2024.05.18
夏に向けて「体を作りたい!」人のランニング技術|まずは効果が高く、無理なく走れるフォームを
夏に向けて体を作りたい!という人におすすめしたいのがランニングです(写真:mits/PIXTA)
テレビや雑誌などのメディアで健康情報を発信するトレーナーの坂詰真二さんが、疲れない体、引き締まった体、自信がもてる体を作るメソッドを伝授する本連載。
今回のテーマは「健康効果を最大に引き出すランニング技術」です。
健康のために運動が大切というのは、多くの方が何となくわかっていることです。最も身近で手軽な運動といえばランニングですが、いきなり走り出すのは挫折、失敗の元です。
仕事では、Plan→Do→Check→ActionのPDCAサイクルが当たり前になっていますが、これは運動も同じ。準備段階が重要で、自分の現状を把握し、運動の特性を知ることが、成否を大きく分けることになります。
運動の必要性が高い人は誰?
以下に当てはまる項目が多いほど、運動の必要性が高くなります。
<チェックテスト>
1 仕事と家の往復以外、運動する機会がない
2 定期的な運動を5年以上やっていない
3 階段ではなくエレベーターやエスカレーターを使う
4 電車の席が空いていたら必ず座る
5 駅の階段を上ると息切れがする
6 特に食べる量が増えていないのに体重が増えた
7 健康診断でC(要再検査)以下の項目が1つ以上あった
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ランニングは手軽にできる有酸素運動の1つ。有酸素運動という言葉は、1980~1990年代のフィットネスブームとともに日本に広まりました。
有酸素運動と認められる条件は5つあります。
全身運動であること、苦しく感じない範囲の強度であること、強度が一定であること、一定時間以上(少なくとも5分以上)継続すること、リズミカルであること、です。
サッカー、テニスなどのスポーツや、フラメンコやバレエなどのダンスも全身を使いますが、強度が上がったり下がったりしますし、動きが途切れ途切れになるので有酸素運動とはいえません。
ウォーキング、ランニング、自転車、水泳、エアロビクスなども、息が切れるほど強度が高すぎたり、強度が大きく上下動したり、途切れ途切れに行った場合は、有酸素運動にはなりません。
有酸素運動で「体」が変わる
有酸素運動は、健康上も美容上も大変有益な運動です。
第一に、エネルギー消費が多いですから、継続することで体内に貯蔵された体脂肪が減り、体型を整える効果があります。体脂肪が減れば血糖値や中性脂肪などの数値も下がって、血管へのストレスが減るため、高血圧、糖尿病、心臓病など、さまざまな生活習慣病予防につながります。
また、血液を隅々に届けようと毛細血管の数が増えるので、冷えの予防効果もありますし、汗をかくことで汗腺が発達するので、熱中症のリスクも低下します。
有酸素運動をすると、心臓が血液を送り出す能力や、肺が酸素を取り込む能力である「心肺持久力(全身持久力)」が向上します。
心肺持久力というと、スポーツ選手が必要とする能力に感じるかもしれませんが、決してそうではありません。
私たちは歩行や階段昇降など、全身運動を行う機会がありますが、心肺持久力が低いほど、これらの運動と持っている能力との「ギャップ=予備力」が小さくなるため、疲労を感じやすいのです。逆に心肺持久力が向上すれば、予備力が大きくなるので疲れを感じにくくなります。
疲れやすくなる最大の原因は加齢よりもむしろ、運動不足による心肺持久力の低下にあるのです。
心肺持久力が低下すると予備力が小さくなり、日常生活動作でも疲れやすい。逆に心肺持久力が高いと予備力が大きくなり、日常生活動作は楽になる(筆者作成)
さまざまな有酸素運動の中でも、ランニングはさらにうれしい効果が期待できます。
ランニングは体の上下動が大きく、一度両足が地面から離れて体が浮くため、着地の瞬間に体重の2~4倍程度の衝撃が足裏に加わります。
骨は絶えず骨を破壊する細胞(破骨細胞)と骨を作る細胞(骨芽細胞)が働いて、新陳代謝されていますが、ランニング時に足裏にかかる衝撃で骨芽細胞の働きが促されることがわかっています。これにより骨がもろくなる病気である骨粗鬆症予防が期待できます。
またこの上下動の振動によって大腸に刺激が加わり、内容物を送り出す蠕動(ぜんどう)運動と、分節運動が促されるため、便の滞留時間が短くなって便通が改善されますし、腸内環境が整いやすくもなります。腸内環境が整えば肌荒れをしにくくなり、免疫力も向上します。
