2025.03.04
嬉野温泉名物「ふわとろ湯豆腐」を自宅で作るワザ|豆腐を煮る"水"を工夫するだけで食感が激変
佐賀県に行くか取り寄せなければ食べられない「温泉湯豆腐」が自宅でカンタンに作れます(以下、写真はすべて筆者撮影)
料理の腕を上げるために、まず作れるようになっておきたいのが、飽きのこない定番料理です。料理初心者でも無理なくおいしく作れる方法を、作家で料理家でもある樋口直哉さんが紹介する『樋口直哉の「シン・定番ごはん」』。今回は、ふわふわ食感が体と心を温める、嬉野温泉の名物料理をご紹介します。
水に重曹を加えることで再現
寒い夜にうれしい湯豆腐。鍋に水と昆布、豆腐を入れ、沸騰させないようにゆっくりと加熱するのがコツとされていますが、それとは異なった作り方もあります。佐賀県にある嬉野温泉の名物料理、温泉湯豆腐がそれです。
温泉湯豆腐は温泉水で豆腐を煮るのが特徴。豆腐をアルカリ性の温泉水で煮ると、表面が溶け、豆腐の構造がゆるむので、ふわふわとした食感に変わるのです。温泉湯豆腐は現地に行くか、取り寄せなければ食べられませんが、水に重曹を加えることでも同じように温泉湯豆腐風の豆腐を楽しめます。
【温泉湯豆腐】
材料
豆腐 1丁
水 300ml
重曹 小さじ1/2(3g)
昆布 3g
水菜 50g(1/2袋)
しめじ 適量
ごまダレ
練りごま 25g
しょうゆ 25g
みりん 25g(電子レンジに30秒ほどかける)
湯豆腐を作るには、まず豆腐の選択から。
パックに水が入っているものを選びましょう
豆腐には充填豆腐、絹ごし豆腐、木綿豆腐の3種類があります。中でも充填豆腐はパッケージに凝固剤を混ぜた豆乳を充填し、密封してから加熱、凝固させたもの。賞味期限が長いのが特徴ですが、やわらかいので冷奴などに向いている豆腐です。
湯豆腐には普通の絹ごし豆腐か木綿豆腐を好みで選んで使いましょう。
液体を混ぜる際の基本は?
今回はごまダレを添えます。ごまダレの基本の分量は練りごま1:しょうゆ1:みりん1です。
市販のごまダレやポン酢などを添えてもいいでしょう
アルコールが苦手でなければ、みりんは煮切らずに加えても意外とおいしくできますし、みりん風調味料を使えば加熱する手間が省けます。今回は本みりんを電子レンジにかけ、アルコール分を飛ばしてから使っています。
ごまダレは2週間ほど保存が効くので、多めに作ってもいいでしょう
タレに限らず液体を混ぜる際の基本は、硬いものにゆるい液体を加えていくことです。逆に、水分に練りごまなどを加えると、分離してなかなか混ざりません。練りごまを混ぜながら、しょうゆとみりんを加えて、混ぜればごまダレの出来上がり。
鍋に昆布を敷き、水を注ぎます。8等分に切った豆腐を並べ、重曹を加えます。重曹は苦みがあるので、入れすぎには注意してください。
アルミ鍋は使用不可なので、その他の材質の鍋を使ってください
実験感覚でとろける食感に
重曹(=炭酸水素ナトリウム)は、水に入れて加熱すると炭酸ナトリウム、二酸化炭素、水に分解されます。この反応は65℃以上で顕著に進みますが、炭酸ナトリウムはpHが高いアルカリ性のため、鍋の中の水はアルカリ性に傾きます。
ざっくり説明すると、豆腐は豆乳を酸性に傾けることで凝固させるので、アルカリ性の物質で中和させることで、とろける食感に変わるのです。
一晩置くと、さらに豆腐が柔らかくなります
沸いてきたら弱火で10分。すると、こんな風に豆腐の表面がすっかり溶け、角も丸くなっているのがわかります。
好みの具材を入れて、さっと煮れば出来上がり。水菜のほかにかいわれ大根、しめじのほかにしいたけなどでもいいでしょう。
豆腐が柔らかいので、すくうときは注意してください
汁には苦みがあるので、気になる方は豆腐だけをすくい、ごまダレをかけてください。重曹を使うことで、安価な豆腐でも驚くほど高級な味わいに変化します。わざわざ重曹を用意するというハードルはありますが、実験感覚で試していただきたいレシピです。
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提供元:嬉野温泉名物「ふわとろ湯豆腐」を自宅で作るワザ|東洋経済オンライン