にした「別のもので代用する」という言葉はとんと見当たらない。

髙かろうが安かろうが、不要なものは買わない。シェアやリユースやサブスクリプション(定額利用サービス)が当たり前に定着していき、今後はキャッシュレスツールも節約テクのひとつになっていくだろう。

節約を英語翻訳アプリにかけるとSavingとなった。しかし、これからはControlのほうがふさわしいかもしれない。Money Savingから、Money Controlへ。その転換を果たしたのが平成の30年間だったのではないだろうか。

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提供元:平成30年間を「節約の歴史」で振り返ってみた|東洋経済オンライン

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