2018.07.05
反抗期の子との信頼関係を生む「会話の本質」│中高生の子に「勉強しろ」が逆効果である理由
受験を経たあと、勉強をしなくなる子は多い(写真:Fast&Slow/PIXTA)
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中1の息子がいます。受験が終わり順調に学校に通っていたのですが、中間テスト後、一変して勉強をいっさいしなくなりました。原因が友達関係なのか、学校の雰囲気なのか、親子関係なのかまったくわかりません。思春期で反抗期ということもあり、親への反抗が激しく、勉強しろとも言えない状況です。どう対応すべきか、どうすれば本人の意識を変えられるか、アドバイスお願いします。期末テストの結果は想定内ではありましたが、あまりよくありませんでした。
(仮名:佐竹さん)
「勉強」に嫌悪感が発動
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筆者は過去、多くの中学生を塾講師などとして指導してきましたが、中1、特に中学受験を経たあと、このような状態になる子は意外と多いものです。
子どもから大人に変化していくこの時期、親の不安を誘発するような出来事が起こります。そうした反抗期は大抵の場合、親が思うほど長くは続かないのですが、それでも直面すると、やはり親としては心配になりますね。
また、中学生になると、おそらくそれまで中学受験で禁止されていた、スマホやゲームが解禁され、それにはまってしまったり、立て続けにやってくるLINEが面白くなったりして、まさに中学生パラダイスになります。10歳ちょっとの子が、必ずしも面白くなく、それなりにつらい中学受験の勉強を2~3年間も必死でやってきた。それなのにまたその「勉強」をやるとなると、嫌悪感が発動することがあります。
さらに、この嫌悪感たっぷりの「勉強」という言葉を使う親に対しても、同様の嫌悪感を持つ可能性があります。ですから、佐竹さんの「勉強しろとも言えない状態」というのは、むしろ幸いなことなのです。言ってしまえば、さらに状況は悪化してしまっていたでしょうから。
このような状態が続くと、一般的に多くの親は2つの方法をとってしまいます。
1つは、勉強を「強制的にやらせる」パターンです。落ちこぼれることが心配になり、塾に入れる、家庭教師をつけるといった行動をとります。しかし、親の不安や焦りが一時的に収まるという効果はありますが、本質的には何も解決していません。子どもがそれで熱心に勉強をするようになるとは限らないわけですから。
もう1つは、「当たらず障らず」のパターンです。佐竹さんのケースはこれに当てはまります。勉強について話すと反抗してくるので、手に負えない状況になり、「それなら」と、親は子を気をかけながらも当たらず障らずという手段をとります。しかし、その状態では親の不安感や焦りはますます募り、別の形で子どもに当たり散らす場合もあります(散らかっているだけで怒鳴り散らすなど)。
いずれにせよ、この2つの対応方法は場当たり的な対応であるため、決して得策ということはできないでしょう。
反抗期の子が手に負えない親がとるべき方法
そこで筆者からは「反抗期の子が手に負えない親がとるべき方法」についてお話ししたいと思います。
まずこの方法を使う前に、事前に注意しなければならないことがありますので、使用上の注意についてお話しします。
次の3つのことについて確認をお願いします。
1. 勉強についてはいっさい触れない
→現在も勉強について触れてはいないとは思いますが、気にすることもやめてください。難しいことかと思いますが、気にしても子どもは親の期待どおりには勉強をしません。
2. 勉強についての嫌味を言わない
→勉強について「やりなさい!」とは言わないものの、「随分のんびりしているのね~」とか「何かほかにやることあると思うけど」などと決して言ってはいけません。さらに少し勉強したときに「あら? 珍しく勉強しているの?」といった嫌味を言うのもやめましょう。
3. これからとるべき方法は実験であると認識する
→これからお話しする方法は、あくまでも実験であると認識してください。実験というのは、「失敗してもいい」「まずはやってみよう」という心構えを引き出します。ですから、筆者はいつも子育て・教育の方法についてお話しするときは、必ず「実験してみてください」とお伝えしています。そうすることで、気楽に、自然に実行することができ、うまくいくことが多いのです。
この3つを心得てから、いよいよ実践的方法に移ります。
子どもが自ら勉強するようになるための方法はたくさんあり、これまでも筆者はたくさんのアプローチについての記事を書いてきました。その中でも、今回お伝えする方法は、もっとも根本的な方法であり、もっとも効果がある方法です。
それは、子どもと「雑談をする」という方法です。
「え? 何? そんなこと?」と思われるかもしれませんが、実はこれには深い意味と仕組みがあるのです。
子どもが親の言うことを聞き入れる状態になるためには、その前提として子どもが「親を信頼している」ことが必要です。親は子どもから信頼されていると思っているかもしれませんが、実はそうとも言えません。
特に子どもが中学生ともなれば、自我が確立し、思春期を迎え、いわゆる反抗期という段階にあります。反抗期というのは、まさにそれまで親の命令、指示によって行動してきたことが、自我が芽生えたことによって、そのような上下関係に対する反抗とも言えるのです。
信頼関係の問題
基本的にこの信頼関係というものは、コミュニケーションの量に比例して高まると一般に言われています。中学生、高校生ともなると、子どもは親とあまり話をしなくなることが多いですよね。ということは、信頼関係が希薄になっている可能性があります。親は子どもの小さい頃の様子を知っているので、まさかそんなことはないと思うかもしれませんが、実は信頼関係に問題があるケースが少なくないのです。そして信頼関係が希薄であると、親の言うことを聞き入れることはありません。
ここで「では、子どもとコミュニケーションをとらねば」と思ったかもしれませんが、実はここに非常に重要なことがあります。それは「勉強に関する話でいくらコミュニケーションをたくさんとっても逆効果にしかならない」ということです。企業で言えば、上司部下の関係で、仕事のテーマでいくらコミュニケーションをとっても、信頼関係の構築には貢献しないということと同じことです。
なぜだと思いますか?
親子における勉強の話題、上司部下における仕事の話題は、そもそもそこに「上下関係が存在している」からなのです。親や上司がいくら、気楽に話をしていても、子どもや部下はそれを指示・命令と受け取ります。ですから、このようなテーマでは、信頼関係は築かれないのですね。
一方の「雑談」をテーマとした場合はどうでしょうか。雑談には、上下関係は存在しません。上下関係のない話題で、話をすることによって、お互いに共通のテーマができ、それをきっかけに信頼関係を築いていけるのです。信頼関係ができれば、少しずつ助言なども聞き入れるようになっていきます。
雑談内容は意味がなくてもいいのです。たとえば「親のしょうもない失敗談」や「今日食べたランチがまずかった話」や「暑さ」についてでもいいのです。それをきっかけに話が膨らんでいきます。
筆者が学習塾の講師として子どもたちを指導していたとき、どのようにして子どもたちと信頼関係を築いていったか。それは、勉強を指導している時間内ではなく、指導していない時間においてでした。つまり、授業が始まる前、休み時間、授業後、この3つの時間帯に、子どもたちと雑談をするのです。
テーマは勉強以外であれば何でもです。たとえば、いちばん簡単な話題は「部活」です。これは生徒が話しやすいのです。それ以外に、「最近学校どう?」とか「この前聞いた面白い話」などします。この時間に話をすると、授業がとてもやりやすくなるのです。これが信頼関係を築くということ、そしてその本質なのです。
ぜひ、3つの前提を心得ていただいたうえで、「雑談」をテーマとしたコミュニケーションをたくさんとってみてください。事態はきっと好転するはずです。
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提供元:反抗期の子との信頼関係を生む「会話の本質」│東洋経済オンライン