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2018.10.15

寝不足時の運転があまりにヤバい科学的根拠|最悪の場合、逮捕される可能性も


単なる睡眠不足でも、時間帯によってドライバーのパフォーマンスが大きく下がる(写真: プラナ/PIXTA)

単なる睡眠不足でも、時間帯によってドライバーのパフォーマンスが大きく下がる(写真: プラナ/PIXTA)

40代男女の約半数が睡眠時間が6時間未満など、近年「睡眠不足」の問題に注目が集まっている。「働き盛りともなれば、朝スッキリ目覚めないのが当たり前」「週末に寝だめしてるから大丈夫」という人もいるだろうが注意してほしい。適切な睡眠時間をとらないと、いったいどうなるのか? 睡眠医学の第一人者である秋田大学医学部教授の三島和夫氏が「日本人の睡眠不足のリスク」について解説する。

「睡眠障害」がきっかけで交通事故

私たち睡眠医療の従事者が、一様にため息を漏らしたくなるニュースが飛び込んできたのは、2018年5月のことです。「睡眠障害」で、全国初の逮捕者が出たのです。

「危険運転致傷の疑いで、東京都江戸川区の運送業の男(60)を逮捕!」

まだ記憶に新しい話題ですが、逮捕された容疑者は、2018年1月に軽ワゴン車を運転中に、睡眠障害が原因と見られる居眠りをして男性をはね、全治約6カ月の重傷を負わせています。報道によると、2014年以降、19件の交通事故を起こし、そのうち7件は人身事故とのこと。これまでに3度も免許停止処分を受けていたそうで、かなり悪質です。

刑罰のある「危険運転致傷罪」は、従来なら飲酒運転による死亡事故というイメージがありましたが、今回は「睡眠障害」が適用されたことで、医療関係者の耳目を集めました。

その背景には、昨今、危険運転による刑罰が格段に重くなり、「重度の眠気の症状を呈する睡眠障害」も処罰対象になったことがあります。容疑者は、重度の睡眠障害があると診断され、運転中にときおり意識を失うなどの自覚があったにもかかわらず治療を怠ったため、過失致傷ではなく、危険運転致傷での逮捕となったのでしょう。

「重度の眠気の症状を呈する睡眠障害」といえば、眠っている間に何度も呼吸が止まる「睡眠時無呼吸症候群」をはじめ、数多くあります。今や成人の20人に1人が罹患するとされる睡眠時無呼吸症候群は、交通事故のリスクを格段に高めることが明らかになっています。

「寝不足での運転」は事故を招きかねない

ここでもうひとつ、みなさんに知っていただきたい問題があります。それは、睡眠障害や特別な疾患がない、ごく普通の健康なドライバーでも、睡眠の状態によっては危険運転の当事者になりうるということです。単なる睡眠不足でも、時間帯によってパフォーマンスがガクンと下がるため、酒気帯び運転と同レベルのリスクを背負うことになりかねないのです。

今回の事故のケースは、決して他人事ではありません。

健康になんら問題がなくても「酔っぱらったような状態」で運転している危ない人は、私たちの身近に実はたくさんいます。特に、終電くらいの時間帯を過ぎたら要注意。覚醒レベルがガクンと下がり、ドライバーのパフォーマンスが総じて低下するため、酒気帯び運転レベルの危険運転があちこちで行われているのです。

そのことを実証する、ある有名な研究報告があります。1997年にオーストラリアの研究者らが『ネイチャー』(世界的権威のあるイギリスの科学専門誌)に発表した報告は、睡眠の意識を塗り変えるほど衝撃的な内容で、研究者の間でも話題を集めました。簡単にご紹介すると、40人の健康な被験者が2つの試験に参加しました。

ひとつ目の試験は、朝8時に起床して翌日の昼までずっと寝ずに徹夜してもらい、30分ごとに、「動く物体をどれだけ正確に追跡できるか」を測定しました。この技能テストでは、注意力や反射能力といった、運転に直結するパフォーマンスの低下レベルがわかります。

ふたつ目の試験では、やはり朝8時から30分ごとに10~15グラムのアルコール(ワインならグラス1杯、日本酒ならお猪口3~4杯程度)を飲みながら同じテストを実施し、血中アルコール濃度の上昇とパフォーマンス低下との関係を調べました。

ひとつ目の徹夜試験の結果、起床した直後からパフォーマンスは上がり続け、12時間後の夕方過ぎまでは高い状態を維持しました。意外に思うかもしれませんが、夜8時頃でも、パフォーマンスはまだ下がらなかったのです。ところが12時間を過ぎた頃から直線的にみるみる下がり始め、起床から17時間を超えると、オーストラリアの飲酒運転の基準である血中アルコール濃度0.05%かそれ以上の酩酊レベルまでどんと落ち込んでいます。

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この時間帯から体内時計が夜(休息)の時間帯に入り、神経活動が低下して覚醒力が落ちるため、一気に覚醒中にたまった疲労や眠気が顕在化するためです。つまり、7時に起床したとすれば、17時間後の夜の0時以降には、「酔っ払いレベル」になるということです。

日本では、酒気帯び運転の基準はもっと厳しく、血中アルコール濃度0.03%以上で反則点数が13点、0.05%で25点です。別の研究では、血中アルコール濃度が0.02%程度では反応時間や追跡能力が低下し、0.03%ではハンドル操作が稚拙になり、0.04%では視線の固定までが困難になると報告されています。

寝なければパフォーマンスは絶対に落ちる

怖いのは、酒を飲んでいなくても、起床から十数時間もすれば誰でも同様の異変が起こることです。

体内時計が覚醒から睡眠に移行するため、誰でもパフォーマンスが底まで落ちて、ハンドル操作さえ危うくなるほどの酩酊状態になってしまうのです。

夜間の道路は、いつ車が突っ込んできてもおかしくない状態にあるということで、想像するとぞっとしておちおち道も歩けなくなります。現代は夜勤に関わる人も多く、寝起きの時間もさまざまですから、朝昼晩、24時間ずっと気を抜けません。

ちなみに睡眠とパフォーマンスの低下の関係については、他にも興味深い研究報告があり、4時間睡眠を6日続けるとパフォーマンスは徹夜レベルまで落ちることもわかっています。

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提供元:寝不足時の運転があまりにヤバい科学的根拠|東洋経済オンライン

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