2024.07.23
「睡眠の質が悪い人」脳が発するSOSの2つの兆候|自称「ショートスリーパー」ほど注意が必要
睡眠時間を確保しても日中の眠気が取れない人には、3つのタイプがあるという(写真:Xeno/PIXTA)
よく眠ったつもりなのに、頭がぼーっとする、体がだるい。そう感じている人は、「睡眠の質」を見直す必要があるかもしれない、と睡眠専門医の白濱龍太郎氏は指摘します。自分の「睡眠の質」を把握し、改善するにはどうすればいいのか。白濱氏が、いくら寝ても疲れが取れない人の3つのタイプを紹介しながら、その対処法を解説します。
※本稿は、白濱氏の著書『朝までぐっすり眠れる 深睡眠スープ』から、一部を抜粋・再編集してお届けします。
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日本人は世界でいちばん眠れていない
2021年にOECD(経済協力開発機構)が調査したところによると、加盟国中、平均睡眠時間がもっとも少ないのは日本という結果でした。
中国が9時間1分、アメリカが8時間51分、韓国が7時間51分なのに対して、日本の平均睡眠時間は7時間22分と、世界各国の睡眠時間を大きく下回る状況です。
さらに詳しく調べると、日本国内で睡眠時間が6時間未満の人は、男性37.5%、女性40.6%と、男女ともに約4割にものぼるようです(厚生労働省『令和元年 国民健康・栄養調査結果の概要』より)。
しかし、元から日本人の睡眠時間が短かかったわけではありません。1960年の日本人の平均睡眠時間は8.22時間だったので、約50年間で1時間も短くなってしまったということになります。
深刻なデータですが、じつは現代の日本人には「眠れていない」ということを正しく自覚していない/または軽視してしまっている人も、意外に多いのです。
「自分はショートスリーパー」という思い込み
ここからは、「眠れているつもりで眠れていない」という、要注意サインをご紹介しましょう。
まず注意していただきたいのは、ベッドやソファにバタッと横になったとたん眠り込んでしまう、「バタンキュー」状態です。
消灯、または床についてから眠りに入るまでの時間を「入眠潜時(にゅうみんせんじ)」といいますが、この時間は10〜15分ほどかかるのが普通です。
しかし、入眠潜時があまりに短く「いつ寝たのかわからない」「気づいたら朝になっていた」というのは、睡眠というより気絶に近いといえます。寝つきがよいように思えるかもしれませんが、じつは睡眠負債をため込みすぎているせいで、脳がシャットダウンしているのです。
「すぐ寝られる」と「よく眠れている」は、決して同義ではありません。心当たりのある人は、早めに生活習慣を見直しましょう。
また、「机にいつも書類が山積みになっていて、なかなか片付けられない」という状態も、脳のSOSサインです。
これは、睡眠不足によって脳の処理能力が下がってしまい、要不要を判断したり、優先順位をつけたりできなくなっている証拠といえます。こうした状態を長く放置していると、いずれ大きなミスにもつながりかねません。
また、「他人のささいな言動にカチンときて激しく言い返す」というのも、じつは脳のSOSサインのひとつです。睡眠時間が足りないと、心のバランスを保つホルモンであるセロトニンが不足して、イライラしやすくなってしまうためです。
さらに、不安や恐怖を察知するセンサーである「扁桃体(へんとうたい)」の働きも活発になってくるので、他人の言動や行動に対して過剰に反応しやすくなります。
「上司から理不尽な指示を受けている」「長時間労働を強いられている」といった明確な理由がある場合でも、睡眠が不足しているとよけいにイライラが募ってしまうことがあります。
イライラしたら相手を責める前に、まず睡眠が足りているかどうかを振り返ってみましょう。しっかり眠ればマイナス思考にストップをかけられるので、どういうケースであっても冷静な行動を取れるようになるはずです。
さらに、「私はショートスリーパーなんです」と言う人はよくいらっしゃいます。ショートスリーパーとは、4時間以下ほどの睡眠でも日中に眠気を感じることがなく、長期的にも心身に異常が見られない体質のことをいいます。
こういう人が存在することは事実なのですが、割合はとても稀です。「偉人や著名人はショートスリーパー」というのもあくまでイメージであり、マイクロソフト創業者のビル・ゲイツや、アップルCEOのティム・クックは、いずれも7時間睡眠を習慣にしているといいます。
ところが、株式会社ブレインスリープの「睡眠偏差値Ⓡ」調査によると、「自分はショートスリーパーだ」と回答した人は約23%に上りました。対して日本の統計では、普段の睡眠時間が4時間未満の人は全体の約1%とされます。
つまり、ショートスリーパーだと思っている人のほとんどは、思い込みで無理を続けてしまっている可能性が高いということなのです。
真の問題は眠りの「質」が悪いこと
一方で、睡眠時間はそれなりに確保しているつもりなのに、日中、次のような状態になってしまうという人はいませんか?
