2024.03.14
糖尿病を克服した人に共通する体重減の重大事実|体脂肪を減らすのは健康にとって良いことばかり
脂肪を減らすことで、薬の服用なしでも糖尿病を克服することができるといいます(写真:Luce/PIXTA)
一般的に「糖尿病」といえば、2型糖尿病を指すことが多いとされます。遺伝的要因や食生活、運動不足、肥満、ストレスなどの要因が重なって発症する、いわゆる生活習慣病の1つです。そんな2型糖尿病はどうすれば克服できるのでしょうか。『回復人 体中の細胞が疲れにつよくなる』より一部抜粋、再構成してお届けします。
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薬なしで「2型糖尿病」を克服する
ほんの2、3週間で2型糖尿病を克服できることを、あなたは知っているだろうか?
ここ10年ほどで、食事だけで2型糖尿病を克服できると証明する研究がいくつも発表されてきた。要するに、体脂肪を十分落とし、2度と個別脂肪閾値を超えないようにすればいいのだ。
こうした研究を指揮しているのが、個別脂肪閾値という考え方を最初に取り入れたロイ・テイラーだ。その研究では、2型糖尿病になって4年以内の肥満気味あるいは肥満の人のグループを対象に、8週間にわたって600キロカロリーの流動食を摂ってもらい、同時に糖尿病の薬はすべてやめてもらった。
結果は次のとおりだ。
・参加者は平均15.4キロの減量を示し、最初の体重の約15%を落とすことができた。落ちた重さの83%は体脂肪だった。
・骨格筋のインスリン感受性と、グルコースを血流から摂取する能力は68%上昇した。
・肝臓脂肪は70%減少し、研究開始時に脂肪肝と診断された人は完全に脂肪肝でなくなった。肝臓のインスリン感受性は72%上昇し、肝臓のグルコース産生は34%減少した。
・膵臓脂肪は23%減少し、その結果、炭水化物を食べたときのインスリン反応も正常化した。
・空腹時グルコース値は40%低下し、空腹時インスリン値は半分に落ち、HbA1cは7.4%から6%まで減少した。
極端なダイエットを8週間続けた結果、参加者たちは2型糖尿病を克服した。
このフォローアップ研究として、テイラーは2型糖尿病患者の参加者にもう一度、8週間にわたり600キロカロリーダイエットを行ってもらい、その後6か月をかけて徐々に普通の食べ物に戻していってもらった。
その結果わかったのは、参加者が落とした体重をそのままキープできているかぎり、2型糖尿病は再発しないことだった。その人たちはカロリーや炭水化物の摂取量を増やしても、問題は起きなかった。
「脂肪」を減らすほど糖尿病はよくなる
しかし、かなり体重を落としたにもかかわらず、糖尿病を克服できない人もいた。糖尿病になって4年経っていない人の87%が体重減少によってよい結果を得られたのに対し、4年以上経っている人たちは50%しか糖尿病を克服できなかった。
この理由の1つは、糖尿病患者として長い時間を過ごした人ほど膵臓にダメージを受けやすいことだ。
膵臓に大きな損傷や機能不全が起こると、いくら体重を落としても、糖尿病を克服するのが難しくなる。さらに、長年糖尿病(またはほかの病気)を患っていて、それが膵臓のような特定の組織や臓器、腺に大きな損傷(たとえば細胞死のような)を与えていると、2型糖尿病を完全に克服するのは相当難しくなる。
2型糖尿病を克服できたにせよできなかったにせよ、体脂肪を落としてその状態をキープすることで、研究に参加した人たち全員の健康状態は明らかによくなり、身体組成の向上、インスリン感受性の回復、脂肪肝と肝機能の正常化といったよい変化が見られた。
テイラーはこの発見を、のちに行った1年間に及ぶDiRECT研究でも確認している。それによると、糖尿病を克服できる可能性は、体脂肪の減少量に比例して増加することがわかった。
体脂肪減少量が約5.4キロ以下だった参加者のうち、2型糖尿病の克服に成功した人はわずか7%だったが、約15キロ以上の減量に成功した参加者は、なんと86%が2型糖尿病を克服できたという。