健康上も美容上も大変有益なランニングは、最も手軽にできる有酸素運動です。自転車のように特別な道具を必要とせず、水泳のように特別な場所に移動する必要もありません。体1つあればいつでも実行できます。
とはいえ、いきなり始めるのにはリスクが伴います。
まず着地時に受ける衝撃の問題です。
着地衝撃は先に挙げたような効果もありますが、一方で、歩行と比べて着地時に足首、膝などの関節などにかかる負担も大きく、もろ刃の剣ともいえます。硬くて凹凸のある屋外で走る場合は、捻挫にも気を付けなければなりません。
また、歩行よりもスピードが出て運動強度も上がるため、エネルギー消費が多くなりますが、その反面、急に止まることが難しく、歩行者や自転車に衝突するリスクもあります。
特に気を付けなければならないのは、運動の終わり際です。
走っている間は心臓が拍動数を増やして血液を筋肉に送り、筋肉は伸び縮みをすることで血液を心臓に戻しています。ところが走るのを急に止めると、心臓が速い拍動を続ける一方で、筋肉が血液を戻さなくなるため、心臓の血液量が不足し、大きな負担がかかってしまうのです。
“ランニング中に足を止めてはいけない”といわれる理由がこれです。
安全かつ効率よく走る方法
最後に、これまでの話を踏まえてランニングのリスクを最少限に抑え、効果を最大限に引き出すポイントをお伝えします。
最初は安全性の高いウォーキングから始めて、筋肉や関節、心臓や肺などを慣らしましょう。30分程度のウォーキングが習慣化できたら、5~10分のランニングから始め、徐々に時間を増やします。
その際も必ずウォーミングアップとして5分程度ウォーキングをし、最後にクールダウンとして5分程度ウォーキングを行いましょう。
もう1つ重要なのは正しいフォームです。
下記にポイントをまとめましたが、ランニング中に自分のフォームを確認して修正するのは、意外と難しいものです。そこで、正しいランニングフォームを身に付けるための2つのエクササイズをご紹介します。ウォーキングの前に、これらの運動を行ってみてください。
<安全で効率のよいランニングフォーム>
(1) 両足のつま先(人差し指)を常に前に向ける
(2) 足の左右の幅を狭くする
(3) 骨盤を立てて背すじを伸ばす
(4) 足の親指と付け根(拇趾球)で地面を後方に押す
(5) 腕に力を入れずに前後に振ってリズムを作る
ランニング・エクササイズ2種
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■ランニング・エクササイズ1
(1)足を揃えてから5cm程度離す。つま先を正面に向けたら、骨盤を立てて背すじを伸ばす。肘を直角に曲げて、バトンを持つように指を曲げて前後に振る。
(2)姿勢を保ったまま、踵が浮かない程度に膝を曲げ、伸ばしながら腕を入れ替える。これを1秒に1~2回のペースで30秒~1分繰り返す。
■ランニング・エクササイズ2
(1)エクササイズ1と同様に姿勢を整えてから片膝を曲げ、踵が反対側の膝の高さにくるまで足を上げ、上げた足と同じ側の腕を後方に、反対側の腕を前方に振る。
(2)上げた足を後方に下ろしてつま先で床を蹴ったら、①の状態に戻す 。腕は足の動きと逆に振る。これを1秒に1~2回のペースで15~30秒繰り返したら、左右を変えて同様に行う。
イラスト:竹口陸郁
シューズ選びと熱中症対策
ランニング時には過度な衝撃を緩衝するために、クッション性と安定性を兼ね備えた専用のシューズを選びましょう。レース用のシューズは軽量で走りやすいのですが、底が薄いので避けたほうがいいでしょう。
体温が上昇しやすいので、熱中症対策も必要です。
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歩いたり走りだしたりする前にコップ1~1.5杯の水を飲み、可能なら20分に1回給水し、終わってからも必ず水を飲んでください。トータルで1時間を超える場合はスポーツドリンクが有効ですが、それ以内ならミネラルウォーターで十分です。
ウェアは吸水性と速乾性に優れた専用のウェアが理想ですが、初めのうちは家にあるコットンのシャツ(Tシャツ)とハーフパンツでも十分です。
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提供元:夏に向けて「体を作りたい!」人のランニング技術|東洋経済オンライン