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2018.05.16

はしか感染を防ぐために知っておくべきこと|日頃の予防が肝心だが今からやれることも


はしかの予防接種を一度もしたことがない人は、速やかに予防接種を受けたほうがいいという(写真:ocsa/PIXTA)

はしかの予防接種を一度もしたことがない人は、速やかに予防接種を受けたほうがいいという(写真:ocsa/PIXTA)

海外からの旅行者が沖縄に持ち込んだ麻疹(はしか)の感染が拡大し、感染者が150人を超えている。今、知っておくべきこと、やるべきこと、やってはいけないこととは――。

沖縄を発端としたはしかの感染は、「大火事になっているのではなくて、言うなればまだ”ボヤ”です」と語るのは、感染症対策の専門家として知られる川崎市健康安全研究所の岡部信彦所長だ。世界保健機関(WHO)や国立感染症研究所などで約30年にわたり感染症対策に携わってきたエキスパートである。

「はしかワクチンの定期接種は2006年、MRワクチン(麻しん・風しん混合ワクチン)による2回の接種に変更され、1歳児と小学校入学1年前の間に行うことになっています。今の子供たちの95%前後は免疫(抗体)を持っています。ですから、以前のような何万人も患者が発生するというような流行にはなりにくいでしょう。ただ、感染者が徐々に増えて数百人になり、やがて1000人というように増えると、亡くなる方も出てくるでしょう。放っておいて火が広がるのはまずい。やっぱりボヤの内に消さないと」

マスク、うがい・手洗いはしたほうがいい

はしかの感染力はインフルエンザなどとは比べものにならないほど強力である。マスクをしても空気感染してしまうのは有名な話だ。では、マスクの着用は意味がないのだろうか。

「そんなことはありません。もちろん、マスクでは不十分ですが、しないよりははるかにいいです。同じように、うがい・手洗いではしかの感染は防げないから、手を洗ってもまったくだめ、と解釈するのは大間違いです。手を洗うことは感染予防の基本です」(岡部所長)

医療が進んだ国では、はしかで亡くなる人はずいぶん少なくなる。しかし、免疫がない人がはしかにかかると重症化しやすい。岡部所長は「はしかはそれ自体だけでなく、合併症の心配もある」と指摘する。

はしかから肺炎を起こしたり、角膜炎になり失明したりすることもあれば、中耳炎を起こして難聴になる場合もあるという。はしかウイルスに効く有効な薬はないので、やはり予防が大切になる。

はしかにかかった後は体の免疫力も全体的に低くなるので、ほかの病気にもかかりやすい状態になっているという。

「はしかが治ってからも免疫力がストンと落ちた状態が続き、回復には1カ月程度かかることもあります。いわば、はしかという強力な病気に対して自分の力を使い切ってしまうのです。以前ははしかから、治りかけた子どもが結核を発症したり、その後に風邪をこじらせて具合が悪くなったりする、というようなことがよくありました」(岡部所長)

はしかウイルスと闘った体の免疫が回復するには、それなりの時間がかかることを覚えておきたい。しばらく無理は禁物だ。

はしかウイルスが脳を侵す病気に注意

完全に治ったと思っていたはしかが原因で、寝たきりとなり死に至るケースもある。

亜急性硬化性全脳炎(SSPE)と呼ばれる病気は、はしかのウイルスが何らかの理由でその後も脳に潜み続け、何年も経て脳に炎症を起こす。

はしかが治って元気に過ごしていた子どもが、その5~10年後、異常な行動やけいれん、やがて意識障害などに発展する。しかし、有効な治療方法は今もない。

SSPEははしか患者数万人に1人程度と発症数は少ないが、少し前まで日本では年に5~10人程度の発症があった。発症すると、100%死に至るという恐ろしい病である。

SSPEの初期症状としては、普通に元気に生活していた子どもに、動きがおかしい、転びやすい、記憶力が低下したなどの様子が見られる。「ピアノの鍵盤がうまくたたけない」「成績が下がる」といったことがきっかけで見つかった例もある。症状の表れ方はまちまちで、初期の診断は難しく、治療法も確立されていないという。

予防にはやっぱりワクチン

はしかから身を守るためにはどうすればいいのか。やはり、ワクチンを受けるのがいちばんである。

「はしかにかからないようにするためには、予防接種を受けるしかありません。自ら行動を起こしてください」(岡部所長)

はしかにかかったことがなく、一度もはしかのワクチンを受けたことがない人は、早めにワクチンを接種したほうがいい。はしかにかからなければ、はしかによる脳炎にも、肺炎にも、中耳炎にも、角膜炎にも、SSPEになることもない。1回接種している人は、今の状況が落ち着いてからでもいいので、もう一度ワクチンを接種したほうがいいという。

「しかし今、1回接種の人や心配性の2回接種の人が急に詰めかけては、最も必要とされる0回接種の人、最も守るべき子どもたちにワクチンが行き渡らなくなるおそれがあります」と岡部所長は注意を促す。

子どもに予防接種を受けさせることも大切だ。まだ小さい子どもたちは、自分で予防接種に行けない。

「以前、大学生の息子がはしかにかかった後に脳炎を起こし、重い障害が残ったというような事例がありましたが、子どものとき、定期のワクチン接種を受けていませんでした。その親御さんが『自分は親としての義務を果たしていなかった』と語っていました」(岡部所長)

1回はしかの予防接種をしていても、はしかにかかることはありうるが、症状は格段に軽くなる。2回接種を受けているにもかかわらず、熱が出る人もまれにいるが、症状は軽く、ほかの人にうつすこともほとんどない。

何か起きてから過去を悔やんでも始まらない。子どもを定期接種の時期にきちんと受けさせておく。これは親の務めと心しておきたい。

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提供元:はしか感染を防ぐために知っておくべきこと|日頃の予防が肝心だが今からやれることも|東洋経済オンライン

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