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2024.11.13

なぜ年を取ると「しょうゆをドバドバ」かけるのか|高血圧になると腎臓にも負担がかかってしまう


年齢を重ねるにつれ、徐々に味覚は衰えていくという(写真:kai/PIXTA)

年齢を重ねるにつれ、徐々に味覚は衰えていくという(写真:kai/PIXTA)

年を取るにつれて、なぜかしょっぱいものが好きになってきたと感じている人はいませんか? 塩分のとり過ぎは高血圧の原因としてよく知られていますが、医学博士で腎臓専門医の髙取優二氏によれば、高血圧になると、腎臓にかかる負担も高まってしまうそうです。
世界的に腎臓病の急増が続く深刻な背景と、加齢による味覚の変化について、髙取氏の著書『腎機能を自力で強くする 弱った腎臓のメンテナンス法』から、一部を抜粋・編集して紹介します。

世界中で患者が急増する「隠れた流行病」

ひと昔前までは、「腎臓って、どこ?」と、場所さえ知らない人も少なくありませんでした。テレビ番組などで華々しく取り上げられていた脳や腸に比べたら、腎臓はひっそりと目立たない存在でしたよね。

それが様変わりして、いまでは腎臓は注目の的です。

その理由は、残念ながら「すごい働きをしているから」ではありません。慢性腎臓病の患者さんが日本で増えているからです。

近年では、「これは一大事だ」と厚生労働省も啓発活動を幅広く行っているので、「日本人の約8人に1人が慢性腎臓病」ということは、多くの人に知られるようになりました。

腎臓病の患者数は世界で8億5000万人

腎臓病の患者さんが増えているのは、日本だけの話ではありません。これは推計値ですが、患者数は世界で8億5000万人にのぼると国際腎臓学会が2018年に発表しています。その数は、なんと糖尿病の2倍、がんの20倍以上に相当しています。糖尿病やがんよりも腎臓病にかかっている人のほうが多いなんて、ちょっと意外ですよね。

海外のメディアは「腎臓病は"隠れた流行病"」と報じていました。もちろん、腎臓病はほかの人に感染しないのですが、患者数が爆発的に増える様子は感染症と似ているといえるのかもしれません。

また、腎臓はダメージを受けても「痛い」「気持ちが悪い」などの身体的な症状がほとんど表れることがない、じつに我慢強い「沈黙の臓器」です。ですから、機能が低下しても気がつかないようなケースは決して珍しくありません。そのため、「サイレントディジーズ(静かなる病気)」と表現されることもあります。

さらに、慢性腎臓病の患者さんについては、心疾患や脳血管疾患で亡くなる場合が非常に多いのです。言いかえると、死因は心疾患や脳血管疾患になっていても、本当の原因は慢性腎臓病の悪化だった可能性があるということです。

心不全患者の71.2%が慢性腎臓病(CKD)を合併しているというデータも報告されています。そう考えると、国際腎臓学会が発表している数字よりもはるかに患者数が多い可能性もあるでしょう。

下のグラフを見てもわかるとおり、近年、腎不全は日本人の死因の1.9%にしかすぎません。しかし、心疾患や脳血管疾患の陰に隠れているのが腎臓病であることも考えられるので、腎臓病が原因で亡くなる方の割合はデータ以上であることも考えられます。

(出所:『腎機能を自力で強くする 弱った腎臓のメンテナンス法』より)

(出所:『腎機能を自力で強くする 弱った腎臓のメンテナンス法』より)

「便利な社会」が招いた腎臓病患者の増加

それにしても、どうして腎臓病の患者さんの数はここまで増えてしまったのでしょうか。「こんなに社会が便利になって、医学も進歩しているのに」と、不思議に思いますよね。

じつは、「便利な社会」に落とし穴があるのです。

日常生活に深く入り込む「食品添加物」

日本には、24時間営業のコンビニエンスストアが各地にあります。そして、長期間保存ができるカップラーメンやソーセージ、菓子パンなどの加工食品が、棚に並んでいます。

すでに加工が済んでいて料理の手間が省けるので、気軽に手を伸ばしてしまう人も多いのではないでしょうか。しかし、加工食品には、保存性を高めたり、色・香り・味を調整したりするために、食品添加物が入っています。

代表的な食品添加物が、無機リンです。無機リンには、リン酸二水素ナトリウム、リン酸二水素カルシウム、リン酸二水素アンモニウム、ピロリン酸四カリウム、リン酸二水素カリウムなど、20種類以上もあります。

そして使われる目的も、水と油を混ぜ合わせる、お菓子をふっくらと膨らませてやわらかさと弾力性をもたせるというようにさまざまです。

ですから、「気がついたら、大量に無機リンを摂取していた!」ということも珍しくありません。

それから、食べ物がいつでも、どこでも、すぐに手に入る環境にいると、「おなかが空いていないけど、食べちゃおうかな」「新製品が出たから、試してみよう」というように、ついつい食べ過ぎてしまいがちです。