・ランチのあとは必ず眠くなる
・電車で座ると居眠りをしてしまう
・コーヒーやエナジードリンク、ガムなどがないとシャキッとしない
・車の運転中、信号待ちで眠気に襲われる
これらは、睡眠時間ではなく睡眠の「質」が足りていないのが原因です。
充分な睡眠には時間のほかに質も大切な要素となりますが、その質を決めるのは「深さ」です。
人は眠っている間、「レム睡眠」という浅い眠りと、「ノンレム睡眠」という深い眠りを周期的に繰り返しています。そして、ノンレム睡眠のなかでも、もっとも深いものを「深睡眠(しんすいみん)」といいます。その深睡眠をしっかりとれるかどうかで、睡眠の質が決まるのです。
基準としては、深睡眠がひと晩で2回以上あり(通常は最初の4時間以内に発生します)、かつ長めの時間がとれていれば、睡眠の質はよいといえます。
いわゆる「ぐっすり眠る」とは、この深睡眠がしっかりとれている状態を指します。ぐっすり眠るとすっきりしますが、それは深睡眠の間に疲労を回復し、細胞ダメージを修復する成長ホルモンがさかんに分泌されるためです。
一方、深睡眠がとれていない=ぐっすり眠れていないと疲れが残るので、睡眠時間をとっているにもかかわらず、先に挙げたような不調が日中に現れてしまうわけです。
ぐっすり眠れない人の「3つのタイプ」
睡眠時間を確保しても日中の眠気が取れない人は、次の3タイプのうち自分に当てはまるものを見て、原因を探ってみましょう。
タイプ(1)寝つきが悪い、布団に入ってもなかなか眠れない
寝つきが悪い人は、深部体温のリズムが乱れている可能性があります。布団に入る時間になっても深部体温が充分に下がっていないと、スムーズに入眠できません。
深部体温を下げるには、睡眠ホルモンといわれる「メラトニン」の分泌が必要ですが、夜にスマホなどの人工的な光を浴びていると分泌がさまたげられてしまいます。
また、毎日の入浴は健康のためにもよい習慣ですが、お風呂から出てすぐに布団に入るのは推奨できません。入浴後は深部体温が上がっている状態なので、そのまま無理に布団に入っても深い眠りに入りづらいことがあります。
おすすめは、就寝の1時間半〜2時間ほど前に、39〜40度くらいのぬるめのお湯にゆっくり浸かることです。すると、深部体温が下がるタイミングで訪れる眠気のピークをつかまえることができます。
タイプ(2)途中で起きてしまう、ひと晩中うとうとしている
寝ている途中で何度も起きてしまうことを「中途覚醒」といいます。うとうとするばかりで深く眠れないというのも、中途覚醒の一種です。
中途覚醒の原因には、自律神経の乱れが考えられます。仕事や家庭でのストレスがたまると、交感神経が優位になりやすく、眠りが浅くなってしまいがちです。
そのほかに、日中の運動量が少なかったり、就寝前の水分の摂りすぎが影響していたりすることもあります。
タイプ(3)朝すっきり起きられない、朝からどんよりした気分
目が覚めてもなかなか眠気が取れず、ぼんやりした状態が続くことを「睡眠惰性」といいます。これは、最初の4時間でしっかり深睡眠がとれなかったことが原因です。
寝る直前までスマホやパソコンの光を浴びて交感神経を刺激していると、すぐ深い眠りに入れません。すると全体的に眠りが浅くなり、脳は朝になっても深い眠りを求めるので、すっきり起きられなくなってしまうのです。
「睡眠の質」の低下が大病を招くことも
深睡眠は、体と脳の回復タイムです。
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とくに、脳の疲労物質は深睡眠でしか取り除くことができません。
筋肉の疲労物質は体を休ませれば取り除けますが、睡眠不足で疲労物質が脳にたまったままになると、集中力、判断力、論理的思考力、アイデア、そして意欲までもが減退してしまいます。
こうなると、仕事や家事に支障が出るだけでなく、がんや糖尿病、うつ病、認知症といった病気の発症にもつながりかねないので、注意が必要です。
健康の基本はまず睡眠から。それにはまず食事から改善することも有効です。
ぜひ生活習慣から、見直してみてください。
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提供元:「睡眠の質が悪い人」脳が発するSOSの2つの兆候|東洋経済オンライン