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2017.12.25

テレビCMで顕在化した「名刺は誰のもの」問題│世代によって考え方に差も


名刺交換は自己紹介を兼ねたセレモニーのようなもの(写真 : sasaki106 / PIXTA)

名刺交換は自己紹介を兼ねたセレモニーのようなもの(写真 : sasaki106 / PIXTA)

名刺交換した名刺は誰のもの?

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「●●社の△△と申します」。ビジネスで初対面の人同士が会うと、まず名刺交換をするのが多くの日本人の日常です。会社の応接室や会食などの場で行われる、自己紹介を兼ねたセレモニーのようなものでもあります。

筆者は外国人から「あまりに丁寧すぎて奇異な感じ」と指摘を受けたことが何回かありますが、日本では名刺交換で相手を見極める人さえいます。その仕草や、立ち居振る舞い、あるいは複数の方との名刺交換における手際よさなど相手から見極められる場面ともいえます。会社がマナー研修等で丁寧な姿勢を指導するのは、だからこそなのです。

筆者も期待や不安を感じながら、これまで何千回と行ってきました。若いころには経営者と名刺交換するだけで緊張。いただいた名刺を大事に管理ファイルに保存したものです。そうして、ビジネスパーソンとしての経験を重ねると、名刺交換で集めた量がそれなりになります。ちなみに筆者が18年勤めた会社を辞めて名刺を整理すると、5000人以上になっていました。

その名刺を、当時は自分の「財産」として退職後も持ち続けたもの。次の職場、仕事で活かされることがあるからです。これまでの仕事ぶりから、次の職場でも接点が続き、新たなビジネスにつながることがあります。前職の会社からすれば、悩ましいことですが、これまでは大目にみられてきたことが多かったと思います。辞めた本人の努力でもあると会社も考えていたからです。

ところが、最近は状況が違います。退職するときには名刺は会社に残していくもの、持ち出してはいけない……と考える会社が増えてきました。社員が交換して集めた名刺の持ち主が、個人から会社に変化しつつあるのです。ちなみにビジネスパーソンが1カ月に交換する名刺の枚数は平均15.9枚。入社から数年たつと、それなりの枚数になっていることが想像されます。

さて、みなさんの会社では社員が交換した名刺は誰のものと考えられていますか? 最近は「(その会社の人の名刺を持っているなら)早く言ってよ」と叫ぶ上司のCMで有名になったSansan社などの出現で、名刺は社内資産であり、共有されるべきものという認識が高まりつつあるかもしれません。

実際、辞める前から会社で名刺を共有できるようにすることをルール化する会社が増え始めました。ただ、増えたといっても全体で1割を超えたくらい。名刺管理ツールを提供する会社に話を聞いても、導入は徐々に増えつつある状況とのこと。これからが名刺管理が加速するタイミングかもしれません。

世代によって考え方に差が

ちなみに名刺管理により自分の名刺情報は社内で共有されることに関して、抵抗する勢力もいるようです。

取材した専門商社勤務のSさん(45歳)は名刺管理に大反対。人脈とは個人が作りあげるもので、それを周囲が知っても自分にプラスは何もない……と考えているようです。Sさんの同世代で同様に反対する声は多く、そのため名刺管理は社内で導入が先送りになっているようです。

一方、同じ会社でも20代の社員たちはSさんの反対が不思議に感じられて仕方ない様子。「名刺情報を共有することで、ビジネスのチャンスは広がる」と考えているので管理部門に名刺管理の導入をお願いしているとのこと。同世代の大半が同じ意見らしいといいます。

この世代による考え方の違いはどこから生まれるのか。SNSの活用状況が大きな境目になっているかもしれません。各自の人間関係が特定の人には開示された状態。これがSNSでは当たり前です。この世界観に慣れている、慣れていないが名刺管理の賛成、反対を分けているかもしれません。

日常での名刺の共有にもまして、意見が分かれるのが、先ほどお話しした筆者のケースのように、退職したときの名刺の帰属です。あなたは会社を辞めたときに自分が集めてきた名刺をどのように扱うことが求められそうですか? 会社の方針によるところになりますが、名刺の帰属に関しては個人に属するという見解と、企業に属するという見解がそれぞれにあります。

社員が個別に手に入れた名刺は、所有権と情報とで、分けて考える必要があるでしょう。そして、紙の名刺そのものは、個人の持ち物と考えることができます。ただ、名刺に印刷された情報は機密性があるので、会社に帰属するとも考えられます。こうしたことから、会社によって名刺の帰属の考え方はまちまちなのが実情です。

仕事で獲得した名刺を転職時にどのように扱うかと聞いた調査では、「個人が持ち出す」という回答が38.5%、「全て会社に置いていく」という回答が38.8%となり、ほぼ同じ割合でした。

実際、社員の認識にずれがある場合があります。これまでは辞めたときに名刺は残さなくてよかった会社がルール変更した結果、退職する社員とトラブルになったケースを周囲で何度も聞きました。これまで名刺を個人のものと認識していた会社では、その認識を改めるためには、それなりの時間と手間をかけて伝え、ルールを発信していく必要があります。

会社の資産と考える傾向が増えている

ただ、全体的な傾向として、社員が仕事で受け取った名刺は、社員個人が管理していても会社の資産と考え、退職するときには全て返却を求める会社が増えてきました。確かに当人が辞めれば、誰だかわからない人の名刺が残るだけとなる場合もあるでしょう。それでも、会社は名刺を資産と考え、管理する方向に進んでいくでしょう。

名刺を資産と考えると、社員の業務管理上メリットがあり、ビジネス上の機会損失を減少させる可能性もあります。たとえば、突然退職した社員が出ても、名刺の管理ができていれば、社外の誰と仕事をしていたのかは把握しやすいはず。

こう考えると、名刺は会社に属するものと考えるのが基本的になっていくことでしょう。先述したように抵抗する人も少なくないテーマではあるので、会社には慎重にすすめていただきたいと願います。

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提供元:テレビCMで顕在化した「名刺は誰のもの」問題│東洋経済オンライン

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