2018.10.25
先輩上司が新人を「早期退職させない」3原則|怒らず、否定せず、こうフォローするのが最善
新入社員の離職理由で多いのが、上司や先輩などとの「人間関係」。研修や指導の仕方を間違えると、新入社員の離職につながる (写真:EKAKI / PIXTA)
10月9日、経団連から就活ルール廃止の発表があった。企業側からは、ただでさえ採用活動が難航している新卒採用をさらに難しくしてしまう、と懸念の声が上がった。確かに、現行ルールを踏襲するにしても、新ルールを作るにしても、しばらく若手人材の採用は混乱するだろう。いずれにしても、少子化の進展や企業の採用ニーズの増加から、採用難易度が高い状況は続きそうだ。
この一連の騒動を見ていて思うのだが、なぜいつも「採用」ばかりが議論の的になり、「定着」については議論に挙がらないのだろうか?
新卒入社の3割は3年以内に辞める――。厚生労働省が毎年発表しているデータを見ても、新規学卒就職者(大卒)の3年以内離職率は多少の増減はあるが、30%前後で推移している。23日には2015年3月卒業者の最新データが発表になったが、31.8%と微減にとどまっている。
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大卒の3年内離職率は30%台が続く
若手人材の「採用数」を伸ばせないのであれば、若手人材の「定着率」を高め、離職率を減少させる取り組みをもっと本腰を入れてやっても良いのでは、と感じる。
以前書いた記事(「『新入社員がすぐ辞めていく会社』の4大特徴」)で、新入社員がすぐに辞めていく会社の特徴を紹介した。この記事では、「世代間ギャップ」を根底とした教育・マネジメントのミスマッチ、ネガティブリスト型評価といった特徴を切り口に、新入社員が辞める会社を解説した。
今回は、新入社員にとっての「人間関係」の中心にいる上司・先輩という切り口から、退職に至る理由を考察したいと思う。
2つのアンケート結果を見てもらいたい。UZUZに面談に来た、20代の第二新卒・既卒者を対象にしたアンケート調査の抜粋だ。
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1つめは「入社3年以内で退職した理由」、2つめは「転職先に求める条件」である。
これら2つのグラフからわかることは、人間関係のミスマッチだ。入社3年以内で退職した理由を見ると、「人間関係が良くなかった(10.0%)」と「社風が合わなかった(13.4%)」という回答を合わせると、「人間関係」を理由に23.4%、つまり4人に1人が退職している。転職先に求める条件としては、「ワークライフバランス(15.2%)」と並び、「良好な人間関係(15.2%)」が最も多い回答となっている。
「人間関係」が大きな退職原因
もちろん、ワークライフバランスを中心とした労働時間や、仕事のミスマッチを感じて辞めている新入社員も少なからずいる。しかし、労働時間や仕事のミスマッチを減らすため、企業はさまざまな取り組みをしている。それでも、同じくらい影響のある「人間関係」に対しては、対策が遅れているように感じている。
新入社員にとっての「人間関係」というのは、何を指すのだろうか?
1000人以上の20代転職者とキャリアカウンセリングを行った結果、新入社員にとっての人間関係とは、直属の上司や先輩(教育担当)との人間関係なのだ。
それでは、どのような上司や先輩が、新入社員を退職に追い込んでいるのか、事例をいくつかご紹介していきたい。
事例1 元トッププレーヤータイプ
このタイプは、元々プレーヤーとして優秀かつ成果を出していたことから、周りからも評価され、管理職やメンター(教育担当)に抜擢されたケースが多い。
管理職やメンターとしての素養を元々持っていたり、プレーヤーとは別物として管理職やメンターを捉え、新入社員への対応を変えていたりすれば、問題はない。が、プレーヤーとして結果を出してきた自分と同じやり方や考え方を、新入社員にも強要することがこのタイプには多い。
結局、新入社員を自分と比較してしまい、粗ばかりが目に付く。そしてできていないことを指摘し続け、新入社員のモチベーションは下がり、自信も喪失してしまう。
「なぜできない?」ではモチベーションが下がる
事例2 常に上からタイプ
このタイプは、年次が上であることが偉いと言わんばかりに、常に上から目線(マウントを取る)で新入社員に接し続ける。
教育担当となった場合、新入社員は何もできないと思い込み、けなすようなコミュニケーションを取ってしまう。新入社員は、教えてもらっている立場とはいえ、気分を害さないわけがない。
また、自分が間違ったことをして、それを新入社員が指摘すると、自分の失敗をもみ消すかのように、「生意気だ」と言い返す人すらいる。これは実際にある企業の研修中に起きたケースだった。
結果として、新入社員から、「こんな人とは働きたくない」と毛嫌いされてしまう。それが直属の上司や先輩だと、そのまま退職という選択肢すら取ってしまうことがある。
事例3 放任というより放置タイプ
このタイプは、放任主義という言葉をはき違えており、何となくコミュニケーションは取っているものの、教育をしていない。業務指示をしないで新入社員に仕事をほぼ丸投げしている。
新入社員のフォローを仕事として事務的に捉えており、最低限のことはやるが、本人のキャラクターに合わせた教育や具体的な業務指示をしようとしない。そのため、新入社員も安心感を持って仕事に取り組むことができず、仕事の進みも悪くなってしまう。
その結果、自分が成長するうえでメリットがない環境だと判断し、転職活動に踏み切ってしまう。
新入社員を退職に追い込んでしまうケースを考えると、「自信・モチベーションの喪失」と「上司・先輩を嫌ってしまう」という理由がある。裏返せば、新入社員にとって自信・モチベーションが高まり、一緒に働きたいと思ってもらうことが重要だ。
では、具体的に何をすれば良いのかというと、次の3つが挙げられよう。
1. 新入社員との関係を「上下関係」でなく「協力関係」と捉える
主従関係のような間柄ではなく、お互いに補い合っていく、対等な協力関係を築く。新入社員も自分の役割を持つことができ、モチベーションを維持でき、自信もつけることができる。
2. 自分が間違っていたときは素直に謝罪する
上司・先輩だからといって、謝らなくて良いというわけではない。もしミスを犯してしまったのであれば、謝罪することで、人として軽蔑されないように振る舞う。
3. 新入社員の目標とそのためのアクションを一緒に考える
新入社員は目標もなく、目の前のことで精一杯になっていることが多い。そのため、上司や先輩が一緒に話し合って目標を設定し、達成のための具体的なアクションを決める。ときおりミーティングを開いて、進捗状況がどうなっているのかを確認し、二人三脚で目標達成を追いかけることで、強固な信頼関係を築くことができる。
「ほうれんそう」に加えて「おひたし」を意識
最後に、新入社員との人間関係をより強く、かつ好意的なものにするために、「おひたし」という言葉を紹介しよう。
これはtwitterで、Hound(Hound@3日目東 U-24)さんが書き込こんだ内容であり、ネット上で話題になった。「おひたし」とは、上司、先輩が意識すべき、次の4つのことの頭文字を取ったものだ。
お:怒らない(感情的に)
ひ:否定しない(頭ごなしに)
た:助ける(困っていることがあれば)
し:指示する(できるだけ具体的に)
新入社員は「ほうれんそう(報告・連絡・相談)」を求められる。上司や先輩も「おひたし」を意識して、新入社員が働きやすいようにフォローすることが、今後は求められるようになるだろう。直属の上司や先輩はこうしたことを意識して、新入社員と接し、早期離職を防止してもらいたい。
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提供元:先輩上司が新人を「早期退職させない」3原則|東洋経済オンライン