そんなことが続くと、知らないうちに糖質・脂質・塩分の摂取量が過剰になってしまって、血圧や血糖値が高くなったり、おなか周りに脂肪がついたりするのです。

肥満(内臓脂肪型肥満)に高血圧や高血糖、脂質異常症が加わるとメタボリックドミノ(生活習慣の乱れがスタートとなり、内臓の周りに脂肪がたっぷりとついてしまう「内臓脂肪蓄積型肥満」になることで、食後高血糖や高血圧、脂質異常症が起こりやすくなること)が起こって、腎臓病のリスクが高まります。

「メタボドミノ」で加速する腎機能の低下

社会が便利になって、医学も進歩したことで、日本では高齢化も進みました。年齢を重ねるほどに腎臓の機能が少しずつ低下していくのは、自然な現象なのですが、メタボリックドミノはそのスピードをグンと上げてしまうのです。

腎臓が自力で体のゴミ(老廃物)を排泄できなくなると、医療機器でゴミを取り除く人工透析などが必要になります。その患者数は、増加の一途をたどっています(下のグラフ参照)。

(出所:『腎機能を自力で強くする 弱った腎臓のメンテナンス法』より)

(出所:『腎機能を自力で強くする 弱った腎臓のメンテナンス法』より)

ただ、どうか慌てないでください。慢性腎臓病イコール人工透析ではありません。あくまでも、かなり悪化した場合に人工透析が導入されるのであって、慢性腎臓病の患者さんの中でも2.2%程度だからです。

自分の腎臓に働いてもらいながら、これからの長い人生を楽しく過ごすために、腎臓への負担を取り除いて、機能低下のスピードをリセットさせましょう。

年を取ると「しょうゆドバドバ」をやってしまう

「塩分をとり過ぎると、血圧が上がる」。みなさんは、きっと耳にタコができるほど、このフレーズを聞いていますよね。

腎臓は血管の塊であるので、高血圧になると負荷がかかってきます。そのため、血圧を上げないようにすることが重要になってきます。ただ、「では、どうして塩分で血圧が上がるのでしょうか?」と尋ねられると、よくわからない人のほうが多いのではないでしょうか。

ここからは、塩分と血圧との関係について説明します。

私たちの体内にある水分、つまり体液には、ミネラルなどさまざまな物質が溶けています。物質が溶けている濃度が一定に保たれることで、全身の細胞がきちんと働けるようになっているのです。

塩分も、体液に溶け込んでいます。ですから、食べ物や飲み物で摂取した塩分は、体内に吸収され、体液に入ってきます。その量が多くなると、当然、体液の塩分濃度が上がってしまいます。

すると、体は「これは大変!」と反応して、のどの渇きを感じさせて水を飲ませたり、体内に水分をため込むなどして、塩分濃度を元に戻そうとするのです。言いかえれば、塩分をとればとるほど、体液の量が増えるのです。

「塩辛いものを食べ過ぎたから、むくんじゃった」という経験は、よくありますよね。摂取した塩分のぶんだけ体液が増えて、皮膚の下にたまっている状態が、むくみです。

塩味を感じる機能が「若い頃の12分の1」に

体液が増えるということは、体液のひとつである血液も増えるということでもあります。そのため、全身から心臓に戻ってくる血液も、心臓が全身に送り出す血液も多くなります。

これは血液を全身に送り出すポンプのような役割を担う心臓にとっては大変な重労働で、たくさんの血液を押し出すために強い圧をかけて血液を全身に送り出さなくてはなりません。

その結果、血圧を上げる必要が出てきます。このような流れで、塩分をとり過ぎると、血圧が上がるのです。

本来、私たちの味覚は、体に必要なぶんだけの塩分で満足するようなしくみになっています。しかし、年齢を重ねると味覚、中でも塩味を感じる機能が落ちてきます。ある研究では、塩味を感じる機能が若い頃の12分の1まで衰えてしまうという結果も出ていました。

つまり、本人が気づかないうちに塩分の摂取量が増えてしまうということです。

日頃から、しょうゆをドバドバかけてしまいがちな方は要注意。その結果、高血圧を招きやすくなります。高血圧になると腎臓に負担がかかるようになります。年齢を重ねるにつれ、徐々に味覚は衰えるということを自覚して、塩分控えめな食事を心がけることが大切です。

『腎機能を自力で強くする 弱った腎臓のメンテナンス法』(アスコム)

『腎機能を自力で強くする 弱った腎臓のメンテナンス法』(アスコム)

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