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2024.02.07

65歳以上の「食べられない」を軽視できない理由|BMIをまめに確認、食べる機能の老化にも注意


「食べられない」はさまざまな理由で起こるといいます(写真:buritora/PIXTA)

「食べられない」はさまざまな理由で起こるといいます(写真:buritora/PIXTA)

人生100年時代に突入して、1人の人が生涯に「食べる」回数は人生50年、80年時代に比べて数万回増えました。その人生の終盤には栄養が足らない状態に気をつける必要があります。気にしておきたいのはBMI。そして高齢者が食べられなくなる原因や対処法とは?

高齢者栄養ケアの第一人者が “長生きする食べ方”を解説した『100年栄養』より一部抜粋、再構成してお届けします。

『100年栄養』 クリックすると、アマゾンのサイトにジャンプします

1日1回は必ず体重計にのるクセづけを

BMIとは肥満度を表す指標として国際的に用いられている体格指数で、[体重(kg)]÷[身長(m)の2乗]で求められます(身長はcmではなくmで計算します)。

65歳以上は21.5未満を「痩せ」、25以上を「肥満」とします。通常私は健康全体のことを考え、BMIは「50~64歳では20.0~24.9、65歳以上では21.5~24.9の範囲をめざす」を基準に栄養ケアをしています。

ただしBMIだけで評価せず、体調(元気さ、睡眠、排泄などを含める)がよく、6カ月~年単位でBMIの変化がほとんどない場合には心配しすぎることはない、と考えます。

たとえば、Aさん(72歳女性、身長156㎝)は60代からBMIが20.5~22.6の間で安定していて、お元気です。定期的に健康診断を受けていて、いまのところ歯科、眼科、整形外科には通院していますが、内科の持病はありません。

朝、起きたときにちゃんとお腹が空いていて、ほぼ欠食せず、毎日3回ごはんを食べていて、地域のお仲間と体操やグラウンドゴルフを続けています。BMI20.5は「痩せ」に入りますが問題なし、です。体重でいうと、50~55㎏の間で落ち着いているので、特別な助言はせず、経過を見守っています。

Bさん(76歳男性、身長159㎝)は8年前に一大決心をしてダイエットし、7㎏減量を達成しました。以降、大きなリバウンドもなく、BMIは24.5~26.5の間で安定していて、やはりお元気です。血圧がちょっと高いので、服薬治療をしていますが、毎朝・晩の血圧測定も続け、薬でコントロールできています。

ごはんが大好きで、つい食べすぎてしまうこともあるのですが、町会活動やウォーキングで体を動かすなど、健康づくり全般に気をつけているので、コロナ禍でも体重が大きく増えることはありませんでした。BMI26.5は「肥満」に入りますが問題なし、です。体重でいうと、62~67㎏の間で落ち着いています。

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つまり、BMIの判断も臨機応変でOK。6カ月程度にわたり、BMI値の上下幅が3程度の範囲で安定していて、それが「標準」と大差なく、体調がよければ、問題なしです。

体が軽くなりすぎ、ふらふらして力が出ない。体が重くなり、立ち上がるときひざが痛い。そんなふうに感じるようになったら、食事を見直して体重の調整を。食生活に少しの工夫をすれば、3カ月で体は変わります。

BMI、心身の変化、体調について自らに問い、食生活や活動、運動で調整する習慣をもって、低栄養による健康被害を防いでいきましょう!

「ちょっとしたきっかけ」から「低栄養」が始まる

自分なりの幅の中でBMIがいくらかアップダウンすることを心配しすぎることはありません。しかし、高齢者が「低栄養」になってしまう原因は、いくつもあります。

食べること以外にも、生活や環境の変化、メンタルの影響など、さまざまな理由で「食べられない」は起こるのです。

「え、そんなことで?」と思うような、ちょっとしたことから「食べられない」が始まることも! 高齢期に入ったら、しばらく体重・BMIに変化がない人も、可能性があることとして「原因」を知っておくことが大切です。

食生活は家庭の内側のことなので、外部からはわかりにくく、私たち医療の専門職が関わるのは重症化してからであることがほとんどです。そうなる前に見つけ、重症化を防ぐことが本当に大切だから、「自分が主治医」と思って、ときどきチェックしてみましょう。

