2018.09.20
一瞬でわかる説明をしたいなら「図」を使おう|「図説」は究極の時間短縮法だ
図やフローを使い視覚的に伝えることで、より簡潔に伝えやすくなる(写真:さわだゆたか/ PIXTA)
30年にわたり各キー局のバラエティ番組の企画・構成を担当し続けるベテラン放送作家の石田章洋氏が、少ない労力で「説明上手になるコツ」について解説します。
テレビの情報番組のスタジオで、視聴者に最もわかりやすく説明する方法、それはパネルやフリップなどで図を見せながら説明することです。かつてはVTRがメインだった情報番組も、最近は「パネルで見せる」形式が主流になっています。予算がかからないため始まった形式ですが、実際にやってみると、複雑なものごとの説明は、パネルやフリップで行ったほうがわかりやすいのです。
ビジネスでの説明も、図などを見せながら行ってみましょう。いまはノートパソコンやタブレット端末といった、見せるための便利なツールがあります。それらを活用して「見せる」説明をすれば、圧倒的に短く伝わります。
また、わざわざパワーポイントなどで凝った図をつくらなくても、ホワイトボードに簡単な図解を施して説明してもよいです。
作業の流れを図で説明する「フロー図」
あなたは、あるテレビ制作会社の特番担当チームに、スタッフとして参加することになりました。その最初のミーティング。プロデューサーから作業の流れや分担を、次のように口頭で説明されて、あなたは理解できるでしょうか?
【あるプロデューサーからの指示】
「今回の特番は、3月から5月までの3カ月で仕上げなければならないからな。まずは資料を集めないと。リサーチだけど、これはアシスタントディレクターのAくんとBくんでやって。3月末までに必要な資料を集めて、あとでロケも手伝ってね。それと、並行して台本もつくり始めないと。時間がないから、放送作家のCさんは、Aくんが集めた資料の中から書き始めて。4月いっぱいにはすべて書き上げてよ。あと、ディレクターのDさんは、Cさんの台本があがった分からロケに出てね。4月半ばから5月半ばまでロケして、それから編集作業に入ってね。編集マンのEくんをつけるから、ロケ中は手伝ってもらって、ロケが終わったら編集に専念してよ」
いかがでしょう。とてもではありませんが、頭の中で整理できませんよね。おそらくメモを取ることも難しいでしょう。
でも、こんなふうに図で整理してみたら、誰がいつごろ、何をするのかが、ぐっとわかりやすくなります。
【図】フローチャート(『ひと言で伝えろ』より抜粋)
こうした図は「流れ」を表すことからフロー(流れ)図と呼ばれます。
フロー図も、正式にはいろんな決まりがあるようですが、短くてわかりやすい説明の際は、ざっくりとしたもので構わないでしょう。
要素の重なりや関係性を表す「ベン図」
放送作家を約30年もやっていると、テレビ局などの放送作家教室の講師を務めることもあります。そういうときに「よい放送作家の条件」などを、参加者のみなさんに説明することがあります。
ちなみに、私の考える「よい放送作家の条件」とは「企画力」「構成力」「表現力」を、バランスよく兼ね備えていることです。これも、言葉でどうこう言うより、次のような図1にしたほうが伝わります。
【図】ベン図1(『ひと言で伝えろ』より抜粋)
これが「ベン図」と呼ばれる図形です。要素の重なりや関係性を表すときに使われます。つまり、この図の3つの○が重なり合う中心、これがよい放送作家なのです。
ベン図を使うメリットは、商品やサービスの特徴、コンセプト、本質を、わかりやすく説明できる点です。ビジネスの場においては、セールスやプレゼンする際に重宝できます。
たとえば、ファストフードにおいて3つの特徴を兼ね備えた新商品なら、下の図2のように表現できるはずです。
【図】ベン図2(『ひと言で伝えろ』より抜粋)
どのあたりに位置するかを図で表すマトリクス図
よい企画とは「新しさ」と「実現性」を兼ね備えたものです。それをベン図にすることもできますが、個別の企画をもっと明確に「どれほど新しさがあって、どれほど実現性があるのか」を示そうとするとき便利なのが、次の「マトリクス図」です。
【図】マトリクス図1(『ひと言で伝えろ』より抜粋)
マトリクス図とは、縦軸と横軸を使い、縦横に項目を配置し、重なったところに結果などを書く図のことです。この図を使うと、全体の中のどのあたりに位置するのか、わかりやく示すことができます。
先ほどの例で言えば、縦軸に「新しさ・古さ」、横軸に「実現可能性の高低」を項目として置きます。こうすると「新しくて実現性もあるいい企画」は右上になります。
たとえば、新人放送作家の企画で「斬新でおもしろいコンセプトだけど、現実味がない」ときは「あなたの企画は、このあたりに位置します」などと説明することができます。また、マトリクス図では、同じ分野の企業の特色なども比較できます。アパレル業界であれば、このような感じになります。
【図】マトリクス図2(『ひと言で伝えろ』より抜粋)
情報を視覚化するメリット
図で伝える最大のメリットは、全体像が伝えやすいことです。
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これは言葉や文字による説明では不可能なこと。また全体の中で、それぞれの要素の関係や構造、流れといった関係性も、ひと目で相手に伝わります。
さらに視覚化された情報は、相手の記憶にも残りやすいとされます。
また、伝えるほうにとっても、図にすることで要素が整理されます。ですから、情報を視覚化することを習慣化すれば、言葉や文字による説明も次第に上手になっていくはずです。
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提供元:一瞬でわかる説明をしたいなら「図」を使おう|東洋経済オンライン