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2018.01.09

人望のある上司は「感情」抜きで人を評価する│好き嫌い評価をやめて「2軸思考」を使おう


「好き嫌い」抜きで人の力を評価するにはどうすればいいでしょうか(写真 : Ushico / PIXTA)

「好き嫌い」抜きで人の力を評価するにはどうすればいいでしょうか(写真 : Ushico / PIXTA)

「上司から正当に評価されていない……」――これが、世間で最もよく聞かれる愚痴のひとつでしょう。『複雑な問題が一瞬でシンプルになる 2軸思考』の著者である木部智之氏も、プロジェクト・マネジャーになった当初はメンバーのスキルを把握できず悩んでいたそうです。

『複雑な問題が一瞬でシンプルになる 2軸思考』 ※外部サイトに遷移します

いまや500人の部下を抱え、プロジェクトを統括する木部氏に、「好き嫌い」抜きで人の力を評価する秘訣を聞きました。

「好き嫌い」ではない人材の評価をするには?

私は今、500人の同じメンバーを抱えていますが、なかでも一番難しいと感じる仕事が「人材の評価」です。

普段どれだけロジカルな人でも、「人」に関することは、主観が混じり、曖昧になりがち。ある1人に対する評価でも「あの人はプログラミングの天才で、優秀だ」と絶賛する人もいれば、「いや、技術的には優秀だけど、人を動かすのが苦手だよ」という意見の人もいます。ここがテストの点数で客観的に順位をつけられる学校の成績とは違う、難しいところです。

だからといって、「彼は優秀だ」「いや、それほどでもないよ」といった曖昧な評価や好き嫌いで組織を動かしてはいけません。このようなときに、タテとヨコ、2本の線を使って整理すると、フェアな評価をすることができます。私はこのやり方を「2軸思考」と読んでいます。

タテ軸とヨコ軸、2本の線を引いて、あらゆる物事、情報をシンプルに整理する。これが2軸思考です。基本は、たったこれだけです。私は線の引き方で2軸を3つのパターンに分類しています。2本の線を左上で交差させる「マトリクス」タイプ、中央で交差させる「4象限」タイプ、そして左下で交差させる「グラフ」タイプです。

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この3つを覚えておくだけで、あらゆる業界、あらゆる職種のあらゆる問題を解決することができます。

一方で、目にしたものの「構造」をすぐに理解するためにも2軸思考は有効です。

たとえば、新聞の図表を眺めるとき、プレゼン資料を見るとき、企業の決算発表を読み解くとき。私は頭の中が2軸思考になっているので、すべての図からタテ軸とヨコ軸が浮かび上がってきます。

この「2軸フィルター」とも呼べる機能を一度自分の脳に搭載してしまうと、本当に世界が違って見えます。つねに構造を意識し、物事の「全体像」を捉えることが習慣になります。そして同時に、わかりやすい図のほとんどが2軸でできていることにも気づくのです。

2軸思考で人材を評価するには、まず、マトリクスタイプでスキルを定量的に評価します。タテ軸に20人のメンバーを設定して、ヨコ軸に評価すべきスキルを書き出します。

たとえば、私が携わっているシステム開発であれば、「ITスキル」「管理スキル」「リーダーシップ」「コミュニケーション」「英語」などのスキルがあります。それらについて、5段階評価で採点します。

このケースでは、自分は新しい部門メンバーのスキルがわからないので、ほかの誰かに採点を行ってもらいます。自分で採点できる場合は自分で行いますが、より客観的にするには他の人にその点数をチェックしてもらうこと。複数の人が主観的に見ることで、客観的な定量評価に近づけられるようになります。

4象限タイプでプレイヤー、リーダーに仕分けする

そして、このマトリクスをインプットにして4象限タイプで人材評価をしていきます。

今回は、マトリクスにある複数のスキルの中からITスキルとリーダーシップの2つを軸に選択し、4象限で評価することにします。この2つを軸に選択した理由は、技術的な専門スキルの有無と、組織をまとめるリーダーとしてのスキルがあるかを評価したいためです。つまり、新しく担当する部門にプレイヤーとリーダーがどれくらいいるかを把握したいのです。

