2024.05.22
コーピングリストでストレスに備える!~具体例100個もご紹介~
当記事の執筆は、臨床心理士・公認心理師 石倉美希が担当しました。 ※外部サイトに遷移します
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糖尿病治療にストレスは大敵。あなたはストレスが溜まっているとき、どう対処していますか?
とくに何も意識していないという方も、おいしいものを好きなだけ食べる、ひたすら寝るなど自分なりのやり方で気分転換していることでしょう。
しかし糖尿病治療をしていると、好きなだけ食べるというストレス解消法にはデメリットもあります。うまくストレスに対処できないと、さらにストレスも溜まりますよね。
ストレス解消といっても他に何をしたらよいのかわからない、いつも同じパターンになっているという方はぜひコーピングリストを作成して、ストレス対処のバリエーションを増やしてみませんか。
今回はコーピングの解説とともに、コーピングリストの作り方や具体例100選まで、すぐに使える情報をまとめました。ぜひ最後までお付き合いください。
コーピングって何?
ストレスへの対処方法を心理学の用語でコーピングといいます。
心理学者のラザルスとフォルクマンは以下のようなストレス理論を提唱しています。
(1)ストレスのきっかけに遭遇した際に、自分にとって関係が深いかどうか、影響がどれくらいあるかを評価する
(2)(1)の評価においてストレスフルな出来事と評価されると、心身にストレス反応が生じる
(3)どのストレス対処(コーピング)が有効かを選択して、実行する
(4)コーピングが有効かを評価し、効果がない場合はコーピングを再選択し、実行する
つまり、同じ出来事を経験しても、それがストレスフルかどうか、乗り越えられるかどうかはその人の捉え方次第で決まるという考え方です。
また、そのストレスに対してコーピングを実行し、より適したコーピングを探っていくとストレスへの対処ができるのです。
参考記事:ストレスで太る?メンタルヘルスケアをダイエットに活かそう! ※外部サイトに遷移します
参考記事:ストレスで起こる体や心の異変~生活習慣病への影響も解説~ ※外部サイトに遷移します
コーピングの種類
コーピングには、ストレスの受け止め方を変えるコーピングと、ストレスの原因を解決するコーピングの2種類があります。
ストレスの捉え方や気分を変えて対処するコーピング
ストレスの原因そのものには働きかけず、ストレスの受け止め方を変えて対処するのを情動焦点型コーピングといいます。
ストレスを感じたときの辛い気持ちを、別の行動や考えをすることによって和らげます。気分転換も情動焦点型コーピングです。ストレスの原因が自分ではどうしようもできない場合は、情動焦点型コーピングが有用です。
不快な感情から気をそらし、気持ちを切り替えるにはよい方法ですよね。しかし、根本的な問題は解決しないため、同じストレスを繰り返してしまう可能性もあります。
問題の解決でストレスに対処するコーピング
ストレスの原因そのものを解決して対処するのを問題焦点型コーピングといいます。
問題解決のスキルを身に着けたり、第三者の力を借りることで状況を打開するような対処法です。
根本的な問題解決につながり、長期的なメリットが多いコーピングですね。しかし、物理的・環境的に解決が困難な問題もあるでしょう。そんなときに問題焦点型のコーピングで乗り切ろうとすると、大変な労力がかかり心身ともに疲れてしまうリスクもあるのです。
以上、2つのコーピングについてまとめました。コーピングは場面によって柔軟に使い分けられるのが重要とされ、コーピングに優劣はありません。どちらもバランスよく取り入れられるとよいですね。
コーピングの具体例100選
具体的なコーピングの例を100個挙げてみました。
コーピングが思いつかない、バリエーションが少ない方は具体例を参考にしてみてください。
なお、ここでは捉え方の変容や気分をコントロールする情動焦点型コーピングを中心にご紹介しています。
外に出て楽しむ
五感に働きかける
体を動かす
身の回りを整える
スッキリする・没頭する
リラックスする
ゆったりと楽しむ
新しいことにチャレンジする
誰かと楽しむ
ストレスの捉え方を変える
想像する・思い出す
いかがでしたか?コーピングに正解はありません。以上の例を参考に、ぜひご自身に合うようにカスタマイズしてみてください。
コーピングリストとは
自分のコーピングを書き出し、リスト化したものをコーピングリストといいます。ストレス対処の備忘録のようなものです。
リストの効果
コーピングリストを持っていると、以下のような効果があります。
近年の研究では、自分を俯瞰する(セルフモニタリング)することで、不足しているコーピングに気づき、結果としてコーピングレパートリーが拡大するといわれています。
今持っているコーピングをリストにして棚卸しすると、さらにレパートリーが増え、よい循環が生まれますね。
参考記事:糖尿病の自己管理を楽にするセルフモニタリング~ストレスを観察しよう~ ※外部サイトに遷移します
コーピングリストの作り方
コーピングリストの作り方は以下の通りです。
STEP1:メモ帳やアプリなど、読み返しやすいツールを決める
STEP2:これまでにストレスを感じたときにやってみた対処方法を思いつくだけ書く
STEP3:まだやったことはないが、これから取り入れたい対処法を書く
作るときのコツ
できるだけ具体的な内容にする
具体的だと、実際にコーピングを使うときに迷うことなく実践できます。数がなかなか出せないという方は、同じカテゴリでも細分化するとよいでしょう。
例:映画をみる
→映画館で新作映画をみる、昔好きだった映画をみる、映画のお気に入りのシーンを見る
立派なコーピングでなくてOK
「人に言える趣味なんてない」と心配する必要はありません。コーピングはむしろ、ちょっとしたものをたくさん持っている方がよいのです。手軽なもの、身近なものを挙げてみてください。
それでもどうしても思いつかないという方は、後述するコーピングの具体例100選をぜひ参考にしてみてください。
コーピングリストの使い方
リストはストレスを感じたときに、いつでも読み返せるように手元においておきましょう。
いつも同じコーピングが有効とは限らないため、状況によって、コーピングを使い分けるのが重要です。
実践したコーピングの効果がなかったからといってリストからすぐに削除せず、リストを見返して、別のコーピングを試してみましょう。
リストは作りっぱなしにせず、実践した効果を検証したり、新しいものを思いついたらどんどん追加し、更新するのがオススメです。
まとめ
今回はストレスの対処法「コーピング」の解説とコーピングリストの作り方、具体例についてご紹介しました。
本記事がご自身のコーピングレパートリーを広げ、スムーズなストレス対処のヒントになれば幸いです。
参考文献
伊藤絵美(2021). コーピングのやさしい教科書 金剛出版
厚生労働省 e-ヘルスネット
執筆者:臨床心理士・公認心理師 石倉 美希
早稲田大学人間科学部卒業、東京家政大学大学院人間生活学総合研究科臨床心理学専攻修了。 在学中に認知行動療法や健康心理学を学び、糖尿病患者が抱える不安や食行動変容について研究。 卒業後は医療機関にて臨床心理業務に従事し、主に働く人のメンタルヘルスのサポートを担う。 「心身の健康を通じてその人らしい生き方をサポートしたい」という思いからシンクヘルス株式会社に入社。
記事提供:シンクヘルス株式会社
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