2018.03.15
仕事ができない人は一流を手本にできてない│正しい「型」を身につけなければ成果は出ない
優れた成果を出す先輩から同じやり方を学ぶのが肝要です(写真:scyther5/iStock)
平昌オリンピックで日本選手団は過去最多の13個のメダル獲得と大躍進しました。今回の冬季五輪の選手の方々をはじめ、一流と呼ばれる選手には、それぞれ独自の「型」があります。
たとえばスピードスケートの小平奈緒選手は、オランダ留学時に「怒った猫のように両肩を上げなさい」と指導された独特のフォームで、500mで金、1000mで銀と2つのメダルを手にしました。ほかには、ラグビーの五郎丸歩選手のプレースキック、野球のイチロー選手が以前に駆使していた振り子打法や、少し古いですが野茂英雄選手のトルネード投法などが、「型」のわかりやすい例でしょう。
一流選手は、こうした自分の「型」を非常に大事にします。そして素振りなどの「フォーム練習」が重要視されます。それも、何度も何度も繰り返して、まさに動きの「型」を体にしみ込ませていきます。また、プロのアスリートの方々は、一流となった現在でも、フォーム練習を欠かすことはありません。それはなぜでしょうか?
「型」は、実証されてきた成果を出すための方法論
結論から言ってしまうと、フォームとは、実践知や理論的な研究から実証された、「再現性をもって、最も成果を出せる方法論」だからです。そのフォームを反復練習して、「考えなくとも実践できる」状態にまで習熟度を上げることで、限られた時間の中で、わずかな瞬間も浪費することなくパフォーマンスを発揮しているのです。
平昌オリンピックの羽生結弦選手も、大会直前までトレーニングを積めない時期がありましたが、それまでの鍛錬のおかげで、大会ではいつもどおり、あるいはそれ以上のパフォーマンスを発揮することができました。つまり、「型」を徹底的に反復することは、どんな状況下でも成果を発揮できることにつながるのです。
仕事で一流の「型」を真似するのは正解か?
拙著『どんな会社でも結果を出せる! 最強の「仕事の型」』でも詳しく解説していますが、仕事においても、一流の「型」というものは存在します。故スティーブ・ジョブズ氏は、プレゼンテーションに臨む前に何度もリハーサルを繰り返し、自身の細かい動きも含めてチェックしていたといいます。
『どんな会社でも結果を出せる! 最強の「仕事の型」』 ※外部サイトに遷移します
ジョブズ氏などはなかなか真似できないとしても、職場の先輩など、優れた人の「型」をそのまま真似することは、生産性の向上につながるのでしょうか?
われわれの身近な仕事のシーンでも、書籍やメディアなどで一流ビジネスパーソンの思考法や行動、勉強法などがよく紹介されます。こうした一流の方々の「型」を真似ることは、非常に有用なこともある一方で、かえって生産性を落としてしまったりする場合もあります。
たとえば、新人営業マンが部の先輩であるトップ営業マンの資料づくりをそのまま真似すると、失敗してしまうことがあります。というのも、特に部署でもトップの成績を挙げるような人は、社会人経験を通じて得てきた知識や論理性、プレゼンの場数などから、多くのことを口頭で相手にわかりやすく説明できるため、資料には「必要最小限」の情報しか書いていないことも多くあるからです。
先輩にとっては、そうしたほうが、より多くのお客様に会えたり、分析に時間がかけられたりと、業績を最大化できる可能性が高くなります。ただ、この資料づくりの部分だけを新入社員が真似すると、必要な情報が相手に十分に伝わらず、そのためにプレゼンが通らなかったりする可能性が出てきます。
たとえば、多くのコンサルティング会社では、資料のつくり方における「型」があります。各社によって、言い方や教え方は異なると思いますが、私が所属していた野村総合研究所では、「玉座」という資料づくりの「型」がありました。
資料のいちばん上の行に、そのページで言いたいことを簡潔に書き表したものを、「玉座」と呼んでいました。私自身も「玉座」を書くことを通じて、「何を伝えたいのか、ひと言でわからなければ、その瞬間に資料は死ぬ」ということを徹底的に学びました。言い換えると、言いたいことがまとまらないものは、相手も理解できないので、「玉座」が書けないということは、理解促進のツールであるはずの「資料」がその役割を果たしていないということを表します。
「玉座」は、ただ書けばよいというものでもありませんでした。私の在籍当時は、A4サイズを横に使ったパワーポイントの資料なら、文字のサイズは20ポイント。フォントは創英角ゴシック。たとえば、「既存事業の4分の3の利益が下降傾向、事業の組み替えが必要」といった文章のように、20文字から30文字で1行に収める。こうした「型」も、先輩方による実践知に基づく、より「わかりやすい」資料をつくるための方法論なのです。
社会人はどんな「型」を身につけたらよいのか?
職場内の異動や転職など、仕事が変わる機会が増える中で、自分の身を助けるのは、どんな仕事の「型」でしょうか。先ほど述べた「資料づくりの型」なども適用できる職場は多いですが、必ずしもどの職場でも使う機会があるとは限りません。言い換えれば、あらゆる仕事の基本となる領域の「型」を身につけると、どんな職場でも活躍できる可能性があると言えます。
たとえば、「課題を見つけ、解決策を考える」「業務をミスなく、遅延なく完了する」「取引先や上司から仕事を獲得する」といったことは、職場にかかわらず機会が存在すると思います。そういった仕事の基本は、会社として公式な研修がなくても、身近に「手本」となる方がいらっしゃるでしょう。
その方が、なぜ成果を発揮できているのか、その方法論を本人に聞いたり、同行して観察したりしながら学び取るのです。ただし、一流選手と一緒で、優れた成果を出す先輩は、すでに独自の「型」に進化している可能性もありますので、その先輩が、「なぜその仕事ができるようになったのか」をあわせて聞いてみるとよいと思います。そこにこそ、あらゆる人にとって基本となりうる「型」が見えてくることでしょう。
「型」が見えてきたら、あとは実践です。一流選手ですら、繰り返しフォームを微修正しながら体に染み込ませるぐらいですから、「型」の実践当初は、自分の意識と実際の行動には大きなギャップがあるでしょう。こうしたことは自分1人では気づきにくいので、先輩にぜひフィードバックもお願いしてみましょう。
先輩のフィードバックをもとに改善を繰り返していくことで、気づいたら意識せずとも自分が一定の成果を収める時期が訪れます。その時期こそが、「型」が身についた時期です。仕事において、「型」を身につけることは、新しい仕事に挑戦するチャンスの獲得にもつながります。
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提供元:仕事ができない人は一流を手本にできてない│東洋経済オンライン