2020.03.10
【特集/現代人のための“菌活”】 生まれてから一生続く、菌とのおつきあい
----その人固有の細菌群によって構成されているという腸内フローラ。どのように私たちに作用するのでしょうか。乳酸菌飲料で知られるヤクルトの研究室で、長年製品の開発などに携わり、現在は学術広報を担当している河見浩司郎さんにお伺いしました。
この10年で飛躍的に進歩した腸内細菌研究
私たちは、生まれたときから菌との付き合いが始まっています。母親のおなかにいるときは無菌状態ですが、産道を通るときに多くの菌に触れ、生まれて外の世界に出れば空気中に漂っている菌があり、家族や病院のスタッフとの触れ合いからあっという間にさまざまな菌を受け取ることになります。
だいたい3歳ごろになるとその人固有の腸内フローラは決定すると言われています。食べ物や母親の体内の菌が子どもの腸内フローラに関係していることから、家族同士の腸内フローラは似ているのかとの質問をよく受けますが、実は、家族の腸内フローラは似ていないとする研究成果が多く報告されているんですよ。同じ食事をして、同じような生活をしていても違うのは意外ですが、その理由はこれから解明されていくでしょう。
というのも、腸内フローラについて、研究が急速に進んできたのはここ10数年のことです。以前は、ひとりの腸内フローラを解析するのには、数か月かかっていました。細菌を培養して肉眼で見える状態まで数を増やし、大腸菌がいくつ、ビフィズス菌は、と数えていたのです。今は解析装置のおかげで、これまでよりも圧倒的なスピードで腸内フローラを解析できるようになり、さまざまなことがわかってきました。
腸が若い人は、お肌も良好♪
長年、腸と美肌には関係性があると言われてきました。便秘になると吹き出物ができたり、お化粧ノリが悪いことを実感している人も多いでしょう。
以前、私たちは20代から60代の女性600人を対象に「女性に聞く『腸年齢』と健康意識に関する調査」を実施しました。調査では、国立研究開発法人 理化学研究所の辨野義己(べんのよしみ)先生が作成した24のチェック項目に基づく「腸年齢チェックシート」を使いました。その結果、腸年齢が実年齢よりも若い人は肌の悩みが少ないことや、腸年齢が若い人ほど「お肌の曲がり角を感じる年齢」が高く、腸年齢が衰えている人ほど、お肌の曲がり角を早い年齢から感じていたことがわかりました。(「腸年齢チェックシート」は最後に掲載しています。ぜひやってみてください)
このことは、「腸内環境をよくすることで、肌の状態も改善される」ことを示しているといえます。
これまで科学的に実証された研究はほとんどなく、「関係あると言われているが、よくわからない」というのが実情でしたが、腸内環境が肌の状態にも影響をしていることを科学的に立証することができました。
<腸年齢チェック項目>
●食生活
□朝はいつもあわただしく時間がない
□朝食は食べないことが多い
□食事の時間は決めていない
□野菜不足を感じる
□ 外食は週に4回以上ある
□肉が大好き
□ 牛乳や乳製品は苦手
●生活習慣
□アルコールを多く飲む
□タバコをよく吸う
□顔色が悪く、老けて見られる
□肌荒れや吹き出物が悩みのタネ
□ストレスをいつも感じる
□運動不足が気になる
□ 寝付きが悪く、寝不足
●トイレに関する項目
□トイレの時間は決まっていない
□おならがくさい、またはくさいと言われる
□息まないと出てこないことが多い
□排便後も便が残っている気がする
□便が硬くて出にくい
□コロコロとした便が出る
□ときどき便がゆるくなる
□便の色が黒っぽい
□出た便が便器の底に沈みがち
□便がくさい、またはくさいと言われる
<結果>チェックの数が
0〜4個=実年齢より若い人...腸内環境が大変良好
5〜9個=実年齢よりやや高い人...実年齢より10歳ほど高い
10〜14個=腸の老化が進行...実年齢より20歳ほど高い
15個以上=腸はもはや老人...腸年齢は実年齢を30歳以上上回っている。
----腸内環境を整えれば、肌の潤いやツヤまで期待できるとは。善玉菌である乳酸菌やビフィズス菌は積極的にとりたいですね。
河見浩司郎
株式会社ヤクルト本社 広報室 副参事
1990年入社。同社中央研究所において、乳製品の開発、改良に関わる研究や、実用に適した乳酸菌、ビフィズス菌のスクリーニングなどを行う。主な成果として、使用する脱脂粉乳によって乳酸菌、ビフィズス菌の発酵性の異なる原因の解明、耐性がより強化されたビフィズス菌や使用する脱脂粉乳によって発酵性が影響しない乳酸菌の作出などがある。
2005年、同社広報室に異動、学術広報資料の制作など、学術広報担当として従事している。
取材・文/大庭典子
イラスト/はまだなぎさ
※この記事の内容について、株式会社ワコールは監修を行っておりません。
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提供元:【特集/現代人のための“菌活”】 生まれてから一生続く、菌とのおつきあい|ワコール ボディブック