2024.07.09
「親を嫌いではないけど苦しい人」に伝えたい策|子どもが親の話に耳を傾けてくれない場合は?
親子関係に悩んでいる人に、伝えたいことがあります(写真:sasaki106/PIXTA)
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こんにちは。生きやすい人間関係を創る「メンタルアップマネージャⓇ」の大野萌子です。
現代は過剰なほど「ネガティブな感情」になりやすい環境と言えます。
誰しも少なからず、ネガティブ感情を抱え込んでいるとは思いますが、その捉え方はさまざまです。そして、その考え方や価値観の基礎を作っているのは親との関係性です。
子どものうちは受け身でしかいられないこともあると思いますが、成長すれば、自らの意思で選択することが可能です。
不快やつらいと感じることも捉え方を変える、湧き上がってくる感情の「置き場所」を整理することによって払拭できることがあります。
そのための方法を、拙著『ネガティブな自分のゆるし方』より、考え方やTODOを一部抜粋、再構成してお届けします。
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子どもは「自己肯定感を高める存在」
過干渉、抑圧、依存、束縛などの行為により、子どもに悪影響をおよぼす「毒親」という言葉は、1990年頃から使われています。
私も何万人ものカウンセリングをしてきましたが、人知れず親子関係にネガティブな悩みを抱える人は多く、他人同士の人間関係より根深い問題です。
例えば、こんなシーンの相談を受けることがあります。
子どもの頃から母の言うことは絶対。習い事、進学、就職など、これまで何もかも母の考えを基に決めてきた。母のことは嫌いではないが、大人になっても自分の意見は通じず、結局親の言う通りに生きてしまっている。
こうした「嫌いではないけど苦しい」理由は、親が自分の思い通りにしようと「支配」する傾向があるからです。
能力や知識、知恵がじゅうぶんでない子どもは、親に頼るのは当たり前のことです。大人へと成長していく過程の中で、親にコントロールされたとしても、子どもでは自分の力で反発するのは簡単ではないでしょう。
しかし、成長過程で親からの支配を断ち切る「反抗期」は誰にでも訪れます。
反抗期が起こるのはごく自然なことで、大人としての自立心が芽生える第一歩です。しかし、なかには「反抗期がなかった」、もしくは「あったとしても親との依存関係が払拭できなかった」場合、大人になっても支配される親子関係が続くケースがあります。
そして、「パートナーから否定される」「社会に必要とされていないと感じる」など、子ども以外から存在を認めてもらう場所がない親の場合は、特に自分の言うことに反抗せず従ってくれる子どもが、自己肯定感を高める存在へと変化してしまうのです。
大人になっても親に意見ができない、親のいいなりになってしまう、それをつらいと感じている人は、まずは親子の間に「支配と従属の関係」が続いていることに気づくことが大切です。
「親を見捨てるのは親不孝」とは限らない
・親は嫌いではない、でも関わると疲れる
・離れたいけど、かわいそうな気もする
親子関係に悩んでいる人の中には、こうした親との心の距離感に後ろめたい感情を抱えている方が多くいます。
関わりを切ろうとしてもなかなか切れないのは、「今まで育ててもらったのに親不孝ではないか」という気持ちからではないでしょうか。
もちろん育ててもらった親への感謝は大切です。でも、人生を生きているのは親ではなく「自分自身」です。子どもを育てるのが親の義務であって、親に対して過剰に恩を返す必要はないのです。
今こそ、「親不孝」という気持ちは捨て、罪悪感を手放すときです。
親の思う通りに生き、親の理想ばかり実現していては、自分の存在がなくなり、ますますネガティブ感情が膨らんでいきます。
つらいと思うなら、親から逃げても問題はないのです。
(イラスト:『ネガティブな自分のゆるし方』より)
心の支配から逃れ、親の気持ちではなく自分の気持ちを第一優先に過ごしていけば、きっと負のループから抜け出せる日がやってきます。
家庭の問題に土足で入り込む人たち
親以外にも、踏み込まれたくない個人の問題に深入りしてくる人がいます。特に、相手を傷つけたくない、うまく付き合いたい人ほど、こうした困った人をどう対処すればいいか迷ってしまうものです。
ここでネガティブな感情になるのは、「詮索されているのでは」という警戒心や、「どこまで踏み込まれるのだろう」という恐怖心が生まれるからです。
親しい間柄であっても、人に言えないデリケートな問題を抱えている場合があります。自分がその問題を重く捉えているほど、相手がその話題に踏み込んできた際に不快感や困惑が強くなってしまうのです。
でも実は、ほとんどの人は単なる世間話の延長で、質問に深い意味はないことのほうが多いのも事実です。
ただし、「ここだけの話なんだけど」「誰にも言ってないんだけど」という言葉を使い、特別感を出してくる人には要注意です。
こうした言葉を使う人は、他者との距離感を読めない傾向があります。主従関係を作りたがり、依存性を求めやすいので、無理して答える必要はありません。
子どもの頃からの親友、学生時代の友人など、どんなに親しい間柄でも話したくないことはあります。親しい間柄ほど断りづらいかもしれませんが、そんなときはまず「ごめんなさい」と断る勇気を持ちましょう。それでも無理に話を聞いてこようとする場合は、
「これ以上は話したくなくて」
などと、話を濁すだけでいいのです。
話せなくても、「相手に悪いかな」「不快にさせたかな」と気を遣う必要はありません。
大事なのは、相手の期待に応えるよりも、自分の気持ちに目を向けることです。
子どもが親の話に耳を傾けてくれない場合
また、親の立場で、子どもとの関係性がうまく築くことができず、ネガティブ感情を抱えてしまう人も少なくありません。
例えば、「進学や就職など、悩みの多い時期に親としてサポートしたい気持ちはあるのに、話に耳を傾けてくれない子どもにイライラして声を荒らげてしまう」というシーンは、どんな家庭にも起こりうることです。
真面目な親御さんほど、こうした状況に対して「自分の子どもへの関わり方が悪いのではないか」とネガティブに考えてしまうのもよくわかります。
親として子どもをサポートしたい気持ちは尊いことですが、「子どもは親の代わりに夢を実現する代用品ではない」という視点も忘れてはいけません。
「子どもなんだから、親の言うことを聞いて当たり前」
こうした気持ちが少しでも心の中にあると、子どもはそれを敏感に感じ取り、関係性に悪影響を及ぼします。
親の言うことに対する反発は、子どもが成長する過程として、むしろ健全なことです。人から言われたことをそのまま鵜呑みにせず、自分なりの考えを持ち、行動していく人間に育てば、親としても嬉しいのではないでしょうか。
成長過程にある子どもには、自分なりの考えや意見があるはずです。親はそれを見守り、 「子どもが自分らしさを模索している最中」だと認識しましょう。
子どもを「1人の人間」として尊重する
子どもに限らず、人は自分の思い通りにならなくて当然です。
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その大前提に気づくだけでも、肩の力を抜いて親子関係に向き合えるようになります。
子どもを「思い通りにコントロールしたい」という支配欲がないか、今一度、自分に問いかけてみましょう。
反対に、親の考えを押し付けては、子どもとの心の距離感が離れていくばかりです。
重要なのは、子どもを1人の人間として尊重することです。もちろん年齢にもよりますが、いつまでも子ども扱いせずに、親子でお互いの意見を述べて、対等に話し合える関係を目指すことがお互いの幸せにつながります。
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提供元:「親を嫌いではないけど苦しい人」に伝えたい策|東洋経済オンライン