とにかく脂肪を落とす──「すい臓」が回復する
約4.5キロしか体重が減っていなくても糖尿病を克服できた人たちもいたが、その人たちはほかの人たちほど体重を減らす必要がなかったからだ。
2型糖尿病は個別脂肪閾値を超えたときに起こるが、この閾値は人によって違う事実を思い出してほしい。
2型糖尿病を克服するためにどれほど体脂肪を減らせばいいかは、どこを起点と考えるかによる。この起点となるのは、膵臓が正常な機能を取り戻し、インスリンの産生を始める時点だ。
こんな話をするのは、あなたをがっかりさせたり、落ち込ませたりしたいからではない。体脂肪を減らすのは、つねに健康にとってよいことばかりだし、できればすべての人に勧めたいプランだ。だが私が目指しているのは、あなたが自分の健康にとって最適な選択をするのに役立つ情報を提供することだ。
あなたが2型糖尿病患者なら、大事なのは希望と楽観的なものの見方だ。体脂肪を減らせば糖尿病を克服できる。そして長年にわたって糖尿病患者だった人は、完全に病気を克服することはできないかもしれないが、体脂肪を減らすことで、心と体の健康全般を大きく向上させられるのだ。
効果を一気に得るために極端なダイエットに走る必要はない。何より大事なのは、とにかく体脂肪を落とすこと。糖尿病を克服するために、超低カロリーダイエットで飢餓状態に陥ったり、その他の特殊なダイエットに挑戦したりする必要もない。
また、膵臓に損傷を抱える人にも希望はある。研究によると、長期にわたって減少した体脂肪をそのままキープできれば、時間はかかるが、膵臓も回復して再生させられるという。
「植物」の糖質に注意する
炭水化物を食べると血糖値が上がるのは、食物脂肪を摂ったあとに血中の脂質が増えたり、食物タンパク質を摂ったあとにアミノ酸が増えたりするのと同じで、ごく自然なことだ。
だが、血糖値を低く抑えるのに苦労しているなら、炭水化物の摂取量を減らすのはきわめて合理的だ。とくに、前糖尿病段階の人や糖尿病患者にとっては間違いなく効き目のある方法だろう。
さまざまな研究やメタ分析が明らかにするように、低炭水化物ダイエットは中程度の炭水化物ダイエットまたは高炭水化物ダイエットに比べてはるかに効果が高く、血糖値(HbA1c)の平均を下げたり、糖尿病治療薬の必要性を減らしたり、2型糖尿病を寛解させたりするのに大きく貢献している。
アメリカ糖尿病協会とヨーロッパ糖尿病研究協会では、2型糖尿病に見られる高血糖値を解消する手段として、低炭水化物ダイエットを推奨している。だが、食事全体の質を保つことが重要だという意見も、当然ながら指摘されている。
どんな食事パターンや食事法に従っても、炭水化物全体の摂取を減らせば、血糖コントロールと血糖値の改善に大きな効果が見込めると両協会は認めている。
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ケトジェニックダイエットでも、ベジタリアンでも、地中海式ダイエットでも、みな効果が期待できるが、大切なのは繊維質の野菜と発酵食品とプレバイオティックな繊維をたっぷり摂って、腸の健康を保つことだという。
もし低炭水化物ダイエットを始めたいなら、まずは血糖値を急上昇させる炭水化物やデンプンを摂らないようにするのがいい。具体的には、穀物、パン、朝食用シリアル、米、パスタ、ほとんどの果物、ニンジンやジャガイモなどのデンプン質の根菜、コーン、ほとんどの豆類などだ。
ほかの食べ物(牛乳やほとんどの乳製品、ベリー類、大豆製品)もできるだけ控えたいが、肉、シーフード、卵、ギリシャヨーグルト、ナッツ類とシード類、そしてトマトやナス、キャベツ、ホウレンソウなどの繊維が多くデンプン質でない野菜は、好きなだけ食べてかまわない。
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提供元:糖尿病を克服した人に共通する体重減の重大事実|東洋経済オンライン