2018.04.19
子どもを叱り続ける人が知らない「第6原則」|「勉強のできる子」こそ見誤りやすい
反抗期真っ只中、成績は下がる一方です(写真: nonpii / PIXTA)
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中高一貫に通う、思春期、反抗期真っ只中の男子の母です。昨年の春から、とくに反抗がひどくなりました。いつも私とケンカになり、思いどおりにならないと家を出たり、暴言暴力が出ます。学校の成績は平均以下となり、当初よりかなり下がりました。
本人は、まったく気にせず、冬休みは毎日DS、テレビ、マンガ三昧でした。学校にも何度も何度も呼び出され、教頭に指導されています。が、本人には響いていないようです。本人は、将来の夢はない、何だっていい、大学には入らなくてもいい、そのときに考えればいいと言います。何のために中高一貫校に行ったのか、高校受験がなくてよかったという程度に思っているのか。このままゲーム三昧、無気力のまま生きていきそうで心配です。
(仮名:柴田さん)
反抗期だけが理由とも思えない
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かなり深刻な状態になってしまっているようですね。親としてもどう対応していいか不安な毎日でしょう。思春期、反抗期真っ只中とのことですが、確かにそれもあると思いますが、単純にそれが理由とも思えません。今の状態では、いくら説教しようが、いくら叱り、怒ろうが、解決することはないでしょう。原因が何なのか、それがわからないと対応のしようがありませんから、まずは原因を考えてみましょう。
「子どもを叱り続ける」ということで日々“格闘”しているご家庭は少なくありません。“格闘”になってしまっている原因は、いくつかに分類されます。それを筆者は「子どもを叱り続ける人が知らない『5つの原則』」と呼んで、講演会などでもよくお話ししています。
【第1原則】―自分とまったく同じ価値観の人はいない
【第2原則】―強制されたことは、やらないか、やったとしても面従腹背となる
【第3原則】―人間には最低3つの長所がある
【第4原則】―親の成長は止まっているが、子どもは成長している
【第5原則】―「怒る、叱る、諭す」の3つを使い分ける
この5つの原則は書籍でも書いたことがあるのですが、実は、この5つ以外に、もう1つあり、それを「第6の原則」と呼んでいます。第6の原則は非常に表現することが難しく、日ごろ割愛していますが、実は柴田さんのケースは、まさにその第6の原則が当てはまるように思います。
第6の原則とは何か。それは次のことです。
【第6の原則】― 子どもの精神年齢と実年齢は異なる
「精神年齢<実年齢」のケースもあれば、「精神年齢>実年齢」のケースもあります。これまで筆者が直接指導してきた3500人以上の小中高生はそれこそ、多種多様で、精神年齢と実年齢が一致しているほうが稀なぐらいでした。
「精神年齢」とはさまざまな定義があるでしょうが、この場合、「実際の年齢」に比べての精神的な幼さを指しています。そしてその幼さがいちばんよく表れるのは、「年齢相当の話が通じない」ことと「先を見通して行動できない」の2つです。
話がまったく伝わっていないケース
話がまったく伝わっていないケース
「精神年齢<実年齢」のケースとして、先日こんな話を聞きました。
スマホばかりに熱中し、四六時中スマホをいじる中高一貫の私立学校に通う中学1年生。夜も決められた時間を守れずにズルズルの状態です。そこで、夜の決められた時間が守れない点を親が説教しました。
親:「今後どうしたらいいと思う?」
子:「お小遣いなしでいい」
親:「え? 全然意味違うよね。今、話しているのは、夜にずっとスマホばかりに熱中するから、どうしたらいいかを聞いているんだけど」
子:「じゃ、勉強中の休み時間をなくす」
勉強中に休み時間があるとスマホをやるから、休憩時間をなくせば解決すると考えて発言したらしいのですが、今の話題とはまったく異なることは明白です。つまり、この子には、話がまったく伝わっていないのです。何度もわかりやすく話をしてもわかってくれないため、「大丈夫でしょうか?」という相談だったのです。
この例は、子どもの精神年齢の低さを表した典型的な例なのです。もちろん、発信する側の表現の問題ということもあるかもしれませんが、それとは異なり、わかりやすく話をしているのに、話が全然伝わっていないということは頻繁に起こります。さらにゲームやスマホばかりにハマる子は、「先を見通して行動できない」典型例でもあります。
もちろん、怒られたり、叱られたりしているときは、子どもは、叱っている親の感情だけを受け取り、話の内容が頭に入っていかないことが、往々にしてあります。しかし、それとは異なり、子どもの実年齢ほどの理解力がない、ということにこの根本原因があると考えられるのです。
相手は、中1だから、体も大きくなっていると、その外見による判断のみで、精神的側面も成長しているはずだという錯覚が親にあるため、大人と思って話をしてしまいます。「もう中学生なんだから……」という言葉はそれを物語っています。しかし、相手は親が思っているほど大人ではなく、まだまだ子どもであることが多いのです。そうすると叱り続けるという現象が起こります。
では、このようなときはどうすればいいのでしょうか?
現状の精神年齢の水準で対応する
「子どもを実年齢で判断するのではなく、現状の精神年齢の水準で対応してあげる」といいでしょう。
つまり先ほどの例で言えば、「相手は中1ではなく、小学校3年生ぐらいと思って対応する」のです。
たとえば、幼稚園児にスマホを渡して、「○○時までよ!」と言っても、大抵はいじり続けますよね。ですから、通常は親が管理します(幼児にスマホを渡してやりたい放題というケースは通常ありませんが)。自由奔放にやらせるということはしませんね。これは極端な例ですが、相手は親が思うような中1ではないのです。小学校低学年程度と思って対応するのです。
つまりその中1の子どもは、「先を考えて行動できない」という状態であり、まだ自律できる段階ではないため、まずは保護者が管理し、そして子どもの精神的成長に応じて徐々に自律できるようにスライドさせていくようにするのです。
勘違いしてはいけないことが、お子さんの精神年齢が低く、幼くてもそれはデメリットではないということです。人間、さまざまです。成長もさまざまです。大器晩成という言葉もありますし、良い悪いという問題ではないのですね。もし良い悪いという問題であれば、幼い子は皆悪い子になってしまいます。良い悪いという問題ではなく、単に成長段階の問題なのです。さらに、成長も早ければ良くて、遅ければ悪いというものでもありません。その成長の段階に合わせて対応してあげることが重要なのです。するとその子はやがて、自信を持ち、“化けて”いく可能性があります。
柴田さんの場合、お子さんはまだ小学生程度の状態で、自律できていない段階だと思ってください。受験をして中高一貫校に通っていたとしても、だからといって精神年齢が高いとか、自律できているというわけではないのです。
そのように認識したら、子どもに対してどのように対応をするでしょうか。少なくとも今のような対応は取らないことでしょう。そして、徐々に自分で自分のことをやらせるという姿勢をとって、自己管理ができるようにしていってあげてください。
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提供元:子どもを叱り続ける人が知らない「第6原則」|東洋経済オンライン