2024.12.01
急な「めまい」発作の"引き金"となる6つの要因|とくに急激な「気圧の変化」には注意が必要
「めまい」の発作につながりがちな、6つの「引き金」について解説します(写真:プラナ/PIXTA)
多くの人が、突然、襲いかかってくるものと思っている「めまい」の発作ですが、横浜市立みなと赤十字病院めまい平衡神経科部長の新井基洋氏によれば「それは間違い」だそうです。
めまいの発作を事前に察知するための「前兆」と、発作につながりがちな「引き金」について、新井氏の著書『1万人を治療してきた名医が教える 自力で治すめまいのリセット法』から、一部を抜粋・編集して解説します。
まずは安静第一! めまいが起きたときの対処法
激しいめまいに襲われたら……、まずは、安静にしましょう。可能であれば、照明を暗くして、静かな場所で横になってください。このとき、体を締めつけると症状が悪化するので、下着、ベルトやネクタイなどはゆるめましょう。
めまいの原因は耳にあることが多いため、左右どちらの耳が悪いのかを事前にチェックしておくのもおすすめです。
悪いほうの耳を上にして横になると症状がやわらぎます。つまり、
・「左」の耳が悪い場合は、「左を上」にして横になる
・「右」の耳が悪い場合は、「右を上」にして横になる
ようにしましょう。
仰向けになったほうがラクというのであれば、それでもかまいません。自分がラクだと思う姿勢をとることが一番です。ただし、嘔吐が伴う場合は、吐物が気管に入らないようにするため、体を横に向けてください。
めまいに気が動転して、ハアハアと浅い呼吸となり、過呼吸になることがあります。できるだけゆっくり、深く呼吸をして呼吸を整えましょう。処方された薬や、酔い止めの薬があれば、めまいが少し落ち着いたときに飲んでください。
外出先で横になれない場合は、木陰のベンチなどに腰をかけて休みましょう。このとき、雑音の少ない場所、クルマや人通りの少ない場所など、できるだけ静かな環境のところで休むことが理想です。
めまいに襲われたときは、とにかくあわてないことが第一です。頭痛、意識の薄れ、しびれ、まひなどを伴わないめまいは、正しく対処すれば生命に関わることはありません。ふつうは、安静にしていれば治まってきますので、落ち着いて行動しましょう。
ただし、もし30分ほど経過しても強い症状が改善されないようであれば、耳が原因ではなく、脳の疾患などの原因も考えられるため、救急病院に行きましょう。救急車を呼んでもかまいません。
「6つの前兆」を知ればめまいの発作は防げる
「いつめまいに襲われるか、不安で遠出ができないんです」
「近所のスーパーに買い物に出かけるくらいでもドキドキで……」
そんな悩みを訴える患者さんはたくさんいます。多くの人は、めまいは突然、襲いかかってくるものと思っているようです。しかし、それは間違いで、めまいには、いくつかの前兆があるのです。
そこで、私がいつも患者さんにお伝えしている「6つの前兆」をご紹介しますので、下のイラストをご覧ください。これは私が長年の治療経験から突き止めたものです。
(出所:『1万人を治療してきた名医が教える 自力で治すめまいのリセット法』より)
めまいの前兆があったときは、とくに次の3つの行動をしないよう注意してください。
①めまいを警戒しすぎる
前兆を感じたからといって、絶対にめまいの発作に襲われるというわけではありません。「来るぞ、来るぞ」と、身構えすぎるのもストレスになり、めまいを誘発するおそれがあります。「来るかも!」と思ったら、神経質になりすぎず、深呼吸をするなどして、心を落ち着かせてください。
深い呼吸には、高ぶった交感神経を鎮め、体をリラックスさせてくれる副交感神経を優位にする効果があるため、めまいの発作を抑えることが期待できます。
②余裕のないスケジュールを立てる
外出先で前兆を感じたときには、日陰のベンチでしばらく休むなど、無理に体を動かさないようにしましょう。とくに、時間に追われているときなど、ついつい予定を優先させて、無理に電車やバスに乗ったりすると、症状が強く出てしまう可能性もあります。
そのため、常に乗る予定だった電車を何本か見送れるくらい余裕のあるスケジュールを組んで行動することを心がけることも大切です。
③車を運転する
絶対に避けていただきたいのが車の運転です。運転中に前兆を感じたら、運転を続けずに、すみやかに路肩などに停車して、落ち着くまで車内で休んでください。
知っておきたい! めまいを起こす「6つの引き金」
めまいは、発作のきっかけとなること、悪化させる要因を知っておけば、事前の対策ができますし、発作に襲われずに済みます。ここからは「めまいが起きやすいシチュエーション」をご紹介します。
【めまいの引き金① 睡眠不足による「脳の疲れ」】