高齢の人が食べられなくなるのにはさまざまな理由があります。以下にざっと挙げてみました。

<食べているつもりで、食べられていない>

・中年世代から徐々に食べる量が減り、なおかつ消化吸収能力が低下してきた
・朝昼はほぼ変わらない食事をとっているが、夕食の量が減った
・食事の回数が3回から2回になった
・間食の回数と量が減った
・1つのお弁当を一度に食べきれず、残飯を捨てている
・1つのお弁当を一度に食べきれず、2回に分けて食べている
・高齢になったら活動量が減ったから粗食でいいと思っている
・痩せているほうが健康にいいと信じている
・特定の食べ物、食べ方にこだわりがある
・若いころに受けた「生活習慣病を予防するための食事指導」を続けて守っている
・調理ができなくなった、怖くなった
・ごはんの代わりに菓子や果物で済ます
・お餅やそうめん、おにぎり、パンだけ食べている
・最近の夏は暑くて、口当たりのいいものしか食べられない
・あまりお腹が空いていると感じない、食欲がない
・食事が「おいしい」「楽しい」と思えない
・とくに食事をおいしく、楽しくするように工夫はしていない

<食べる機能の低下や、口や歯、目のトラブル>

・硬いものが食べられないから、柔らかいものを選んで食べるようになった
・唾液が出ず、口の中が乾いていて、食べづらい
・歯が弱り(義歯が合わず)、よく嚙めない
・食べ物を飲み込んだあと、口の中に残っていることが増えた
・食事中にむせることが増えた
・味がわからなくなった
・食べ物がよく見えなくて、何を食べているかよくわからない
・下痢や便秘、頻尿などが心配で飲食を控えている
・食事にかかる時間が長くなり、食べると疲れる

<体調不良や病気、けが、それらの治療の影響、薬の副作用>

・持病の薬の量が多くて、薬でお腹がいっぱいになる
・食後に薬を飲まなければならないと思うと、ごはんを食べるのが憂うつ
・夜に眠れず、日中に眠くて、食事どころではない
・意識がもうろうとしていて、食事に集中できない
・呼吸が安定していなくて、食事どころではない
・食事の間ずっと姿勢を保っていられない

<その他>

・家族の介護や看護で自分の食事がおろそかになりがち
・身近な人が亡くなるなどでショックを受け心理的ストレスがある
・食料品の買い物が不便、できない
・お金がなくて、十分な食事を用意できない
・いつもひとりで食べていて食欲がわかない

食べる機能の老化を見逃さない!

次に食生活を見直すとよいタイミングについて紹介しますが、その前に、お口の「食べる機能」の老化について、ちょっと触れます。

食事のとき、食べ物を認識し、食べる意欲をもって口に運び、嚙んで、飲み込みやすい塊(食塊)をつくり、喉の奥に送るまでは「摂食(せっしょく)」、飲み込んで、食道→胃に送るのを「嚥下(えんげ)」といいます。こうした機能が衰えてしまうと、食べたくても食べられず、低栄養のリスクになってしまいます。

嚥下の機能が低下し、誤って気道に唾液や食べ物が入るのは「誤嚥(ごえん)」です。誤嚥は、高齢の人が命を落とす病気、誤嚥性肺炎の原因として、ご存知の人も多いかもしれません。

高齢社会になって、誤嚥性肺炎がクローズアップされ、「食事中にむせたら危ない」と注意する人が増えました。確かに、むせるのは誤嚥を防ごうとする体の反射ですから、むせが頻繁に出るようになったら、嚥下機能が衰えているサインと言えます。

摂食〜嚥下のあらゆる機能を「しっかり使う」

ただし、一般的には誤嚥(嚥下機能の低下)より先に、摂食機能の低下が目立つことが多いです。はじまりとして多い症状は「硬いもの×」。食生活が「柔らかいもの」に偏っても、別の物が食べられるうちは〝問題〟とは思われにくいのです。

肉や野菜を食べないでいると、嚙む力はさらに弱くなり、次々と好物が食べられなくなることで、食欲低下や低栄養、ひきこもり、孤立といった問題に発展することもあります。

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『100年栄養』(サンマーク出版) クリックすると、アマゾンのサイトにジャンプします

予防のためには毎日、摂食~嚥下のあらゆる機能を「しっかり使う」が大切!

私が栄養ケアで関わっている歯科では、嚙む力が衰えたお年寄りに「黒豆の入ったおせんべい」を出して、嚙みしめる練習をしてもらっています。

嚙めないから柔らかいもの、ではなく、嚙む力を取り戻す練習をする。おいしいおせんべいだと、みなさん食べたくて、頑張って食べます。黒豆の皮が歯間にはさまったりして、難易度は高いけれど、おいしくて、みんなが一緒だと案外、食べられてしまう。

ギブアップする人には別の方法を提案しますが、練習できる人には、疲れない程度に、ゆっくり嚙みしめてもらっています。

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提供元:65歳以上の「食べられない」を軽視できない理由|東洋経済オンライン

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