この結果、新しい組織の20人のスキル分布が下図のようであることがわかりました。

右上のセグメント①はITスキルとリーダーシップのどちらもスキルが高く、総合力の高い人材のエリアです。逆に、左下のセグメント④はいずれのスキルも低いことを示しています。そして、セグメント②と③はそれぞれ、ITスキルかリーダーシップの一方のスキルが高いという評価になります。

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組織の人材のポジショニングが把握できたので、これを基に組織を立て直す作戦を考えましょう。まず、リーダー候補となるのはセグメント①か②に位置するメンバーです。リーダーシップに加えてITスキルを備えていると万能ですが、ITスキルがなくてもリーダーシップがあれば組織をリードすることはできます。

なお、セグメント②はリーダーシップが長けていて、セグメント③はITスキルが優れているセグメントです。今後の育成で、セグメント③のリーダーシップを伸ばすことはあり得ますが、目先の成果を考えるとセグメント②のメンバーをリーダーにアサインするほうが即効性があり、チームの立て直しに有効です。

一方、ITスキルが長けている人は、できるだけ技術的に難しい仕事を担当させることで本人の強みを生かすことができます。

セグメント④に位置する人材は、若手が多く育成対象となります。メンターをつけるなど、できるだけ早く成長できるような策を考えます。もし、このエリアにシニアなメンバーがいた場合、そのメンバーは育成対象ではありません。残念ですが、配置換えや、難易度・重要度の低いタスクをアサインするなど、別の策が必要になります。

スキル分布が「見える化」されると…

このように、組織の人材のスキル分布が「見える化」されると、体制の組み方、依頼するタスクの種類の検討がよりクリアになり、適切な策を打つことができます。また、セグメントごとの人数のバラツキも評価することができます。

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一般的にバランスのいい組織は図のように、セグメント①から④に向けて要員数が増えていきます。しかし、現実の組織ではこのバランスが崩れている場合があります。

たとえば、セグメント①の要員数が多い場合は上が詰まってしまい、組織が硬直している可能性があります。スキルと経験は上がっても、役職・ポジションが上がらないケースです。

セグメント①にいる優秀な人は、本来であればその一つ上のレイヤーの組織に昇進していくべき層です。

優秀で仕事ができるにもかかわらず、同じ組織で出世もしない場合は、そのメンバーのモラルに影響を及ぼします。すなわち、組織にいる優秀な人の数は限定的であるべきで、優秀な人は、どんどん上のレベルの組織や仕事にシフトすべきなのです。

セグメント④が少ない場合は、中期的視野で組織力を見た場合、成長が鈍化する懸念があります。このように、4象限とピラミッド組織構造とを見比べて組織の人材評価をすることもできます。

個人のキャリアの相談にも使える

人事評価などで人材を点数で評価することはどの会社も行っていますが、どうしても「総合的に点数が高い順に並べる」など「1軸」で評価しがちです。

1軸の総合点だけで評価してしまうと、それぞれの人材の個々のスキルレベルが平均点としてならされて長所・短所が見えず、組織として「適材適所」の配置ができなくなることになります。

たとえば、ITの世界では、「天才プログラマー」と言われるタイプの人材が存在します。彼らはプログラミングの技術は突出していますが、リーダーには向かないタイプの人が多かったりします。「だからダメ」ということではなく、それを正しく把握したうえで、技術的エリアで活躍できる仕事を渡すのがリーダーの仕事です。

2軸のスキル評価は組織のスキル評価だけでなく、個人のキャリアを考える上でも役立ちます。私は部下と定期的にキャリア面談を行っていますが、そのときに4象限の図を書いて話をしています。

ITスキルとリーダーシップの4象限を見ながら、「いまの自分のポジション」を共通認識し、中期的に「自分が狙っていきたいポジション」を確認します。そして、それを踏まえて「今年の重点スキルエリアを何にするか」を考えるのです。

ひとつの2軸フレームワークを前に話し合うので、誤解も生まれにくく、またメンバーもぼんやりした目標ではなく具体的に自分が中期的に進むべき道がわかり、そのためには今年をどのような位置づけにすべきなのかを把握できるようになります。

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『複雑な問題が一瞬でシンプルになる 2軸思考』 (クリックすると、アマゾンのサイトにジャンプします)

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提供元:人望のある上司は「感情」抜きで人を評価する│東洋経済オンライン

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