めまいを起こす原因の約7割は、内耳の異常によるものです。その内耳に異常をもたらす最大の原因と言っていいのが睡眠不足です。私の病院でも、患者さんの睡眠状況を調査したところ、男性で7割、女性で8割の人が不眠症であるということがわかりました。
睡眠不足になると、自律神経のバランスが崩れ、交感神経が過度に優位となり、血管が収縮して血の巡りが悪くなります。髪の毛1本ほどの細い血管を介して酸素や栄養が届けられている内耳は、その影響を強く受けてしまいます。
また、睡眠は脳が唯一、休息をとれる時間です。それが十分ではないと、日中に脳がしっかりはたらいてくれません。当然、小脳のバランス調整機能も低下することにつながるため、めまいが起きやすくなります。
【めまいの引き金② 風邪などによる体調不良】
体調がよくないときは、体の弱い部分が真っ先にダメージを受けます。めまいのある人は「耳」が弱点ですから、「耳」がダメージを受け、めまいが起こりやすくなります。
とくに、風邪は「内耳」と関連のある病気のため、めまいを悪化させるおそれがあるので要注意。風邪にかかったら、まずはしっかり、風邪の治療をしてください。
【めまいの引き金③ 気圧の変化】
雨の日のめまい外来の患者さんは、「今日は体調がすぐれません」と口をそろえて言います。また、「6月と9月にめまいになりやすい」と言う患者さんも多くいます。
雨の日や、季節の変わり目にめまいが起こりやすいのは、気圧の変化が影響しています。とくに6月の梅雨、9月の台風シーズンは、気圧が急激に変化する時期です。内耳は、気圧の変化を受けやすいので、めまいが悪化しやすくなります。
気圧の変化が起きやすいのは、雨の日や季節の変わり目だけではありません。乗り物にも気をつける必要があります。とくに、飛行機の離着陸時、新幹線がトンネルを出入りするときは要注意です。
即効性のある対処法は、「水を飲む」「アメをなめる」「あくびをする」ことです。それでも耳が詰まった感じがよくならないようなら、左右の小鼻をつまんで空気を吸い込み、口を閉じて吸い込んだ息を耳へ送り込む「耳抜き」を試してみてください。
ただし、耳抜きは頻繁に行うと鼓膜を痛めるおそれがあるので、1日1~2回を限度としましょう。
「精神的なショック」も、めまいの大きな要因
【めまいの引き金④ 「乗り物」への乗車】
気圧の変化のところで飛行機や新幹線をあげましたが、乗り物を苦手にするめまい患者さんは多いのです。
周囲の風景が激しく移り変わることによる視覚への刺激、騒音による聴覚への刺激が大きいことに加え、不規則な揺れや振動など、バランスに関する情報が混乱しやすい要素がたくさんあるからです。また、車内の臭いなどがめまいのきっかけになることもあります。
乗り物の中では、できるだけ遠くの景色を見ましょう。とくに、スマートフォンの画面を見る、本や新聞など文字を読み続ける、空腹や食べすぎは、乗り物酔いによるめまいのリスクを高めます。
【めまいの引き金⑤ 避けられない「精神的なショック」】
家族や友人などが亡くなった、突然失業したなど、ショッキングな出来事がきっかけになって、強いめまいの発作に襲われるようになったという人はたくさんいます。引っ越しや転職など、環境が激変したときも要注意です。
「心」をほぐすために「体」を動かす
精神的なショックが原因のめまいの特徴は、ショッキングな出来事が起きた直後ではなく、ひと段落したときに起きやすいことです。しかし、精神的なショックは避けようと思っても避けられるものではありません。
強い精神的ショック下にあると感じたときには、めまいが起きる前にしっかりと対策を取ってください。
なかなかそんな気分にならないかもしれませんが、体を動かしてみることは、思いのほか心にもいい影響を与えるため大切なことです。心をほぐすために、体を動かすのです。
【めまいの引き金⑥ 「過労」「ストレス」】
仕事や介護などによる過労やストレスもめまいのきっかけになります。精神的なショックと同様、気が張っている忙しいときではなく、ひと段落してホッとしたときに、ぶり返しのように強い発作が起きることがあります。
仕事の量を減らすなど、原因になっていることを取り除くのがいちばんの予防になりますが、それが難しいのであれば「疲れるとめまいが起きやすい」という意識を持つことからはじめてください。
また、日頃から無理をせず、睡眠と栄養をしっかりとって、疲れをためないような工夫をしましょう。
『1万人を治療してきた名医が教える 自力で治すめまいのリセット法』(アスコム)
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提供元:急な「めまい」発作の"引き金"となる6つの要因│東洋経済オンライン